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COVID-19の拡大は空気感染が主流

2021年2月15日

COVID-19の感染拡大は空気感染が主流である」【第61回臨床ウイルス学会】

国立病院機構仙台医療センター・西村秀一氏が講演

 国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルス疾患研究室長の西村秀一氏は10月3日、第61回日本臨床ウイルス学会学術集会(オンライン開催)のシンポジウムで、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染経路について講演を行った。西村氏は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染経路は空気を媒介したものが主流であり、マスク着用や換気などの空気感染対策を重視しなければ、今後も感染拡大が続くとの見解を示した。

「接触感染」によるクラスターは発生せず

 西村氏は、接触感染は眼粘膜、経口、鼻粘膜の3つの感染経路にわかれ、なかでも大きな割合を占めるのが鼻粘膜からの感染とした。だが実際には鼻内部を触るのは多くの場合鼻前庭部までに留まり、さらに奥の鼻粘膜からの接触感染はほぼ発生しないと指摘した。実際、これまでに接触感染でCOVID-19を発症したという直接的証拠はなく、また、接触感染によるクラスターの発生も起こり得ないと説明した。

 さらに、接触感染の状況を可視化するためのドアノブ等に蛍光塗料を付着させた実験結果の解釈にも注意が必要だと述べた。蛍光塗料の分子数と比較するとドアノブなどに付着するウイルスの数は非常に少なく、蛍光塗料のように手や顔にベタベタと付着することもないため、ミスリードを招くという。「実際にドアノブにウイルス液を吹き付け、乾燥した後に触れても、ごく微量のウイルスしか指には移行しません。また、一般環境での生きたコロナウイルスの存在は証明されていません」と述べた。

クラスター発生の最大要因は空気感染

 次に、西村氏は空気感染について解説した。呼吸で発生した気流により、気道壁の粘膜表面の浸出液が剥がれると、大小さまざまの液滴となり体外に出される。COVID-19の感染者の飛沫(液滴)にはSARS-CoV-2粒子が含まれるものもある。直径が大きな液滴は、口外に出てもすぐに落下するが、直径が小さな液滴は時間をかけゆっくり落下するか、落下途中で乾燥して空中に再浮遊することがある。このように空気中に浮遊する微小な液体または固体の粒子はエアロゾルと呼ばれ、これを吸ってCOVID-19に感染した場合、空気感染となる。

 では、すぐに落下する大きな飛沫と、空気中に浮遊するエアロゾルは、ウイルスの伝播にそれぞれどの程度寄与するのだろうか。西村氏は「大きな飛沫を介しての感染はほぼあり得ない」と指摘。一般的な会話時の距離を保っていれば放物線を描いて落下する飛沫が口に入ることは物理的にあり得ず、至近距離で話した時や大声で騒ぐ子供たち同士、寝ている人の近くでくしゃみした時などの例外を除き、落下飛沫による感染は難しいと解説した。

 一方、エアロゾルに関しては、液滴の径が5μm程度では沈降速度は1mm/秒、10μm程度では3mm/秒と遅く、また、風に舞うと沈降せず長時間空中に浮遊する。このような状況下でSARS-CoV-2は3時間程度活性を保つことが実験で証明されるため、感染者と同じ室内にいるとエアロゾルを吸って容易に空気感染を引き起こす可能性があると指摘した。実際、COVID-19のクラスター発生箇所を調査すると、密閉空間でエアコンの対流に乗ったエアロゾルの拡散が感染の要因と考えられるケースが散見される。極端な長距離を除き、少なくとも近-中距離での空気感染は十分に考えられる証拠があり、「空気感染はあり得ない」という主張には無理があると述べた。

(くしゃみによる飛沫拡散をハイスピードカメラによって可視化した実験。下段は飛沫粒子を強調している。Nishimura et al., PLoS One. 2013 Nov 27;8(11):e80244.)

「マイクロ飛沫感染」という造語は非科学的

 これらの知見を踏まえ、西村氏を含む世界中の研究者有志が「SARS-CoV-2は空気を媒介とした感染を引き起こすことを認めて対応すべき」とする声明を2020年7月6日付の『Clinical Infectious Disease』に発表した。これを受け、世界保健機関(WHO)は翌7日の定例会見で「換気の悪い環境下でのCOVID-19の空気感染の可能性」について言及した。また、9月18日、米国疾病対策センター(CDC)はCOVID-19が空気を介して感染し得ることを認め、「COVID-19の主な感染経路は接触感染ではなく、エアロゾルによるものである」とガイドラインに掲載した。しかし、この文言が出された4日後、「誤って素案を掲載した」と取り下げられたが、CDCにも空気感染の存在を認める動きがあることが確認された(注:西村氏講演後の10月5日にCDCはガイドラインを更新し、空気感染によって感染が拡大することを一部のケースにおいて認めるとした)。

 一方、7月末、政府の新型コロナウイルス対策分科会は5μm未満の微粒子飛沫を「マイクロ飛沫」と新たに定義し、これによる感染は空気感染とは異なる感染経路であると強調した。一方、エアロゾルは粒子の大きさを限定せず、ウイルスを含んだ微粒子が空気中に漂い、風に舞って感染が成立する。西村氏は、「飛沫粒子の大きさにより分類することは無意味であり、以前から存在する『空気感染』あるいは『エアロゾル感染』の用語を使用すべきと考える。定義のあいまいな『マイクロ飛沫感染』という造語は非科学的」と苦言を呈した。

 西村氏は最後に、「COVID-19の主な感染経路は空気感染であり、感染予防対策において手洗いなどの接触感染対策のみを重視していると、今後も院内感染が発生するだろう」と述べ、3密を避ける対策をはじめとする空気感染予防の重要性を訴え、講演を終えた。

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