子どもは「境界」を緩めたり狭めたりする能力を学んでいく
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締め付けの反対である甘やかしによって、境界設定を間違うこともあります。そこから抜け出すためには、心の教育が大切。社会生活に必要な「境界」を緩めたり狭めたりすることができる、しなやかな心をもたせたいものです。

目次

  1. 甘やかされた子どもは家の外で境界のズレを体験する
  2. 見えない部分へのアプローチが必要
  3. 境界設定は永遠の課題

甘やかされた子どもは家の外で境界のズレを体験する

前回は、お子さんへの境界設定を締め付けすぎる場合を説明しましたが、これと逆の、甘やかしのパターンというものもあります。例えば赤ちゃんには「これぐらい自由な設定がよい」という感覚で許容していると思いますが、赤ちゃんでいられる時期はそれほど長くありません。

いずれ社会に出ることを前提として、適正な境界設定の上、ある程度の締め付けをしてあげないといけません。当然のことですが、家から外へ出た時に困るのは子どもです。ひとりで靴が履ける、ボタンがかけられる、信号を守るなど、日常生活で必要になる行動から始まり、さまざまなことを教えなければなりません。

しかし、なんでもママがやってくれるあげることで、甘やかし過ぎてしまった子どもは、幼稚園や学校でいじめられるケースが目立ちます。ここに一つの境界線があります。

境界を設定するのは、親ばかりではありません。友達同士などの集団において、「ここまでのわがままは許せるけれど、これ以上は許されない」という境界があります。

自分が我慢しなければならないことは、必ずあります。その我慢は、とても辛いことばかりではありません。例えば、お菓子を1人が1つ食べる機会があった場合に、本当は2つ食べたいけど我慢する、という程度のことです。そのような我慢によって得られる社会との繋がりを、子どもは少しずつ学んでゆくわけです。

「自分が我慢することで、繋がりを得ることができる」このようなことを学ぶ能力が、子どもにはあります。

甘やかされ過ぎた子どもは、家の外で経験することを「今まで許されていたことが許されなくなった」という強い締め付けとして、受け止めてしまいます。子どもからしてみれば、昨日までは当たり前であったことを、いきなりの法律改正で禁止されたようなものです。それがきっかけで、反逆的になってしまうことがあります。

ですが、今までは甘やかされていたのだと気づき、一般的な境界を理解し、その後の行動や考え方が世間並になってくれれば問題はありません。

見えない部分へのアプローチが必要

ある程度適正なところでの境界設定がうまくいっている子どもは、のびのびと自分がやりたいことをしっかりと見つけつつ、コミュニティとの境界を締め付けたり、緩めたりすることが、自分でできるようになります。

自分で段々とできるようになってくるのですが、最初は親御さんが、良い悪いを教えてあげなければいけません。これが家庭環境などと呼ばれているところです。

人間はものすごく環境に左右されやすい生き物です。ですから、健康な身体で生まれてきてくれたとしても、情緒の教育は見えない部分です。境界設定という線引きは、見えない線引きです。親としては、我が子の見えない部分にアプローチすることが必要です。

すでに問題行動が起きているなら、既に遅れをとったことになりますから、見えない部分を感じ取ることができなかったといえます。甘やかし過ぎたのが、締め付け過ぎたのか、他に何かあるのか。そこで「あたふた」せずに、できなかったことに対して、焦らずゆっくりと、お子さんに合わせてゆくことが大事です。

境界設定は永遠の課題

境界設定が上手にできた子どもは、情緒的に問題はありませんが、問題行動がすでに起こっている子どもに対して、遅れが出てしまっていることを親御さんは覚悟するべきです。

極端な言い方になりますが、赤ちゃんからやり直すくらいの覚悟が必要です。自分の子どもの心にもう一度アプローチし直す、と考えてください。赤ちゃんのところから戻って、情緒教育、心の教育が必要ということになります。

自分はどういう教育をしたのか、どういう形で子どもと接したのか、親側さんは分かっているはずです。親が分かっていないと、この問題は解決しません。甘やかし過ぎたのか、厳しくし過ぎたのか、思い当たる方はそこからスタートすることです。そして、締めるところ、緩めるところを確認します。

子どもはメッセージを出しています。そのメッセージを受け止めて、どのように対応するべきか。年齢や問題行動によって、必要な対応は異なりますが、メッセージを出してくれているのはありがたいことです。

締め付けが厳しくて、心の中では苦しい、自由がない。でも勉強していることで、親が認めてくれているし、他の人からも褒められるから、もっと頑張って続けたい。けれども、そんな良い子が、大人になりかけた辺りで問題行動を起こしたりします。

難しいことではありますが、そんな時こそ、問題行動を起こしている子どもは、親にとっては「これは有難いことだ、何かあるんだ」と受け止めてあげることで、子どもはもう一度幸せの方向に戻って来てくれると思います。

いつの時代も、境界設定は大切かつ難しいことです。これは、永遠の課題なのです。

結城恵美
結城 恵美(ゆうき・えみ)
両親との関係不和などにより大学生の時19歳で摂食障害を発症。21歳で大学病院の精神科に入院。過食嘔吐を繰り返しながらも大学を卒業し、神戸大学の助手として勤務。その間も自殺未遂を繰り返す。しかし、精神科で出会ったカウンセラーの導きで、やっと軌道修正。現在は、心理学、NLP、コーチング、瞑想、マインドフルネスなどを学び、自己の経験から沢山の方々の生きづらさに対峙しアドバイスを行っている。
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