しっかりと「伝える」コツは、頭や心の「ギャップ」を埋めること
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自分の考えを他者に伝え、理解や賛同を得る。ビジネスを進める上でずっとついて回る「伝える力」は、日常生活でも重要です。そのコツを日テレHR代表/プロデューサーの大澤弘子さんが解説します。

目次

  1. 伝えるために必要な3つの力
  2. (1)パッション
  3. (2)頭のギャップを埋める
  4. (3)心のギャップを埋める
  5. 練習を重ねて「伝わる確率」を上げていこう

伝えるために必要な3つの力

26歳のパワフルなサラリーマン男性。入社して3年目に入り自分が中心となってドライブしているプロジェクトも成長の兆し。上席の理解を得なくてはならないプレゼンをする機会も多くなってきた様子の方から相談を受けました。

僕はもともと、気持ちが先行してロジックが薄くなってしまう傾向があるのです。入社してからそんな指摘をしてくれる先輩にも恵まれて、勉強したり練習したり、徐々に論点、その根拠という整理ができるようになってきたと思っています。先日は、なかなかシンプルに整った論旨でプレゼンができた手応えがあったのですが、全く理解を得られず、何がいけなかったのか考えてもよくわからず混乱しています。

プレゼンテーションは、ビジネスをする上でずっとついて回る、ビジネスマンの基礎能力の1つですね。プレゼンでは「伝える力」が重要なカギを握っています。この「伝える力」は、ビジネスのみならず、日常生活の中で自分の考えを他者に伝える、そこで理解をしてもらうことによって賛同を得たり、一人では気づかなかった有用な指摘をもらったりすることに繋がる重要な力です。

自分の成長のためにも、営業マンとして成約をとるためにも、上司や同僚との人間関係をよくするためにも、仲間を集めるためにも、支援を得るためにも、常について回ります。

どうしても避けて通れないものなら、自分らしくできるように磨いていきたいと思うのは当然のことだと思います。相談者さんは努力家でもあり、自分で自分を見つめ直す内省の力も備えているビジネスマン。それなのに、手応えを感じたプレゼンが全く刺さらなかった結果に打ちのめされていました。

とてもシンプルにいうと、伝えたいことを他者に伝え、相手に受け取ってもらえる=伝わった、ところまで持っていくには、3つの要素が必要です。

(1)パッション

「伝えたい」気持ちです。ただし、感情として「言いたい!」というだけの「気持ち」ではありません。これを知るとどんなワクワクする未来が待っているのか、その自分だけでなく周囲の人にとっても「ワクワクする未来を実現したいから伝えたい」というWHYが「パッション」です。これがしっかり伝わらなくてはなりません。

ビジネスプレゼンにおいては「自分がやりたいから」だけではダメですね。個人の自己実現に繋がることはとても良いことですが、自分の幸福のためだけでは人は応援も推進協力もしてくれません。周囲の人の未来を幸福にすることが描けていることが必要です。これがないと、人に伝える根幹の目的がありません。「一人でどうぞ実現してください」という話になってしまいます。

(2)頭のギャップを埋める

シンプルにいうと、これは「ロジック」です。実現したい未来、今よりよくなる明日のために、自分の提案が「もっともである」という論理的な説明が必要です。

  • 現在の問題点の指摘
  • 問題が起きている理由の分解
  • 理由のもとを作っている原因の分解
  • 原因を解消する打ち手の提案
  • 複数考えられる打ち手の中から、今回、提案することに絞り込んだ理由

こんな要素が整理されて流れに乗って発信されることで、聞く人の賛同を得られる可能性が上がります。そしてこの流れは「初めて」聞く人にも理解できる必要があります。ロジックが途切れたり飛躍したりしてしまって、途中で聞いている人に「?」が生じてしまうと、そこから先、聴き手の意識がついてきません。

質問が出たり、意図しない方向に興味を持たれてしまい、自分の趣旨とは異なるところで細かい説明を求められたりして、狙ったプレゼンを実現できなくなってしまいます。

ロジックはとても重要です。ただ、冒頭の相談者さんの場合、きっとこれは勉強や練習を重ねられて、できていたのだと思います。それが自分で感じた「手応え」の正体かもしれません。聴き手に「?」を感じさせることなく「ロジック」が流れている内容だったのでしょう。でも伝わらなかった。

では、何がかけているのか?きっとコレです。

(3)心のギャップを埋める

ここが一番、難しいことです。聴き手の興味関心、現在のマインドがどこにあるのか?ロジックで話を運ぶ中、聴き手の「気持ち」がついてくるかどうか?です。

人間は、頭で理解できても、気持ちが乗らないと途中で聞き続けることができません。結論に対するOKも出してくれません。頭も心も納得して一致できた時に、初めて「伝わった」というエリアに到達できるのです。

相手の心の引っ掛かりや邪魔するものを排除するためには、まず、相手の立場になりきって、自分がしようとしているプレゼンを客観的に見つめる力が必要になります。

  • 用語は適切か
  • 聴き手の関心に結びつく入り口から入れているか
  • 聴き手と一緒にワクワクできる、未来への提案にできているか
  • 聴き手がOKすると、聴き手にどんなメリットがあるか提示できているか
  • 面白そう、任せてみたい、絶好のチャンスかもしれない!と思わせる情報を届けられているか
  • 聴き手は、プレゼンターである自分をどうみているか

「聴き手」はあなたではない別の人格です。だから、完全に予測することは無理です。でも、できるかぎり相手の立場を想像して、どこにもストレスなく最後まで聴き切れるように準備をしておくことが重要です。

ある会社の採用試験で、「『タピオカ』をみたことがないおじいちゃんに、1分でその美味しさを説明してください」という課題が出されました。また別の受験者には、「『タピオカ』を飲んだことがない女子高生にその美味しさを説明してください」という課題が出されました。同じ「タピオカ」を飲んだことがない人であっても、老人と女子高生では、説明の言葉を変える必要があります。また食感を伝える時の「たとえ」に用いる例も変わってくるかもしれません。

食べてみるとどんないいことがあるかという相手の興味関心のポイントも全く異なるでしょう。同じタピオカの美味しさを伝えるプレゼンであったとしても、その内容は大きく異なってくることが想像できると思います。

瞬間移動で「相手の立場」に立ってみて、自分のプレゼンがどう見えるのか、どう感じられるのかというのを想像して、瞬時に対応していく能力を見ることができるテストだと言います。

この会社では、お客様や上司など「相手」に伝わるように言葉を選び、表現を調整する基礎力を見るためにこのテストをされているそうです。

プレゼン中にも、「こう言えば分かるだろう」と思って使った比喩が、どうも伝わってなさそうだと感じたら、別の例を重ねてみたり、「この表現でイメージできますか?」「疑問に感じられたことなどはありますか?」と、直接、聴き手に質問をしてみたりすることも良いと思います。

相手のことはわからない。自分というプレゼンターの感覚と、聴き手である相手の「気持ち」にギャップができてしまうと、どんなに完璧な理論を準備していても、それがうまく伝わらないということに陥ります。もう少し正確にいうと、「意味としては伝わっているのだけど、共感や納得が得られない」ということになりますね。

練習を重ねて「伝わる確率」を上げていこう

プレゼンするときに、相手を観察しながら瞬時に対応していく力は、一朝一夕には身につきません。普段から、友人や家族をはじめ、社内の同僚や上司、部下と話すときに、意識して試行錯誤を繰り返すことで上手くなります。

最初は、うまく伝わらないときに「わからないよ」と率直にフィードバックをしてくれる相手に付き合ってもらって練習しましょう。後から「さっきの話、ここでちょっと疑問に思ってなかった?」など、振り返って答え合わせをしてもらうことも有効です。

実は、完璧なプレゼンターはいません。思った通りのことを相手に伝える力をいくら鍛えても、ズレが起きることはあります。日々、経験と試行錯誤を積み重ねているものです。

伝えたいパッションがあって、ロジカルに構築されているものを、相手の気持ちを想像して再構築する。プレゼンというライブの現場で、相手の観察を怠らず、五感で感じ取りながら、その時できる工夫を重ねてアジャストしていく。
これが揃うと、「伝えたい」ことが相手に「伝わる」確率が上がってきます。
あなたはどこが得意ですか。どこが不安定ですか。

意識して普段から対話するように心がけると、必ず今よりうまくなります。一緒にがんばりましょう。

大澤 弘子
大澤 弘子(おおさわ・ひろこ)
国家資格キャリアコンサルタント 日本青少年育成協会認定教育コーチ(中級)
日本テレビでプロデューサー歴25年。各界の著名人を取材し、誰しも「自分の軸」に気づいて殻を破る転換点があると知って感動。史上初のNHKとの共同制作実現、タレントと視聴者が「ワーキングマザー」として交流するサークルなど、TV番組の枠を越えた取り組みを推進。2016年、慶應義塾大学大学院SDM研究室・前野隆司教授に学び「最大の成果を出すチームに共通する力」を導く。2019年「日テレHR」スタート。上場企業の人材育成に従事。2020年には全国170,000人の人事パーソンが選ぶ「HRアワード」受賞。サラリーマンこそ「キャリアビルディング」意識が必要と考え、人材育成コンサル・研修・個別コーチングも多数。
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