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多血症とは、血液中の赤血球が基準よりも多くなる病気のことです。多血症にはいくつか種類がありますが、遺伝子の異常によって起こる「真性多血症」の割合は多くありません。別の病気や生活習慣、ストレスなどで多血症になることもあり、原因を特定することが必要になります。多血症の原因、日々の生活で注意すべき点についてクリスタル医科歯科クリニック中島 由美先生がまとめました。

目次

  1. 多血症とはどのような病気?
    1. 多血症の診断基準
    2. 多血症の種類と原因
    3. 多血症の症状
    4. 多血症で注意すべき合併症
    5. 若い女性も注意したい真性多血症のリスク
  2. 新生児の多血症の原因と治療方法
  3. 多血症は合併症に要注意|生活習慣の改善がリスク低下に繋がる

多血症とはどのような病気?

血液は液体部分とそれ以外の細胞部分から構成されており、細胞部分には「赤血球」「白血球」「血小板」が含まれます。

多血症とはこれらの細胞部分の生産量が異常値まで増加する病気です。血液検査を受ければ血液中の赤血球や白血球の量が分かるため、健康診断などで多血症などの血液の病気が見つかることもあります。

採用されている診断基準は医療機関などによって多少異なる場合もありますが、以下がひとつの診断目安で、どちらか一方が基準を超えていれば多血症の可能性が高いです。

多血症の診断基準

男性 女性
ヘマトクリット 49.0% 48.0%
ヘモグロビン 16.5g/dl 16.0g/dl

ただし、多血症にはいくつかの種類があり、どのような原因で赤血球などの値に異常が見られるかの特定には別の検査も必要です。多血症の初期症状は脱力感や頭痛などですが、命に関わるような別の病気に繋がるリスクもあるので注意してください。

多血症の種類と原因

多血症には次の3種類があり、それぞれ原因が異なります。

【多血症の種類と原因】 ①真性多血症(真性赤血球増加症) ②二次性多血症(二次性赤血球増加症) ③ストレス多血症(ストレス赤血球増加症・相対的赤血球増加症)

真性多血症(真性赤血球増加症)
真性多血症は真性赤血球増加症とも呼ばれ、血液を作っている造血幹細胞にある遺伝子の異常が原因です。真性多血症の発症は成人10万人あたりに約2人と少なく、赤血球の値だけが増加するケースもあります。

二次性多血症(二次性赤血球増加症)
二次性多血症は、腫瘍などの別の病気が原因で起こる多血症です。血液検査でヘマトクリット値(血液中の赤血球の割合)が高い場合、多血症が疑われますが、それだけでは真性多血症と二次性多血症のどちらかは分かりません。

そのため、過去の病歴、診察、追加検査などを判断材料にすることになります。

二次性多血症は酸素不足の状態が長期間続くことでも起き、喫煙、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、睡眠時無呼吸症候群のほか、心疾患、腎臓がん、脳腫瘍などが原因になっていることもあるので注意が必要です。

また、酸素の薄い場所での高地トレーニングや生活などでも多血症になる場合があります。

ストレス多血症(ストレス赤血球増加症・相対的赤血球増加症)
ストレス多血症は、ストレスが原因で起こる多血症です。相対的赤血球増加症とも呼ばれ、ここまでに説明した真性多血症、二次性多血症とは異なり、相対的に赤血球の量が多い状態になります。

先ほど説明したように血液は液体部分と細胞部分で構成されているので、血液中の水分が失われるなどして赤血球以外の量が減少すると、相対的に赤血球の占める割合は増えます。

赤血球の量は増加していなくても、ほかの成分の減少によって多血症の状態になるのが、ストレス多血症(相対的赤血球増加症)です。

そもそもこのような状態になるのは生活習慣に起因する病気である生活習慣病(高血圧・糖尿病・高脂血症など)の影響が強いので、バランスの良い食事や適度な運動が非常に重要になります。

また、アルコールの過剰摂取や嘔吐・下痢などで血液中の水分が失われても、急性の多血症になることがあるので注意しましょう。

遺伝子の異常、ほかの病気などが原因で起こる多血症に比べて、ストレスによって起こる多血症の方が多いです。 そのため、ストレスを適度に発散して、溜め込まないようにするとともに、生活習慣の改善を意識してください。

多血症の症状

多血症はすぐに自覚症状が出るわけではありません。ただ、症状が進行した場合は以下のような初期症状が見られます。

【多血症の症状】 疲労感、脱力感、ふらつき、息切れ、寝汗、顔の赤み、目や口の充血、入浴後の肌のかゆみ。

多血症は血液中の赤血球の量が多くなるので、血液の粘性が強まり、血流は悪くなります。それにより酸素や栄養が体の隅々にまで届きにくくなり、結果として、めまい、頭痛、耳鳴り、視力障害などが現れることもあるため注意してください。

多血症で注意すべき合併症

前述のとおり、多血症は血液の流れが悪い状態であり、血栓ができるリスクもあります。血栓とは血管内で凝固した血のことで、血栓が血管を塞いでしまうと命に関わることもあるので注意が必要です。

血栓は体のさまざまな場所でできる可能性があり、その場所によって深部静脈血栓症、心筋梗塞、脳卒中などに繋がります。

多血症を放置しておくとこのような合併症のリスクは高まるため、早期の治療が非常に重要です。

また、胃潰瘍、痛風、腎結石を併発したり、骨髄線維症、白血病に繋がったりすることもあり、合併症のリスクについては十分に理解しておきましょう。

若い女性も注意したい真性多血症のリスク

多血症の発症に明確な男女差はないものの、若い女性の場合、バッド-キアリ症候群にも注意すべきです。バッド-キアリ症候群は、血栓が肝臓からの血液が流れる血管を塞ぐことで起きます。

女性は妊娠によって引き起こされるケースもありますが、多血症も原因のひとつです。急に症状が出ることもあり、もし消化管出血や吐血があるなら緊急性が高い状態になります。

新生児の多血症の原因と治療方法

多血症は新生児においても起こります。予定していた出産日よりも遅く生まれた場合、胎児に十分な酸素が届かなかった場合などに起こりますが、症状が見られることは少ないです。

血液検査で赤血球の値を調べることで分かり、多血症の場合、輸液による水分補給が基本の治療になります。

多血症は合併症に要注意|生活習慣の改善がリスク低下に繋がる

多血症は遺伝子の異常で起こる場合もありますが、喫煙、ストレス、乱れた生活習慣などが要因となるケースもあります。現在、症状が出ていなくても、症状が進行すると命に関わるような合併症を引き起こすこともあるので注意してください。

合併症のリスクの低下には、生活習慣の改善が重要です。定期的に健康診断や人間ドックを受け、生活習慣の見直しも行いましょう。

中島由美
中島 ゆみ(なかじま・ゆみ)
所属:クリスタル医科歯科クリニック 診療科目:内科・美容皮膚科・アレルギー科など
・ニューヨーク州バッファロー市生まれ
・金沢医科大学 医学部 卒
・金沢医科大学病院にて小児科・内科研修
・大阪・神戸・東京・福岡の病院で内科と皮膚科を担当
・2018年8月クリスタル医科歯科クリニック内に内科、美容皮膚科、アレルギー科を開設