子どもは「境界」を緩めたり狭めたりする能力を学んでいく
(画像=takasu/stock.adobe.com)

アダルトチルドレン(AC)の人たちは、物事を白と黒の二択で考える白黒思考の傾向があり、ルールや規律を重んじて行動します。ルールには「●●すべき」という言葉が伴います。

秩序を保つためにルールはあるわけですから、ルールに従うことは重要なことです。しかし、この「べき論」が強い人たちは、世の中のグレーな部分を許すことができないため、生きづらさを感じたり、人間関係を築くのが難しくなったりします。

この記事では、ACの思考の一つである「べき論」に焦点を当て、ACの思考傾向に迫っていきます。

アダルトチルドレンに見られる傾向、べき論とは?

人間は、人それぞれ、こうするべきだという風に思うことがたくさんあります。しかし、すべての物事に「こうするべき」が通じるとも限りません。状況に応じて、臨機応変に考え、対処を変えることもあります。

たとえば、サービス業において、厳格なルールに則って物事を進めていくと、お客様の要望とぶつかることがあります。この時、ルールだからどんな状況でも、どんな事情があってもルールを守るのか、お客様に応じてできる範囲で融通を利かせ、臨機応変に対応するのか、どちらを選択するかによって、お客様の満足度やリピート率も変わってきます。

べき論が強い人は、片方はOKでもう片方はNGという善悪、○×の二択思考です。これでは、自由な選択は取れないため、不自由を感じやすくなります。

たとえば、仕事をするべき、という考え方。仕事はした方がよいですし、仕事はするべきです。しかし、その反対の選択として、仕事をしない、疲れたときは休憩するという選択肢があってもよいはずです。仕事というテーマに関して、べき論が強い人の場合、仕事をすることのみがOKで、仕事をしないことはNGと考えます。そのような考えでいると、疲れても休むことはNGと判断するため、つらくてもしんどくても休めなくなります。その一方で、心身はしんどくなっていき、うつ病などを発症する可能性が高くなります。

生きづらさから解放されるためのアプローチ

では、どのように考えれば自由な選択が取れるようになるのでしょうか。両方の選択肢をOKとすることで自分に選択権が生まれ、自由になります。

先ほど仕事の話でいうと、仕事をするのもOK、仕事をしないのはNGではなく、両方をOKに変えてしまうことが重要です。仕事をする、しない、両方をOKとしておけば、仕事に関して一旦自由になれます。

自分の人生のなかで、自由な選択ができるようになったら、自分のコントロールで仕事を選択できます。しんどい時は仕事をしない、やりたい時や好きな仕事は猛烈にする、嫌な仕事だったらやめてしまう、次の仕事を探すなど。自由な選択、自由な決定ができるようになり、その結果出た責任は自己で責任を取れます。

べき論から解放されたいなら、自分に両方OKの選択肢を与え、自分で選択するようにしましょう。誰かにやらされているような奴隷の状態、不自由な状況で何かをしていると、選択肢が他になく、逃げ道がありません。責任を自分で取るという覚悟を決めて、選択肢を与えてみましょう。選択肢を与えることで、他人の様々な考え方や選択についても理解できるようになり、白黒二択のべき論から解放されます。

べき論は世の中にたくさん潜んでいる

べき論が重視される出来事は、仕事だけではありません。ダイエットや結婚に対する考え方はべき論が優先されがちです。

結婚をするかしないかという問題。結婚するべきだという強い認知や周りからの圧力によって、「結婚しない自分はだめなんだ」と自分を捉えてしまいがちです。本来は、結婚するかしないかはどちらでもよく、自分が結婚したいからする、したくないからしないと自分で決定して責任を負えばいいはずなのです。

ダイエットに関しても、「痩せるべきだ」というべき論に支配されてしまう人は多いです。本当はそこまで痩せたいかどうか自分ではわからないけれど、やらされるがまま、周りからの言葉によって、ダイエットをする。気持ちは乗っていないのに、ダイエットを続けることでしんどくなって、ストレスが溜まってしまいます。

べき論に支配されて行動をすると、何か問題が生じた時に人のせいにしがちです。自分が選択した結果がうまくいかなかった、という場合は自分に責任が伴います。しかし、べき論で行動してうまくいかなかった場合は、「自分は単にやらされただけ」「自分は選択していない」という思いがあるため、周りに責任転嫁しやすいのです。

日本は欧米諸国に比べると、世間の目、協調性、常識が重んじられる文化があります。社会の秩序という側面では良い点も多いのですが、個人レベルで考えると、べき論のオンパレードです。誰もが「世間的にはこうするべき」「みんながやることはやるべき」「常識で考えれば、こうするべき」と言われたり、聞いたりしたことがあるはずです。

べき論も必要な時はありますが、個人個人で選択肢があると認知すると少しだけ生きやすくなるかもしれません。べき論で唱えられている結果(仕事は休まずするべき、結婚はするべきなど)をただ受け入れるのはではなく、自ら選択するなら問題はありません。もしその選択がつらくなったら、また自分で他の選択をすれば良い(仕事を休職する、結婚はしない)だけです。

親に感謝できない!すべきなのに‥

べき論の中でも少し厄介なのが、家族の話です。みなさんは親に感謝していますか。一般論で言うと、自分の生みの親や親らしき人に対して感謝しているというのが、人間としてはあるべき姿です。しかし、皆が感謝できているわけではありません。親に感謝できずに親子関係がギクシャクしている人がアダルトチルドレン(AC)の方には多いと言われています。

感謝できないのは悪いこと?

ACの方は、機能不全家族で育っていて、生きづらさを今の人間関係で抱えているため、不幸な状態の方が多いです。不幸なのに自分以外の人に感謝できる余裕はありません。そのことを客観的に認識することが大切です。

感謝をするには、自分がACの問題をほぼ解決して、自分の今の人間関係や人生が幸せだなと感じていることが必要です。人間関係にも恵まれ、心地よいという感覚が生まれれば、おのずと親の立場になって考えられるようになります。感謝は回復のゴールと言われますが、回復作業のように訓練が必要なことではないのです。感謝の念が自然と湧き出てくる=ACの問題がほぼ解決した、といって良いでしょう。

ACの方が親子関係でも「べき論」に支配されてしまう背景に、「人に理解されない」ということがあります。親に感謝していないことを他人に言うと、責められることが多いでしょう。ACの方は他人に責められないように、自分を守るために、「親には感謝すべきだ」と無理に自分に思いこませるのです。

親に感謝できないことは悪いことではありません。ACの方も回復作業を行い、トラウマを癒せれば、自然と感謝の念が湧き出てきますので、焦らず、癒しの作業を行いましょう。

ACの方が回復へ向けて注意すること

先述のとおり、最終ゴール地点は親や他人に感謝できるようになる(自然と感謝できる)状態です。しかし、回復するまでは「感謝できないから、自分はだめな存在だ」と自己否定感を持ち合わせることになります。その時、共感を得るために友人やSNSなどで話したくなってしまうかもしれません。

ACの方が自分の本音を語るときには、しっかりと語る相手を見極める必要があります。本音を語っても良い場面と語ってはいけない場面がある、自分の本音を理解してくれる人とそうでない人がいる、ということを忘れないでください。自分のことを理解してほしくて色々な人に話すと、理解してもらえず、逆に傷ついてしまうことがあるからです。

やみくもに自分の本音を話すのではなく、カウンセラーや自助グループのように共感性が高い場所で話すようにしましょう。必ず理解してくれる人はいます。回復の作業として、まずは、親に感謝できない自分も自分で、それも悪くない、と自分を受け入れることが大切です。

まとめ

べき論は白黒思考とも言われており、常識やルールに囚われすぎる傾向があります。片方のみをOKとし、それ以外はNGという線を決めてしまうと、OK以外のことができず、生きづらさを感じてしまいます。縛りから解放されるには、自分に選択肢を与え、自分で決断できる環境を作ることが大切です。

また、ACの方はストレスがたまりやすく、人や親に感謝できないという人も少なくありません。しかし、それでもいいのです。まずは感謝できない自分を受け入れること、これが回復への第一歩となります。

結城恵美
結城 恵美(ゆうき・えみ)
両親との関係不和などにより大学生の時19歳で摂食障害を発症。21歳で大学病院の精神科に入院。過食嘔吐を繰り返しながらも大学を卒業し、神戸大学の助手として勤務。その間も自殺未遂を繰り返す。しかし、精神科で出会ったカウンセラーの導きで、やっと軌道修正。現在は、心理学、NLP、コーチング、瞑想、マインドフルネスなどを学び、自己の経験から沢山の方々の生きづらさに対峙しアドバイスを行っている。
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