花粉症をはじめとする「アレルギー性鼻炎」は、多くの人が悩む疾患の1つです。つらい症状の根本改善を試みる方法として知っておきたい「舌下免疫療法」について、特徴や実際の治療効果、注意点などを見ていきましょう。

アレルギー性鼻炎
(※写真はイメージです/PIXTA)

目次

  1. いわゆる「花粉症」も、季節性のアレルギー性鼻炎の1つ
  2. 近年「注射しない治療法」が登場
    1. <舌下免疫療法の特徴>
    2. <舌下免疫療法の対象>
    3. <舌下免疫療法を始めるには…>
    4. <舌下免疫療法の実際>
    5. <舌下免疫療法の効果>
  3. ただし、舌下免疫療法が受けられない患者も…

いわゆる「花粉症」も、季節性のアレルギー性鼻炎の1つ

例年2月から4月ころにかけて、スギ花粉が飛散する時期になると「くしゃみが止まらない」「水のような鼻水や鼻つまりのせいで、仕事や授業に集中できない」「目がかゆくて開けられない」という症状で悩む方も多いと思います。

上記はご存じの通り典型的なスギ花粉症であり、アレルギー性鼻炎の代表格です。アレルギー性鼻炎には、スギ花粉症以外の季節性のものだと、ヒノキの花粉症(3月からゴールデンウィーク)や、ブタクサ花粉症(8月から9月)、通年性のものではダニによるアレルギー性鼻炎があります。

アレルギー性鼻炎の時期になると、内科・小児科・耳鼻科等を受診して内服薬・点鼻薬・点眼薬を処方してもらったり、必要に応じて注射の薬でコントロールされたりする方も多いでしょう。

近年「注射しない治療法」が登場

これまで、こうしたアレルギーを治療するにあたっては、アレルギーの原因物質(アレルゲン)に慣れることで根本的な体質改善を期待する方法として、週1回程度の皮下注射による免疫治療が行われてきました。

さらに、数年前からは、1日1回、舌の下の部分でアレルゲンを溶かして、体をアレルゲンに慣らして体質改善を行う舌下免疫療法も開始されました。

<舌下免疫療法の特徴>

治療期間は3~5年と長期にわたりますが、アレルギー症状を長期にわたり改善させる可能性があります。
完全に症状が抑えられない場合でも、アレルギー治療薬の使用量を減少させることが期待できます。

<舌下免疫療法の対象>

舌下免疫療法の対象年齢は5歳以上です。近年は小児のアレルギー疾患が増加しており、季節性アレルギー性鼻炎の代表格であるスギ花粉症も、低年齢化が進んでおります。筆者の経験では、1、2歳のお子さんでも臨床症状や血液検査(特異的IgE抗体や鼻汁好酸球)を加味して診断した例が多くなってきました。

<舌下免疫療法を始めるには…>

まずは、本当にスギ花粉症であるかどうか(他の花粉のアレルギーなどの合併を含めて)、症状の問診や血液検査を行って、勇み足になっていないことを確認します。同時に、舌下免疫は口腔内から吸収されるため、長期にわたり歯科治療(特に矯正治療)が予定されていないかを確認します。

<舌下免疫療法の実際>

治療開始にあたり医師からの説明に同意をしていただいてから、初回は医療機関内で内服を行い、30分以内に過剰なアレルギー反応であるアナフィラキシー(急激な蕁麻疹、呼吸困難、のどの違和感・声がかれるなど)が生じないかどうかを確認します。

最初の1週間は少量を投与し、その後は増量して月1回の受診となります。舌下免疫療法は、スギ花粉が飛散していない6月から11月末までに開始します。これ以外の期間で新規に治療を始めることはできません。

<舌下免疫療法の効果>

自身の症例経験では、治療を開始してから初のスギ花粉シーズンにおいても、自覚症状の改善や、例年必要であった薬の量が少なくなるなど、8割程度の方での改善が確認できております。

ただし、舌下免疫療法が受けられない患者も…

●ダニやスギに対するアレルギーが検査で証明できない方
●ダニやスギの単独ではなく、他のアレルギー原因物質にも感作(かんさ)されている方
●重症の喘息を合併している方
●重症の心疾患・肺高血圧症の方
●重症のアトピー性皮膚炎の方
●自己免疫疾患や免疫不全症などの方
●妊婦・授乳婦の方
●本剤の投与でショックを起こしたことのある方
●ステロイド内服薬や免疫抑制剤を使用している方
●ベータブロッカー、三環系抗うつ薬、MAO阻害剤を服用中の方

舌下免疫治療中によく質問を受ける内容ですが、治療中でも症状がひどい場合には、ステロイドの外用薬(点鼻・点眼薬)は使用可能であり、抗ヒスタミン薬の内服も可能であります。

スギの舌下免疫療法に関して簡単にまとめますと、3~5年と長期間かかりますが、1日1回、ラムネを食べるような感覚でアレルギーに慣れていき、初回のシーズンからも効果が実感できる、新しい治療法です。スギ花粉症の症状で生活に支障がある方は、ぜひご検討いただけるとよいかと思われます。

武井 智昭
武井 智昭(たけい・ともあき)
高座渋谷つばさクリニック 院長
小児科医・内科医・アレルギー科医 2002年、慶応義塾大学医学部卒業。多くの病院・クリニックで小児科医・内科としての経験を積み、現在は高座渋谷つばさクリニック院長を務める。感染症・アレルギー疾患、呼吸器疾患、予防医学などを得意とし、0歳から100歳まで「1世紀を診療する医師」として地域医療に貢献している。
[イシャチョク]高座渋谷つばさクリニック