糖尿病
(画像=※写真はイメージです/PIXTA)

血糖は細胞が生きていくためのエネルギー源です。しかし、血糖値が高くなりすぎると、糖尿病という病気になります。糖尿病とは、どのような病気なのでしょうか。おゆみの中央病院の張替忠直氏が解説します。

目次

  1. 糖尿病の合併症ってなに? 
  2. 具体的な糖尿病の合併症について
  3. 合併症が進行すると起こりうる未来
  4. 合併症の進行を遅らせるために気を付けてほしいこと
  5. 糖尿病治療は長期戦

糖尿病の合併症ってなに? 

糖尿病とは、いろいろな原因によって血糖値が高くなってしまう病気です。身体のなかで血糖値を下げるホルモンとしてインスリンがあります。遺伝や環境因子によりインスリンが効きにくい体質の方やインスリンを出しにくい体質の方がいて、そのような方は血糖値が高い状態が続いてしまう傾向があります。

「そもそも、どうして血糖値が高いと体によくないの?」

このように疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。血糖値が高いと糖尿病特有の合併症や、動脈硬化がすすみさまざまな合併症に悩まされる可能性があるのです。

私が患者さんに説明する際によく使う例えなのですが、たき火のイメージをしてみてください。

たき火をコントロールできていれば火は小さいままですが、放置しておくと火事になってしまうこともありますよね。同じように糖尿病をコントロールできていれば合併症は起きにくくなります。

しかしながら、そのまま治療をしないでいると、まるで火事に燃え広がってしまったかのように、日々の生活の質が落ちてしまう程度の合併症から直接死に至ってしまうような重篤な合併症までさまざまな合併症が起こります。

ここで1つ質問です。糖尿病の治療目標ってご存じですか。

「血糖値が上がる病気なのだから、当然血糖値を下げることでしょ」

こう考える方が多いと思いますが実際には少し異なります。ガイドラインでは「血糖値などのコントロールを行い、糖尿病をもたない方と同じように生活の質を保ちつつ、寿命の確保をすること」となっています。

つまり、ただ血糖値を下げればよいというわけではなく、目標となる生活の質を保ち寿命を確保することが大切なのであって、その障害となるのが糖尿病の合併症なのです。そのため、合併症を起こさないように火を小さいままコントロールを続ける努力がとても大切です。

具体的な糖尿病の合併症について

糖尿病3大合併症として「しめじ」という言葉を聞いたことがありますか。

これは神経(糖尿病性神経障害)、目(糖尿病性網膜症)、腎臓(糖尿病性腎症)に起こる病気で頭文字をとって「しめじ」と呼ばれます。

<糖尿病のしめじ> し=神経の障害 め=目の障害 じ=腎臓の障害

これらは糖尿病合併症の中でも細小血管症と呼ばれ、細い血管が障害されて起こる、糖尿病に特有の合併症となります。

一方で大血管症と呼ばれる合併症があります。脳の血管が詰まってしまう脳梗塞や脳の血管が破れて出血してしまう脳出血、心臓の血管が狭くなってしまう狭心症や詰まってしまう心筋梗塞、下肢の血管が狭くなったり閉塞してしまったりする末梢血管障害などが含まれます。

この他にも骨折、脂肪肝、歯周病、認知症、勃起障害、足の潰瘍など頭のてっぺんから足の先まで、全身のあらゆる臓器に起こります。

合併症が進行すると起こりうる未来

では合併症が進行してしまうとどのような症状が起こるのでしょうか。

糖尿病性神経障害では感覚が低下します。足の裏に紙一枚挟んだ感覚や絨毯を踏んでいる感覚など表現される方が多いです。さらに進行すると足の痛みを感じなくなったり、温度を感じにくくなったりします。

ここで気を付けてほしいのが、足に傷ができても気が付かず受診が遅れ重症化するケースです。一方で、見た目ではなにも異常がないのに痛みを感じる方もみられ、電気が走るような痛み、焼けるような痛みを感じることがあります。

糖尿病性網膜症では最初は無症状です。「目が見えにくいな」と感じたときには既にだいぶ進行していることが多く、ひどい場合では失明してしまうことも起こります。定期的な眼科受診は忘れないようにしましょう。

糖尿病性腎症は、最初は尿に蛋白が漏れ出る程度で、症状としては何もありません。その後、進行しておこることは腎機能の低下です。最終的には透析が必要となることもあります。糖尿病は透析の原因疾患として1位となっており、一度透析が始まると週3回、1回4時間以上(通院時間なども含めるとさらに)を拘束されます。

大血管症は糖尿病患者が脳梗塞を起こすリスクを2~3倍高くなります。また、心筋梗塞や狭心症を起こすリスクは約3倍高くなります。しかし、比較的新しい治療薬では心臓に対していい効果が報告されているためそれらを使うことでリスクを減らすことができるかもしれません。

このように、糖尿病の合併症は日常生活の質を落とす病気から死に至る病気までさまざまです。仮に一命を取り留めても後遺症が残る場合もありますので、合併症を起こさないこと、進行を遅らせることがなによりも大切です。

合併症の進行を遅らせるために気を付けてほしいこと

合併症の予防のためになにかできるのでしょうか。

まず最も大事なことは血糖コントロールをよくすることです。特に、「具体的な糖尿病の合併症について」で触れた3大合併症である細小血管症の糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症では高血糖による代謝異常が原因になるため、早いうちからよいコントロールを目指しましょう。

ガイドラインでは合併症予防のための目標としてHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)7%未満が掲げられています。HbA1cとは私たちがよく使う血糖コントロールの指標となるものです。しかし、7%未満を達成している割合は糖尿病患者の内の2人に1人程であるとの報告が見られており、なかなか達成できない方もいることが現状です。

糖尿病の治療は血糖値だけではなく、高血圧や脂質異常症などのコントロールも重要です。脳や心臓の病気を起こす合併症には血圧やコレステロールなどの管理を厳格に行うことで起こすリスクを減らすことがわかっています。他にもタバコや肥満もリスクになりますのでひとつでもリスクを減らしていくことが大切です。

そして、糖尿病ではない人でも注意が必要です。なぜなら境界型糖尿病でも心臓や脳の合併症の発症に関与することがわかっているからです。境界型糖尿病とは正常型、糖尿病型のどちらにも属さないとされています。健康診断で血糖値、もしくはHbA1cの数値が基準値より高い場合は一度受診して医師に相談してみましょう。

糖尿病治療は長期戦

ここまで読んだあなたはもうお気づきかもしれませんが、糖尿病治療は長期戦です。糖尿病は発症してからずっと付き合う必要があります。長期間コントロールがいい状態を保つためには、上手に糖尿病と付き合っていくことが大切です。血圧が高い方やコレステロールが高い方も同様です。

最初にもお伝えした通り、糖尿病の発症や治療には体質が強く影響します。

「薬を飲むのは努力が足りないからだ」 「食事、運動を頑張るから薬はいらないです」

こういった言葉をよく耳にします。しかし、食事や運動療法を徹底していても薬が必要な方はいます。薬は不足している部分を補う「味方」であり、決して敵ではありません。

糖尿病は人それぞれの体質に、生活習慣や生活の状況などを総合的に考慮して適した治療を続けていく必要があります。これは難しいことですからぜひ一度は糖尿病内科の医師に見てもらうようにしてください。内服や自分の継続できる食事療法、運動療法を続けて自らの人生を大いに楽しむ、これが糖尿病の治療で大事なことです。

この記事があなたの明るい未来につながることを祈っています。

末光 智子
張替 忠直(はりがえ・ただなお)
おゆみの中央病院 内科医師/日本糖尿病学会専門医 2014年に日本医科大学を卒業後、国立国際医療研究センター国府台病院で専攻医として日々糖尿病を中心としたさまざまな疾患を経験。2020年に地域の糖尿病のニーズに応えるべくおゆみの中央病院に勤務。 生活している環境に密接に関係する糖尿病であるからこそ、価値観や健康状態、生活状況、場合によっては周囲の支援なども総合的に考え、患者ひとりひとりにあった最適な治療を目指し日々奮闘している。