ストレス社会で増加している「男性の更年期障害(LOH症候群)」
(画像=(※画像はイメージです/PIXTA))

加齢とともに慢性的な関節の痛みを訴える人が多くなっています。特に、変形性ひざ関節症の痛みについては、放置すると痛みが増すことにより、QOL(生活の質)は大きく低下しています。今回は、イタリアの名門サッカークラブ「ACミラン」に医師として留学した経験もある、整形外科医の齋田良知先生が、関節痛に効果がある新たな治療法について解説します。

目次

  1. 加齢を伴う「関節炎や関節痛」の一般的な治療法
  2. 超有名スポーツ選手も利用…痛み抑制の「PRP療法」
  3. 「組織修復」に特化した「PFC-FD療法」のメリット
  4. PFC−FD療法の効果をさらに高めた「VFD療法」
  5. PFC-FD療法・VFD療法…診断から治療後の経過まで

加齢を伴う「関節炎や関節痛」の一般的な治療法

従来、加齢に伴うひざ関節の炎症や痛みには、内服薬やヒアルロン酸の注射による治療「保存的治療」と、人工関節などを入れる「手術による治療」しか方法がありませんでした。

毎日痛みに耐えながら、それでも「手術は嫌だ」と我慢を強いられている患者さんも少なくありません。

超有名スポーツ選手も利用…痛み抑制の「PRP療法」

いま、自身の血液や脂肪などを活用した関節治療が注目されています。

私たちが外傷を負ったり身体に炎症を起こすと、血液中の血小板という成分が直ちに傷口や炎症の部位に集まり修復を行います。

血小板には「組織修復」と「抗炎症(痛みや腫れの緩和)」という2つの作用があることがわかっています。

PRP(※)療法はこの働きを利用し、患者さん自身の血液を採取して、特殊な技術を用いて血液中の血小板が多く含まれる部分のみを抽出し、自己PRPを作成します。

(※)PRP=Platelet-Rich Plasma

このPRPには、成長因子が豊富に含まれており、患者さん自身が持つ修復力をサポートします。自分の血液であるため副作用もほとんどなく、患部に入れることで組織修復や抗炎症効果が促進され、早期治癒や痛みを軽減します。

PRP療法はタイガーウッズ選手や田中将大投手、大谷選手らスポーツ選手のけがの改善に使用され、一躍注目されました。

「組織修復」に特化した「PFC-FD療法」のメリット

さらに研究を進めていくと、PRPには主な成長因子(血小板が傷を治す際に放出するもの)が5~7種類あり、それぞれ働きが異なることがわかりました。

そこでPRPがもつ「組織修復」をターゲットにした研究を進め、PRPに含まれる成長因子を濃縮し、成分を高めた成長因子のみを抽出・濾過して無細胞化し凍結乾燥させたPFC-FD(※)を作成することができました。

(※)PFC-FD=Platelet-Derived Factor Concentrate Freeze Dry​

■PFC-FDに含まれる主な成長因子

・PDGF血管新生や細胞増殖を促進

・マクロファージ活性化

・TGF-β線維芽細胞の増生

・新生創傷治癒促進

・FGF筋細胞の増殖

・血管新生促進

・VEGF血管内皮細胞の増殖や血管新生を促進

・EGF幹細胞増殖・分化他成長因子の効果増強

このPFC-FD療法は、成長因子のみを凍結したフリーズドライ製法のため保存できることから、痛みを伴う傷の修復が必要な際にすぐ治療できることが最大のメリットです。

PFC−FD療法の効果をさらに高めた「VFD療法」

そして、順天堂大学の研究講座と細胞を精製している企業との共同研究によりPFC-FD療法の効果を更に高めることができました。その治療法がVFD療法(※)です。

(※):VFD=Valuable Platelet-Derived Factor Concentrate Freeze Dry

VFD療法は、成長因子をより高濃度に濃縮することに成功したため、従来の治療法に比べて、組織修復作用も抗炎症作用も格段に高まっています。

また、PFC-FD療法同様に高濃縮した成長因子をフリーズドライしているため、事前に血液を採取して精製しておけば、痛みが出たり傷を負った際にすぐに治療できるというメリットは当然そのままです。現在、順天堂大学病院関連施設を中心とした、ごく限られた医療機関(※)でのみ治療を受けることができます。

(※)国内6施設2021年11月1日現在

PFC-FD療法・VFD療法…診断から治療後の経過まで

これらの療法は、もともとスポーツ選手や一流アスリートへの治療法として始まりましたが、現在では多くの方が受診しています。

例えば、変形性ひざ関節炎によるひざの痛みで悩んでいる人には適応です。また、ゴルフやテニスなどによる肘関節、股関節、肩関節などの他、靭帯損傷や腱炎(けんえん)などにも適用可能です。

初回受診では関節の状態、痛みの強さなどを医師に伝えます。そこでVFD療法について詳しく話を聞いたあと、40mLほどの採血を行い、専門の加工受託施設で血小板の活性化、成長因子の抽出などを経て粉末状のVFDを得ることができます。

VFD療法では、1回の採血で部位により3回(~6回)分注射することができます。ひざの場合、採血から約1ヵ月後の受診時に1回目のVFD療法を行い、その経過を見ながらさらに追加で2回のVFDを行うことが可能です。

VFD療法は自己血を使った副作用の少ない安全・安心な治療法です。

治療後の経過は、関節の変形の状態によって個人差がありますが、約6割の人が関節の痛みから解放されています。ただし、通常の痛み止めとは異なるため、注射後3~7日程度は関節の腫れや痛みが出ることがありますが、その後軽快します。

齋田 良知
齋田 良知
順天堂大学スポーツ医学・再生医療講座 特任教授/東京国際クリニック・整形外科医/いわきFCチームドクター
2001年に順天堂大学医学部医学科を卒業し、同年に順天堂大学整形外科・スポーツ診療科入局。2007年に医学博士号を取得した後、2015年にはイタリアIstituto Ortopedico Galeazzi及びACミランへ留学。その後、2018年に順天堂大学整形外科講師、2019年には順天堂大学整形外科准教授を経て、2020年より順天堂大学スポーツ医学・再生医療講座特任教授を併任。 現在、東京国際クリニック、そのほかいわきFCクリニックなどにおいて、VFD療法の診療を行っている。