(画像=(※画像はイメージです/PIXTA))

日本人にとって欠かせない毎日の入浴。寒い冬の時期、温かいお風呂に入り冷えた体を温めたくなりますよね。リラックスのため長湯してのぼせたり、うっかり寝てしまってヒヤリとした経験はないでしょうか。お風呂研究20年、3万人を調査した医師が冬場の入浴で気をつけるべき症状、ポイントを解説します。

目次

  1. 正しく入れば健康寿命を延ばす「お風呂」の効能
  2. 入り方を間違えると入浴は大きな事故につながる
    1. ①入浴中、寝てしまう、ぼんやりしてくる
    2. ②胸が痛む、苦しい、冷や汗が出る
    3. ③気分が悪い、吐き気がする
    4. ④急な激しい頭痛、手足のしびれ、力が入らない、ろれつが回らない、口角からよだれが漏れる
  3. 入浴事故を防ぐためのポイントとは

正しく入れば健康寿命を延ばす「お風呂」の効能

疲労回復や睡眠改善など、何となく健康に良さそうなイメージのお風呂(浴槽入浴)ですが、これまでは1回入浴して前後で心身がどう変化するのか、といった短期的な実験研究結果が中心でした。

ところが、最近になって研究が進みお風呂の長期的な健康効果がかなり分かってきました。私たちが2019年に発表した研究結果では、毎日お風呂に入る人は、週0~2回しかお風呂に入らない人と比べて将来要介護状態になってしまうリスクが29%も減ることが分かってきました。

さらに2020年には他の研究グループが毎日お風呂に入ると脳卒中や心筋梗塞になるリスクが約3割減ることを発表しました。お風呂は、短期的な疲労回復や睡眠の改善といった効果だけではなく、長期的な健康効果があることは明らかになりつつあります。

入り方を間違えると入浴は大きな事故につながる

一方、入浴に関連する事故も時々報告されています。2020年2月には野村克也監督が自宅の浴槽内で発見され亡くなっています。2013年の厚生労働省の研究班の報告では1万9000人の方が入浴に関連して亡くなっていると推定しています。健康に良いお風呂ですが、入り方を誤ると大きな事故につながるのも事実です。特に気温が下がる冬に事故が集中するのも特徴です。

入浴中こんな症状はありませんか?

①入浴中、寝てしまう、ぼんやりしてくる

「うっかり入浴中に浴槽の中で寝てしまった」ということはよく聞く話です。特に飲酒後に多く発生しますが、この症状は場合によっては重大な事故につながる前兆でもあります。

温まって気持ちよくなって寝入っただけでは? と思われる方もいるかもしれませんが、入浴中の事故や急病の原因として熱中症が挙げられます。熱中症というと、夏に屋外で発生するもの、というイメージが強いかもしれませんが、体が温められすぎるとどこでも発症しますので、入浴中にも起こります。

熱中症の症状の1つとしてぼんやりしてくる、意識がなくなる、というものがあります。浴槽内で眠くなりだるくなってくるのは熱中症の症状である可能性もあります。そのまま浴槽で寝てしまい、湯につかり続けていると体温がどんどん上昇してしまい、本人は気がつかないまま本格的な熱中症となってしまい命にかかわることがあります。また、湯の中で意識を失うことは溺死の危険性も高まります。

対処法:浴槽内で眠たくなってきたり、だるくなってきた場合は、すぐに浴槽から出るようにします。もし、すでに体が動かない場合は家族を呼ぶなどして助けを求めましょう。浴槽から立ち上がれなくても、もし浴槽の栓を抜けるなら、栓を抜いて湯中の環境から抜け出します。浴槽内にいても、湯が排水されれば救助してもらうまでの時間が稼げます。また、飲酒後は酔いが覚めないうちの入浴は避け、シャワーだけにします。

②胸が痛む、苦しい、冷や汗が出る

寒い冬に暖房の入っていない脱衣室で服を脱ぐと寒さで血圧が急上昇します。これがいわゆる「ヒートショック」です。血圧の急上昇は心臓に負担をかけ、狭心症を起こしたり、場合によっては心筋梗塞を引き起こす可能性があります。

対処法:もし浴槽につかっていたら即洗い場に出ます。洗い場は内開きのドアが多く、洗い場で倒れこむとドアが開かず救助が遅れますので、できれば脱衣室まで出るとよいでしょう。安静にして数分で収まる場合は救急車を呼ぶほどではありませんが、狭心症の可能性もあり、なるべく早く家族や付き添いの方といっしょに循環器内科を受診しましょう。脱衣室で休んでいても20分以上胸痛が続くときは心筋梗塞を疑いますので恥ずかしがったり遠慮せず救急車を呼びます。胸痛が続いている状態で救急車を呼んで受診して迷惑がられることは一切ありません。

③気分が悪い、吐き気がする

これも熱中症の初期症状や、狭心症や心筋梗塞の症状である可能性もあります。対処は②と同様にまずは浴槽から出るようにします。

④急な激しい頭痛、手足のしびれ、力が入らない、ろれつが回らない、口角からよだれが漏れる

入浴の前後でこのような症状が1つでも急に起こったら脳卒中(くも膜下出血、脳出血、脳梗塞)などを疑います。くも膜下出血や脳出血は頭痛を伴うことが多いのですが、脳梗塞は手足のしびれや力が入らないという症状が主になり、頭痛はないことがほとんどです。「疲れかな?気のせい」とか、「そのうち治るだろう」ということでそのまま入浴しつづけてしまうと、体に力が入らず立ち上がれなくなり、浴槽から出られなくなり溺れてしまう可能性があります。

対処法:この場合もまずは浴槽から出て可能なら脱衣室に戻りましょう。力が入らず、すでに立ち上がれない場合は、①と同様に浴槽の栓を抜きます。家族が駆けつけて、1人で浴槽から抱きかかえることが難しい場合でも浴槽の栓を抜いて救急車を呼びます。受診せず、そのまま様子を見ていると麻痺の後遺症が残りますので、早急に受診をします。脱力がすぐに回復することもありますが、一過性脳虚血発作といって本格的な脳梗塞の前兆であることが多いです。そのまま放置せず、必ず内科や神経内科、脳外科などを受診しましょう。

入浴事故を防ぐためのポイントとは

このような入浴事故を防ぐためにはいくつかのポイントがあります

・脱衣室、浴室のあたため
・湯の温度は40℃まで、10分程度、長くても15分で浴槽から出る
・入浴前にコップ1~2杯の水分摂取
・入浴前の十分なかけ湯

リビンクと脱衣室、浴室の温度差は5℃以内とします。暖房設置や浴室の場合、熱めの湯でシャワーを事前に2~3分洗い場にかけ流しをして温めます。血圧を上げないように冬であっても湯の温度は40℃までして入浴前の十分なかけ湯もします。脱水のために血液がどろどろになって血栓ができて血管が詰まらないように入浴前にコップ1~2杯の水分摂取を心がけます。

安全な入浴のポイントを守って入浴の健康効果をしっかり享受しましょう!

早坂 信哉
早坂 信哉(はやさかしんや)
東京都市大学人間科学部学部長・教授 博士(医学)、温泉療法専門医。 高齢者医療の経験から入浴の重要性に気づき20年にわたり3万人以上の入浴を調査した入浴や温泉に関する医学的研究の第一人者。「世界一受けたい授業」などのテレビ出演、執筆や講演など多方面で活躍中。著書「おうち時間を快適に過ごす 入浴は究極の疲労回復術」(山と溪谷社)など。