ダウン症の原因とは?症状や発症する確率、予防法を解説
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現在日本では約700人に1人の割合でダウン症の赤ちゃんが生まれています。ダウン症は染色体異常によって起こる先天性疾患ですが、「親の食べ物や喫煙は原因になる?」など気になっている方も多いのではないでしょうか。今回はグローバルヘルスケアクリニックの水野泰孝先生が、ダウン症の原因や症状、ダウン症の赤ちゃんが生まれる確率、予防法などを解説します。

目次

  1. ダウン症の症状
    1. ◇身体的な症状
    2. ◇精神的な症状
  2. ダウン症の原因
    1. ◇母親の年齢
    2. ◇遺伝によるもの(転座型ダウン症)
    3. 妊娠中の食べ物や喫煙はダウン症の原因になる?
  3. ダウン症の赤ちゃんが生まれる確率
  4. 子供がダウン症であるかどうかはいつわかる?
    1. ◇母体血清マーカーテスト
    2. ◇新型出生前診断(NIPT)
    3. ◇羊水検査
    4. ◇絨毛(じゅうもう)検査
  5. ダウン症の予防法
    1. ◇できるだけ若い年齢で妊娠計画を立てる
    2. ◇葉酸の摂取によるダウン症予防効果は証明されていない
  6. 出生前診断を受ける際はご家族とよく相談を

ダウン症の症状

ダウン症は「21トリソミー」とも呼ばれる先天異常です。人間の遺伝子は23組46本の染色体で構成されていますが、何らかの原因で赤ちゃんの21番染色体が1本余分になることでダウン症が発症します。

ダウン症の赤ちゃんは心身の成長がゆっくりとなる傾向がありますが、障害の程度は一人ひとり異なります。ダウン症の身体的・おもな症状は以下のとおりです。

◇身体的な症状

ダウン症の子どもは低身長であることが多く、肥満になるリスクも高くなります。そのほか、顔や体に以下のような特徴的な症状がみられます。

  • 頭:やや小さく、後頭部が絶壁になっている。
  • 顔:広く扁平
  • 耳:小さくて丸い。位置はやや低い。
  • 眼:つり上がっている。両目が少し離れている。
  • 鼻:低くて小さめ
  • 舌:大きめで前に出ており、口が開いたままになる
  • 手:小さくて横幅が広い。手の平を横切るようにまっすぐ1本のしわがある

出生時は正常に見えていても、成長するにつれて上記のような特徴が現れる場合もあります。また、心臓や消化器の先天異常がみられることも多く、筋肉量や筋緊張も少ないためハイハイや歩行の習得に時間を要するケースもあります。

◇精神的な症状

ダウン症の子どもは運動能力や言葉に発達の遅れがみられ、性格は内向的でおっとりしている傾向があります。健常児のIQが平均100であるのに対しダウン症の子どものIQは平均50ですが、早期に教育面の介入を行うことで能力を高めることが可能です。

また、精神的な症状として知的障害があげられますが、個人差があるのが特徴です。そのため、成人してから自分自身で日常生活を送れる方や、ダンサーやスポーツ選手として活動されている方もいます。

ダウン症の原因

ダウン症は21番目の染色体が1本多くなることで発症する先天性の疾患ですが、染色体の以上が発生する原因ははっきりと解明されていません。ただ、母親の年齢が高くなるほど赤ちゃんに染色体異常が発生する確率が上昇することが分かっています。

また、多くの場合は突然変異によって遺伝子異常が現れますが、親が持つ遺伝子異常が子どもに遺伝することもあります。

◇母親の年齢

どの夫婦にもダウン症の赤ちゃんが生まれる可能性はありますが、母親の年齢が高くなるほどダウン症の発生率が高くなります。

母親の年齢が高いと「卵子が作られて排卵されるまでの期間」が長くなりますが、卵子を長期間保存することで染色体に影響が及ぶと考えられています。

◇遺伝によるもの(転座型ダウン症)

多くのダウン症の原因は遺伝とは無関係ですが、まれに両親どちらかが持っている「転座染色体」によって発症することがあります。(ダウン症患者の約5%)

遺伝によって起こるダウン症を「転座型ダウン症」と呼びますが、「転座」とは3本ある21番染色体のなかの1本がほかの染色体にくっつくことをいいます。両親のどちらかが転座を持っている場合は健康状態や年齢に関わらずダウン症の赤ちゃんが生まれる確率が高くなります。

妊娠中の食べ物や喫煙はダウン症の原因になる?

現在のところ、妊娠中に母親が摂取した食べ物や喫煙が原因で子どもがダウン症になるということは科学的に証明されていません。しかし、喫煙によってダウン症の発生リスクが高まる可能性が指摘されているのは事実です。

「米国のCDCなどの共同研究では、ダウン症候群の調査で、34歳以下の母親で喫煙による発生リスク上昇が2.98倍になると報告されているが、一方では逆の報告もある。」 引用:広島県医師会

妊娠中の喫煙や受動喫煙はダウン症だけでなく早期破水や胎盤異常、低出生体重などさまざまな悪影響を及ぼす可能性があるため、必ず控えましょう。

ダウン症の赤ちゃんが生まれる確率

厚生労働省がまとめた資料によると、ダウン症の赤ちゃんが生まれる頻度は以下のとおりです。



母親の年齢
ダウン症の赤ちゃんが生まれる頻度
20歳
1/1667
25歳
1/1250
30歳
1/952
33歳
1/625
35歳
1/385
37歳
1/227
40歳
1/106
43歳
1/50
45歳
1/30

引用:厚生労働省「不妊に悩む方への特定治療支援事業等の あり方に関する検討会 」報告書 参考資料

母親が20歳の場合ダウン症の赤ちゃんを出産する確率は1667分の1ですが、35歳の場合は385分の1まで上がります。

また、過去にダウン症の赤ちゃんを出産したことがある方が次の妊娠で再びダウン症の赤ちゃんを出産する確率は、同じ年齢の女性より2~4倍高くなることが分かっています。

子供がダウン症であるかどうかはいつわかる?

子供がダウン症であるかどうかは出生前診断で調査できます。妊娠後に染色体異常の有無を調べる方法としては、以下の4つがあります。

  • 母体血清マーカーテスト
  • 新型出生前診断(NIPT)
  • 羊水検査
  • 絨毛検査

以下でそれぞれのリスクや検査の精度などについてくわしく解説します。

◇母体血清マーカーテスト

母体血清マーカーテストは妊婦の血液中の4種類の成分を測定し、胎児がダウン症や18トリソミー、開放性神経管奇形である確率を算出するスクリーニング検査です。

検査を受けられる時期:妊娠15~21週(妊娠16週頃までが望ましい) 検査の精度:80~85%

比較的妊娠早期に受けられますが、母体血清マーカーテストではダウン症の80~85%しか検出できません。そのため、確定診断の検査ではなくダウン症である確率を予測するための「スクリーニング検査」である点に注意が必要です。

◇新型出生前診断(NIPT)

新型出生前診断(NIPT:無侵襲的出生前遺伝学的検査)とは妊婦の血液を採取し、わずかに含まれる赤ちゃんのDNAからダウン症であるかどうかを診断する検査です。

  • 検査を受けられる時期:妊娠10~18週
  • 検査の精度:99.9%以上

新型出生前診断は流産のリスクがない点が大きなメリットで、母体血清マーカーテストより精度も高くなっています。

しかし妊婦の年齢が若いと要請的中率が下がってしまうので、確定診断ではなくスクリーニング検査という位置づけになっています。

そのため新型出生前で陽性反応が出た場合、以下の羊水検査や絨毛検査などの確定診断(精度100%)を受けることが推奨されています。

◇羊水検査

羊水検査は妊婦の腹部に注射器を刺して子宮から羊水を採取する検査方法です。羊水の中には赤ちゃんの古くなった皮膚の細胞などが浮いているので、羊水を採取することで染色体異常の有無を調べられます。

  • 検査を受けられる時期:妊娠15~18週
  • 検査の精度:100%

羊水検査をすると100%の確率でダウン症であるかどうかが分かりますが、子宮に注射器を刺すので負担が大きく、赤ちゃんを傷つけてしまうリスクがあります。

なお、羊水検査後に流産が起こるリスクは0.1%~0.3%です。(自然流産の可能性を含む)

◇絨毛(じゅうもう)検査

絨毛(じゅうもう)検査は胎盤の一部を採取し、赤ちゃんの染色体異常や遺伝子疾患を調査する検査です。

検査方法は妊婦のお腹に針を刺す方法と、膣から子宮頚管に器具を通して採取する方法の2種類があります。

  • 検査を受けられる時期:妊娠11~13週
  • 検査の精度:100%

絨毛検査は羊水検査より早い時期に検査を受けられますが、流産のリスクが0.2%程度ある点について理解しておく必要があります。

ダウン症の予防法

ダウン症は染色体の異常が原因のため、現在のところ根本的な治療方法はありません。それでは、妊娠前に染色体異常を予防する方法はあるのでしょうか。以下ではダウン症の発症確率を下げる方法について解説します。

◇できるだけ若い年齢で妊娠計画を立てる

赤ちゃんがダウン症になる確率を少しでも下げるためには、なるべく若いうちに妊娠する計画を立てることが有効です。

近年は女性の社会進出や晩婚化などによって高齢出産を経験する方の割合が増えています。

しかし母親の年齢が上がるほど染色体異常が発生する確率が高まってしまうため、できる限り早いタイミングで妊娠することが望ましいといえます。

◇葉酸の摂取によるダウン症予防効果は証明されていない

ビタミンB群の一種である葉酸は二分脊椎などの神経管閉鎖障害の発症リスクを低減できることが分かっています。しかし妊婦が葉酸を摂取することで赤ちゃんのダウン症を直接予防できるという事実は科学的には証明されていません。

とはいえ近年では神経管閉鎖障害とダウン症の発症の関係性を示唆する研究報告も見られます。

以上のことから、葉酸の摂取によって確実にダウン症を予防できるわけではありませんが、適切に摂取することでリスクを軽減できる可能性があります。

出生前診断を受ける際はご家族とよく相談を

多かれ少なかれ、どの夫婦にもダウン症の赤ちゃんが生まれる可能性はあります。しかし母親の年齢が若いうちに妊娠することでダウン症の発生確率を下げられるため、できるだけ早いうちに妊娠することをおすすめします。

なお、35歳以上の高齢出産が増えている近年は、希望すれば出生前診断によって赤ちゃんがダウン症かどうかを調べられます。

出生前診断を受ける前は医療機関でしっかりとカウンセリングを受け、結果が出た後にどうするかを家族でよく相談しておきましょう。また、検査によって子どもがダウン症であることが分かった際に最適なサポートが受けられる医療機関を選んでおくことも重要です。

水野泰孝
水野 泰孝(みずの・やすたか)
日本小児科学会認定小児科専門医 /アレルギー専門医 /感染症専門医
国際協力機構(JICA)顧問医として7年間勤務。大学病院やナショナルセンターを基盤に小児科および感染症内科、特に熱帯感染症の臨床と研究、海外渡航者の健康管理などに長年携わる。 2020年6月にプライマリケアを行う診療所「グローバルヘルスケアクリニック」を開設。感染症に関するTV・ラジオ出演は2020-2021年だけで1000件近い。
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