副腎 よく噛む
(画像=画像はイメージです/PIXTA)

気づかぬうちに陥っている副腎疲労ですが、日常のほんの些細な習慣を変えるだけで副腎ケアができるようになります。「副腎疲労を知る」第10回目の今回は、副腎ケアのカギになる「腸のケア」、「腸の炎症を抑える」ことに着目して解説します。

目次

  1. 知らないうちに腸にダメージを与える「食べ方」
  2. なぜ「よく噛むこと」が大切なのか?
    1. 【よく噛んだ場合】消化・吸収されるまで
    2. 【噛まずに食べた場合】消化・吸収されるまで
  3. よく噛まない=「栄養不足」を引き起こす

知らないうちに腸にダメージを与える「食べ方」

今回は、知らないうちに腸にダメージを与える日常の習慣についてみていきましょう。

まずは、「食べ方」です。

あまり噛まずに食べるのが習慣になっていませんか? 「よく噛む」ということは、食物のこれから始まる消化、吸収、排泄に大きく影響する、とても大切なポイントです。

そんなことか……と、拍子抜けしたかもしれません。けれど、こうした一見当たり前のことをバカにしてやらないままに、安易に他の健康情報に飛びついてしまう人が少なくありません。

どんなに体にいいものをとっても、それらが本当に効果的であるためには、ちゃんと消化され、吸収されることが大切です。いいと思って摂った食物が、栄養価の高い食物が、消化が不十分で、栄養素が吸収されることなく、結局排泄されてしまったとしたら?

それは意味がありませんね。

どんなにいいものも食べれば完了、ではなく、しっかり消化して、吸収されること、そして不要なものがちゃんと排泄されること、ここまでをセットで考えましょう。

なぜ「よく噛むこと」が大切なのか?

さて、ではなぜ「よく噛むこと」が腸の炎症を抑えるうえで大切なのでしょうか。

口から摂った食物が消化・吸収される過程というのは、意識しなくてもカラダが毎日、休みなくおこなってくれているため、単純な、簡単なものだと思いがちです。ですが、その仕組み・それぞれの過程は、とても複雑に関与し合っていて、どこか1ヵ所がうまくいかなくなると、消化・吸収・排泄の一連のプロセスに大きく影響してきます。

「噛む」こと、別のいい方をすると「咀嚼すること」は、消化・吸収・排泄のプロセスの大切なスタートになります。

「噛む」ことで、まずは唾液がでます。そして、その後の消化で働く胃や膵臓へ、前もって「これから食べ物がきます」と知らせることになります。このお知らせがあってこそ、胃は胃酸を、すい(膵)臓は消化酵素を含むすい(膵)液を準備します。

【よく噛んだ場合】消化・吸収されるまで

人間が、食物から必要な栄養素を吸収するのは、主に小腸です。この小腸に行くまでに、しっかりと胃酸やすい液によって、吸収できる最小単位であるブドウ糖やアミノ酸にまで栄養素が分解されて初めて、小腸の粘膜から吸収されます。

皆さんは、炭水化物は炭水化物のまま、タンパク質はタンパク質のまま、吸収されると思っていませんか?お肉に含まれるタンパク質を例に、カラダのなかでの消化・吸収の旅をちょっとのぞいてみましょう。

タンパク質は、様々な種類のアミノ酸の玉が数珠状につながり、それがらせん状や折り畳まれた形の立体構造をしています。タンパク質そのままでは分子量も大きなものです。

まずは噛むこと、そして唾液と混ざることで、お肉はやわらかく、含まれる栄養素が取り出されやすい状態になっていきます。

そして、胃で胃酸という強い酸に触れることで、タンパク質の立体構造が分解されていきます。

次に十二指腸へと移動し、すい臓から出るすい液と混じります。すい液に含まれるタンパク質分解酵素の働きを受けて、数珠つなぎにつながっていたアミノ酸がようやくバラバラになっていき、小腸の空腸に着くころにはほとんどがアミノ酸に分解されます。

こうなって初めて小腸の粘膜から吸収されます。吸収されることで、血液中でアミノ酸として必要なところに運ばれていきます。

【噛まずに食べた場合】消化・吸収されるまで

では、よく噛まずに食べた場合、一体なにが起こるでしょうか。

よく噛まないため、唾液の分泌も不足し、食べ物は硬い塊のまま消化管のなかを進みます。胃やすい臓は消化のための準備が整わないまま食べ物がやってくることになり、胃酸や消化液の分泌が不十分になります。

胃液・消化液の作用を十分に受けず、アミノ酸にまで小さく分解されなかったタンパク質は、小腸の粘膜から吸収されませんから、それは大腸へと排泄される方へ向かっていきます。

十分に分解されないタンパク質は分子量も大きいままですので、大腸へと移動する過程で、物理的にも腸粘膜を傷つけていきます。

そして、吸収されないままタンパク質が大腸へ行くと、そこにはたくさんの腸内細菌たちが待っています。これらの腸内細菌に過剰な栄養分を与えてしまい、前回書いた、腸内フローラの適切なバランスが崩れていきます。

よく噛まない=「栄養不足」を引き起こす

タンパク質を例に出しましたが、これは炭水化物など他の栄養素でも同じことです。消化をおろそかにしてしまうと、本来、私たちに吸収されるはずの栄養を私たちが使うことができず、腸内細菌のエサになってしまうのです。

もちろん、人の体にとっては栄養素の不足も引き起こしかねません。上の例でいうと、アミノ酸が不足してしまうばかりか、ビタミンやミネラルの吸収も妨げられ、様々な栄養素の欠乏が起こり得ます。

そこに、過剰な栄養でバランスが変わってしまった腸内細菌たちが腸の炎症の引き金になる、つまり、リーキーガット症候群、ひいては副腎疲労へとつながっていきます。

この、なし崩し的なダメージの最初の始まりはなにか。それが、ほとんど噛まない、という、食べ物を口に入れる、そのスタートから始まっているのです。

「よく噛んで食べなさい」子供のころ、何度もいわれたことはありませんか?ふだん意識もしない「咀嚼」の大切さ、今一度見直してみましょう。

ココロやカラダの元気さは、こんな簡単なことから始まりますよ。

末光 智子
末光 智子(すえみつ・ともこ)
内科医。自治医科大学卒業後、愛媛で地域医療に従事。結婚後、三重県在住、四日市ヘルスプラス診療所(四日市消化器病センター 分院)勤務。日本内科学会認定総合内科専門医、日本医師会認定産業医。Body Element System Japan認定ピラティスインストラクター、ジョイ石井認定イメージングカウンセラー、プロフェッショナル・ファスティングマイスター。著書「すこやかで幸せになるために ココロとカラダを調える」(出版社:ギャラクシーブックス)