(画像=PIXTA)

ほとんどの人にとって「歩く」という動作は、何気なく行う運動でしょう。背筋を伸ばして、大きく腕を振って、足の裏でしっかり地面を蹴って…というように、「正しい歩行」を意識することは少ないのではないでしょうか。しかし、実は「何気なく道を歩く」うちに体が歪み、不調に陥ることがあります。

目次

  1. 「歩きにくさ」の原因は「体の重心」だったが…
  2. 重心がずれる元凶は「道路の構造」だった
  3. 散歩ルートの調整、筋トレで重心を改善
  4. 「歩きスマホ」なども不調の一因
  5. 「正しい歩行」のための一工夫

「歩きにくさ」の原因は「体の重心」だったが…

道を歩いているときに違和感を覚えたことはありませんか? 初診の患者さんの中には、「舗装されている道路なのに、なぜか歩きにくく感じる」とおっしゃる方がしばしばおられます。

先日来院された初診の高齢の患者さんが、まさにそのパターンでした。体をチェックしていくと、なるほど重心が右側に傾き、体が歪んでしまっています。そこで足元から骨格の位置を矯正し、体幹のバランスを調整し重心を中心に戻しました。施術後「すごく歩きやすくなった」と喜んで帰られました。

1週間後、この患者さんが再び来院されました。歩いているときの違和感について聞いてみたところ、「施術後しばらくは調子が良かったが、4~5日経ったあたりから、また違和感が出てきた」とおっしゃいます。これは日常生活の中に何か悪い習慣が隠れていそうです。

重心がずれる元凶は「道路の構造」だった

原因を追究していくと、毎日同じ道を1時間くらいかけて散歩していることがわかりました。散歩の仕方について詳しく聞くと、ある決まった通りを歩き、ある地点で折り返して、その通りの反対側を歩いて家に帰るということでした。

これは、以前に来院された高齢の患者さんと同じパターンかもしれないと思いました。

近年は健康志向が高まり、高齢の方でも、体が衰えないように散歩をしている人が増えました。この患者さんのように、慣れた道を毎日歩くというパターンが多いように思います。

しかし、ここに落とし穴があるのです。

この患者さんが散歩しているコースは、たまたま私の出勤ルートと同じだったので、私もよく知っている道でした。

多くの道路は、舗装されていたとしてもフラットではありません。雨水が道路に溜まらないように道路の両脇が傾斜しています。この患者さんが歩いている道路も同様で、散歩の行きで歩いている道路は、体が右に傾くように傾斜しています。また、折り返して帰るときの反対側の道路も、体が右に傾くように傾斜しています。

この患者さんは右に傾斜した道を毎日歩くことによって、体重が右足の小指側に乗るようになってしまったのです。実際、履いている靴を見ると右足の外側部分が削れていました。

まだ若い方であれば、道路の傾斜に抵抗できる筋肉があって重心も崩れないかもしれませんが、高齢になって筋肉が弱くなってくると、道路の傾斜によって体のバランスが崩されてしまうこともあるのです。

散歩ルートの調整、筋トレで重心を改善

この患者さんにはまず削れていない靴に替えていただき、そのうえで散歩のコースを行きと帰りで反対にしていただきました。そうすることで右側に傾いていた重心を元に戻すようにしました。

さらに、傾斜がある道路でも重心が傾かないようにするために、足の親指までしっかりと踏み込んで歩けるように親指の力を鍛えていきました。

足の親指の力の鍛え方とは、座った状態で足の親指だけで壁を押すという方法です。これを毎日10回2セット繰り返すことで、足の親指まで踏みしめて歩けるようになり、重心が外側に崩れなくなりました。2週間もすると右側に崩れていた重心は元に戻り、歩行時の違和感はまったくなくなりました。

それからは、行きと帰りは同じ道を通るようにアドバイスしました。

「歩きスマホ」なども不調の一因

また、こういったケース以外にも、何気なく道を歩いていると不調に陥ることがあります。

これは道の構造上の問題ではなく、道を歩いているときの何気ない習慣が原因です。寒くなってくるとポケットに手を入れて歩いている人をよく見かけます。また、スマートフォンを見ながら道を歩いている人も多くいます。

このような人たちの何が問題なのでしょうか。

まず、歩行という動作は。上半身と下半身の連動(連携)が重要です。

右足を後ろに蹴っているときに、右腕まで後ろに振っていたら歩きにくく感じるでしょう。右足が後ろなら、反対側の左腕を後ろに振るという動きが、正常な上半身と下半身の連動です。

これには、筋肉のつながりが関係しています。体の前面も後面も、ともに上半身と下半身は対角線上で筋肉がつながっています。特に体の後面の対角線上の筋肉のつながりは、歩行するときに重要です。左肩の後面の筋肉は背中を経由して、右側のお尻から太ももの後面の筋肉につながっています。歩行の際は、この対角線上の筋肉のつながりを収縮させて一歩一歩進むのです。

つまり、左手でスマートフォンを握って見ながら歩くとすると、この対角線上の筋肉のつながりを機能させることができなくなり、正しい歩行ができなくなります。連動が崩れるため筋肉の可動性が悪くなって痛みが生じたり、左肩から背中の筋肉を収縮させることが少なくなるため猫背になったりなど、様々な不調を引き起こす原因となるのです。

「正しい歩行」のための一工夫

正常な歩行をするためには、できるだけ両手には荷物を持たないようにして、体の後面の対角線上の筋肉を意識して、腕と足を後ろに振って歩くことが大切です。そのためには、手提げかばんではなくリュックサックにする、歩きスマホをやめるなどが必要です。

どうしても片側でかばんを持たないといけないときは、いつも決まった側で持つのではなく、交互に持ち替えたり、日ごとに持つ手を替えたりすることをおすすめします。

歩いているときに体に違和感があり、歩きにくい、痛みが出るという方は、道路の傾斜に注意するとともに、足の親指までしっかりと踏み込み重心が外側に崩れないように意識して歩くようにしてください。

また、歩く際は体の後面の筋肉を使うように意識し、腕と足を後ろにしっかりと振って歩くようにしてください。

山田 真
山田 真(やまだ・まこと)
柔道整復師、はり師、きゅう師。まほろば鍼灸整骨院院長 美骨痩身サロンBELUNA代表。 1972年生まれ、神奈川県横浜市出身。明治大学商学部、明治東洋医学院専門学校柔整学科、森ノ宮医療学園専門学校鍼灸学科卒業。「幸せは健康の上に成り立つ」という信条の下、大学卒業後は健康関連事業で人の生活に貢献している明治乳業株式会社(現 株式会社明治)に入社。入社4年を経過した頃、自分の独自色を活かして人の健康に貢献できないかと考え、脱サラして柔道整復師の資格取得を目指す。7年間修業した後、2009年大阪府吹田市に、まほろば鍼灸整骨院を開院。開院後、施術回数は16万回を超えるが、足元から全身につなげていく施術をおこない、足指を正しく使えるように調整したところ、患者さんの様々な不調が劇的に改善。遠方からも評判を聞きつけて多数の患者さんが来院。現在、来院する患者さんは筋肉の痛みだけではなく、内臓の不調、アトピー、頭痛、耳鳴り、めまい、姿勢矯正、産後骨盤矯正、発達障害、慢性疲労、自律神経失調症など多岐にわたる。2021年4月に『「足指」の力 体の不調がスッと消える3分つま先立ち体操』を出版。 まほろば鍼灸整骨院Facebook