歯の神経を抜く根管治療のメリットとデメリット|抜くかどうかの判断基準とは?
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歯の神経を抜く歯科治療である「根管治療」にはメリットもあれば、デメリットもあります。そのため、その両方を理解した上で、医師と相談しながら治療方法を決めましょう。どのような場合に歯の神経を抜く必要があるのか、どのようなメリット・デメリットがあるのかについてまとめました。

目次

  1. 歯の神経を抜く「根管治療」とは?
    1. 歯の神経を抜く必要があるケース
    2. 抜髄と感染根管治療の違い
    3. 歯の神経を抜くか抜かないのか判断基準
  2. 歯の神経を抜くメリット
    1. 痛みを止め、菌の進行も防ぐ
    2. 自分の歯を残すことができる
    3. 歯並び・噛み合わせへの影響が小さい
    4. 顎の骨の吸収を防止する
  3. 歯の神経を抜くデメリット
    1. 歯の寿命が短くなる
    2. 歯の色が変わる
    3. 虫歯などのトラブルに気づきにくくなる
    4. 一定期間、痛みが残ることもある
  4. 20代・30代は可能な限り歯や神経を抜かない治療も重要
  5. 歯の神経を抜いたらアフターケアも重要|定期的にメンテナンスを行おう

歯の神経を抜く「根管治療」とは?

歯や口内でトラブルが起きた場合、状態によっては歯の神経(歯髄)を抜く必要があります。 このような歯の神経を抜く治療は「根管治療」のひとつで、炎症や感染が歯顎の骨に広がったり、再感染したりするのを防ぐために重要です。

歯の神経を抜く必要があるケース

歯の神経を抜く必要があるのは次のような場合です。

【歯の神経を抜く必要があるケース】

  • 重度の知覚過敏
  • 不可逆性歯髄炎

重度の知覚過敏 知覚過敏は虫歯などがないにも関わらず、刺激に対して敏感になり、しみや痛みを感じる症状です。

軽度なものなら市販されている知覚過敏用の歯磨き粉、歯科医院でのしみを防ぐ薬の塗布などで症状を抑えられます。

しかし、知覚過敏の状態によっては一時的にしみ、痛みを和らげるだけで、根本的な解決にならないケースもあるので注意してください。 その場合、「しみや痛みを感じる歯の神経を抜く」という治療方法が取られることもあります。

歯の神経を抜くのには後述するデメリットもあるので、ほかの方法での治療が困難なときの選択肢です。

不可逆性歯髄炎 歯髄とは歯の中心部にある神経で、そこに起きた炎症が「歯髄炎」です。 歯髄炎には「可逆性歯髄炎」と「不可逆性歯髄炎」の2種類があります。

可逆性歯髄炎に関しては神経を取り除かなくても治療によって回復する状態です。 一方、歯髄を取り除かないと治療できない状態は不可逆性歯髄炎であり、冷たいもの、甘いものなどの刺激がなくても痛みを感じます。

抜髄と感染根管治療の違い

神経の歯科治療は「抜髄」と「感染根管治療」の2つです。

どちらも歯の根っこの治療ですが、2つには違いがあります。

まず抜髄は神経が生きている歯への治療であって、神経の炎症などを抑えるのが難しいときに、神経を取り除くことでしみ、痛みを感じさせなくします。

そして、感染根管治療はすでに神経が死んでしまっている歯、または過去にすでに神経の治療を行っている歯に対して行う治療です。

例えば、抜髄をした歯が菌に再感染した場合、虫歯の放置や外傷で歯の神経がすでに死んでいる場合などは、感染根管治療が必要になります。

歯の神経を抜くか抜かないのか判断基準

虫歯や知覚過敏、歯髄炎などは、軽度であれば歯の神経を抜く必要がありません。 しかし、治療をせずに放置した結果、症状が悪化すると根管治療が必要になることもあります。

繰り返しになりますが、歯の神経を抜くのにはデメリットもあります。 そのため、できるだけ歯の神経を抜かない治療が検討されますが、治療が遅れるとすでに手遅れとなる可能性もあるので注意してください。

また、治療の方針を決定する上では、病気の進行度だけでなく、患者様の希望も重要です。 早めに歯科医院を受診して、医師と十分に相談しましょう。

歯の神経を抜くメリット

歯の神経を抜くのには次のようなメリットがあります。

【歯の神経を抜くメリット】 ・痛みを止め、菌の進行も防ぐ ・自分の歯を残すことができる(抜歯と比べて) ・歯並び、噛み合わせへの影響が小さい(抜歯と比べて) ・顎の骨との吸収を防止する

痛みを止め、菌の進行も防ぐ

しみや痛みを感じる場合、歯の神経を抜くことでそれらを止めることができます。

また、歯の神経が残っていると、菌はそこを通って進行していきます。 そのため、菌の進行を防ぐというのも、歯の神経を抜くメリットのひとつです。

自分の歯を残すことができる

虫歯などの進行度によっては、「抜歯」が選択されることもあります。 この場合、歯そのものを抜くことで病気の進行を止めたり、口内トラブルを解決したりするわけですが、自分の歯は残せません。

一方、抜くのが歯の神経だけであれば、自分の歯を残すことが可能です。

歯並び・噛み合わせへの影響が小さい

治療前の歯並びや噛み合わせに問題がなかった場合、抜歯をすることで治療した箇所の周りの歯の位置が変わるケースもあります。

しかし、抜髄であれば歯がそのまま残るため、歯並びや噛み合わせへの影響を抑えることができます。

顎の骨の吸収を防止する

抜歯を行った場合、歯が生えていた箇所の骨は「歯を支える」という役目を終えたと勘違いして、徐々に溶け出します。これは骨の「吸収」という現象です。

抜歯をしたことで顎の骨が吸収されるのを防ぐためにも、抜歯ではなく、抜髄で対応するメリットがあります。

歯の神経を抜くデメリット

一方、歯の神経を抜くのには次のようなデメリットも存在します。

【歯の神経を抜くデメリット】 ・歯の寿命が短くなる ・歯の色が変わる ・虫歯などのトラブルに気づきにくくなる ・一定期間、痛みが残ることもある

歯の寿命が短くなる

歯の神経を抜くと、歯の寿命は短くなります。

これは歯の神経を抜くと歯の中心をくりぬく形になるからです。また、神経と一緒に歯の内部の血管も失われて、血液の供給がなくなります。

結果として、歯そのものが脆くなって折れやすくなります。歯の根っこが折れてしまうと、基本的には抜歯しなければなりません。

自分の歯を長く残したいのであれば、抜髄が必要な状況になる前に対処しましょう。

歯の色が変わる

歯の神経を抜くと、その歯の色は徐々に黒っぽく変色していきます。 本来は代謝の働きによって、黒ずみの原因となる物質は蓄積されません。

しかし、歯の神経を抜くと代謝されなくなるので、時間の経過とともに黒ずんでいきます。

この場合、歯の外側をホワイトニングしても効果がなく、歯の内側に直接ホワイトニング剤を入れる、もしくは白い被せ物をするなどの治療が必要です。

虫歯などのトラブルに気づきにくくなる

神経によって痛みやしみを感じるので、その神経を取り除いてしまうと虫歯などのトラブルに気づきにくくなります。神経には体の異常を伝えるセンサーの役割もあるのです。

再び治療が必要になるケースもあるので、歯の神経を抜いた後は、今まで以上に注意しましょう。 新たな口内トラブルを起こさないためには、定期的に歯科医院で診てもらうことも重要です。

一定期間、痛みが残ることもある

歯の神経を抜いても、一定期間は痛みが残ることもあります。 抜髄では一度の治療で完全に症状を取り除けないことも多いです。また、感染根管治療でも難治性といって症状が残るものがあります。

通常、根管治療は何回かかかりますが、このようなケースではさらに治療回数がかかります。

20代・30代は可能な限り歯や神経を抜かない治療も重要

歯の状態によっては抜歯や抜髄による治療が有効ですが、20代・30代など若者世代の方がデメリットは大きくなります。

歯の治療技術は進化しているものの、人工の歯には寿命があります。 そのため、若い人は長期間、定期的にメンテナンスを受けながら人工歯と付き合わなければいけません。

また、抜髄も同様です。 歯の神経を抜けば、その歯の寿命は短くなり、健康な歯に比べて口内トラブルも起きやすくなります。

どうしても抜歯・抜髄が必要なケースもありますが、長く健康的な歯を守るためには、できるだけ歯と神経を残したまま治療することがポイントです。

歯の神経を抜いたらアフターケアも重要|定期的にメンテナンスを行おう

虫歯や知覚過敏、歯髄炎などが進行した場合、歯の神経を抜いてしみや痛みを抑えることがあります。

神経を抜くのには病気の進行を防ぐなどのメリットもありますが、その多くは抜歯と比較した際のメリットです。

歯の神経を抜かずに治療できるのであれば、それに越したことはありません。 症状が進行してしまうと抜髄や抜歯が必要になるため、症状を感じたら早めに歯科医院を受診するようにしてください。

また、歯の神経を抜いた後は口内のトラブルが起きやすくなります。 定期的に口内の状態をチェックしてもらうなど、アフターケアをしっかりと行いましょう。

重永基樹
重永基樹
1999年愛知学院大学歯学部卒
2002年哲学堂デンタルクリニック開院
歯科医院運営の他、老人ホームやデイサービス、訪問看護等の介護事業、歯科医師向けコンサルティング業、人材派遣会社の運営などを行う。

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