
一本だけ指が腫れるのはなぜなのでしょうか。指が腫れるというのは日常でよく起こることですが、一本だけ指が腫れるというのはなかなかないことです。一本だけ指が腫れる症状は、痛みやかゆみがあるかないかによって、考えられる原因に違いがあります。そこでここでは、考えられる原因についてピックアップし、それぞれを解説していきます。
目次
一本だけ指が腫れるときに考えられる原因
ふと手先を見た時、一本だけ指が腫れていると驚くものです。なぜ、数本の指ではなく一本だけ指が腫れるのか、なにか特別な病気の前兆なのではないかと不安になる人もいるでしょう。 一本だけ指が腫れるだけでなく、痛みやかゆみなど他の症状を伴うことも多く、適切な治療のためには、まずは原因を突き止めることが大切です。 さっそく、一本だけ指が腫れるときに考えられる原因について解説します。
突然痛みを感じた場合は「アッヘンバッハ症候群」の可能性
一本だけ指が腫れる症状に加え、突然の痛みを感じた場合は、アッヘンバッハ症候群である可能性があります。
アッヘンバッハ症候群とは、ある日突然、手の指、手のひら、足の指、足の裏などに皮下出血を起こす病気です。手の指では特に人差し指と中指にできやすく、ズキッとした痛みからはじまり、指の一部が紫色に変色して腫れます。しびれやつっぱるような感じを伴うこともあり、これらの症状は数日から数週間続きます。
アッヘンバッハ症候群は、特に高齢者に発症しやすいことが特徴ですが、未だはっきりとした原因がわかっていません。時間が経てば自然と元に戻りますが、よく繰り返します。 目立った傷がなく、血液検査を行っても特に異常が現れないために、「知らない間にどこかでぶつけたのかな」と、単なる打撲と勘違いする人も少なくありません。
ぶつけたあと腫れる場合は「打撲・骨折」の可能性
指を強くぶつけたあとに腫れる場合には、打撲や骨折の可能性があります。打撲や骨折の場合、指の腫れの他に痛みが起こり、ほとんどの場合、かゆみはありません。
打撲は、強くぶつけた部分に炎症や内出血が起こっている状態です。皮下組織に水や血液成分などが起こると紫色になって痛みます。太ももやお尻などの脂肪が多く柔らかい部分では内出血によって変色する程度ですが、指は脂肪が少なくすぐ下に骨があるため、水や血液成分などの成分が皮下に溜まって隆起しやすく、指がぷっくりと膨らみます。 症状をおさえるためには、腫れている部分を心臓より高い位置に上げ、冷たいタオルや保冷剤などで患部をしっかり冷やして軽く圧迫することが効果的です。
骨折の場合、多くは、強くぶつけてから数時間後に腫れてきます。急激に腫れてくる場合は、折れた骨が周辺の血管や組織を傷つけていることがあります。 骨折は、迅速な応急処置が大切です。指を動かさないようにし、骨折した部分に包帯などで副木を固定して、速やかに病院を受診しましょう。
かゆい場合は「しもやけ」の可能性
しもやけは、血行が悪くなることで起こります。主な症状は、手指や足指などの腫れ、かゆみで、ひどくなると水疱ができることもあります。
しもやけの場合、指の腫れた部分の色は赤みを帯びていることが多いですが、血行の悪さから紫がかっていたり黒ずんで見えることもあります。肌がヒリヒリするような痛みが特徴で、患部が温まったときや入浴など、血行が良くなるとかゆみが増します。
しもやけでは、指の関節が腫れ、曲げ伸ばしがしづらいほどになることもあります。ただ、指の関節の腫れが左右対称であれば、しもやけではなく、関節リウマチの症状かもしれません。両手の指の同じ箇所が腫れているなら、一度病院で検査を受けましょう。
かゆみや発疹をともなう場合は「アレルギー」の可能性
アレルギー症状が起こると、指が腫れるだけでなく、かゆみや発疹が伴うことがほとんどです。一本だけ指が腫れ、かつ、かゆいとかブツブツとした斑点、発疹が現れたというなら、アレルギー症状を疑いましょう。 アレルギー症状は、草木や生物、化粧品、食品などで起こりやすいため、アレルギー体質の人は不慣れなものに不用意に触らないようにすることが大切です。
アレルギー体質ではない人でも、刺激の強いものに触れれば、「刺激性接触皮膚」炎という炎症を起こします。刺激の強いものの例としては、酸やアルカリ、洗剤、石鹸などが挙げられます。赤ちゃんや幼い子ども、敏感肌であるなど、肌がデリケートな人は特に注意が必要です。
関節の節々が腫れる場合は「乾癬性関節炎」の可能性
乾癬性関節炎とは、乾癬という皮膚疾患に合併する関節炎です。 乾癬性関節炎は、乾癬を発症した患者さんのおよそ1割強にみられるといわれ、関節の痛みや腫れなどが主な症状です。指の症状としては、指の関節の節々の腫れ、指全体の腫れ、指の先端の関節痛などがあります。爪にも症状が現れることがあり、爪がもろくなったり、小さな凹凸ができたりと、普通とは違う様子を呈します。 この病気では他に、足、膝、腰などの関節痛、アキレス腱の痛み、歩いたときの足裏の痛みなどがあり、発疹や肌の乾燥、皮むけなどもみられます。
乾癬性関節炎の原因は、はっきりと分かっていません。30代から50代に好発し、男女差はほとんどないといわれています。
爪付近が腫れる場合は「爪周囲炎」の可能性
指の腫れが特に爪の周辺にみられるなら、爪周囲炎の可能性があります。 爪周囲炎は、細菌感染によって指先端や爪の周囲に化膿性の炎症が起こるもので、深爪、爪周辺の傷などがきっかけとなります。炎症は、爪の横、爪の根元などに起こりやすく、爪の中に起こるとズキズキとした痛みを伴うつらい症状を呈します。 指の腫れは、ひどいものだと膨らんだように形が変わり、膿が溜まってひどく痛むこともあります。
治療は、初期の場合、抗生物質によって炎症を止め、冷湿布などで冷やします。膿が溜まっているものは切開して膿を出し、爪の一部を除去することもあります。 重症のものはセルフケアでは治すことができないので、整形外科や皮膚科などにかかって治療してもらうことをおすすめします。
足の指が一本だけ腫れるときに考えられる原因5
足の指が一本だけ腫れる場合には、どのような原因が考えられるのでしょうか。
足の指が曲がっている場合は「外反母趾」の可能性
足の指の腫れに加えて足の指が曲がっている場合は、外反母趾の可能性があります。 外反母趾とは、窮屈な靴を履くなど足の指に大きな力が長期的にかかることにより、親指が小指側に向かって曲がり、変形してしまう病気です。 外反母趾は、関節リウマチの合併症である場合もあります。
足の親指の付け根が腫れる場合は「痛風性関節炎」の可能性
痛風性関節炎とは、血中の尿酸の濃度が高くなってできた結晶により関節中で炎症が起こる病気です。炎症によって関節が壊されるために、足に痛みが生じます。 この炎症は、足の親指や付け根に起こることが多く、部分的に腫れを伴います。
原因解明のためにも受診がおすすめ!受診は何科?
一本だけ指が腫れる場合、何が原因かわからないまま放置しておくと、あとから大ごとになることがあります。そのためにも、できるだけ早く診察を受けましょう。 指の腫れで受診するなら、整形外科か形成外科が適当です。皮膚のただれなど皮膚症状がつらい場合は、皮膚科を受診することもいいでしょう。 検査結果によっては、受診した科と違う専門科を紹介されることがありますが、最適な科で治療を受けることができます。
まとめ
手の指や足の指など、一本だけ指が腫れている場合、時間をおいてすぐに良くなるのならいいのですが、症状が長引いたりひどくなったりするようなら、医療機関を受診することをおすすめします。 中には「大したことない」と放っておくと、あとから大きな病気につながるものもあるので、念のために早めに病院にかかりましょう。

2005年 慶應義塾大学病院 初期研修
2006年 日本鋼管病院初期研修
2007年 慶應義塾大学病院消化器内科
2011年 恩賜財団済生会宇都宮病院勤務
2012年 慶應義塾大学大学院医学研究科博士号取得
2013年 テキサス大学サウスウエスタンメディカルセンター博士後研究員
2016年 国際医療福祉大学三田病院消化器センター講師
2019年 長峰整形外科・胃腸内科 副院長
2020年 宮田胃腸内科皮膚科クリニック
国際医療福祉大学三田病院消化器センター非常勤講師
JCHO山手メディカルセンター消化器内科非常勤
一般社団法人日の出医療福祉グループ顧問
台湾台北医学大学卒業、慶應義塾大学医学博士
元アメリカテキサス州サウスウエスタンメディカルセンター研究員
●宮田胃腸内科皮膚科クリニックHP ●イシャチョククリニックページ