腰痛 誤解 吉原先生
(画像はイメージです/PIXTA)

「腰痛」は日常生活において身近な症状です。しかし、身近な症状だからこそ世間には「都市伝説」のような誤った情報が溢れていると、アレックス脊椎クリニック院長の吉原潔氏はいいます。腰が悪い人は重いものを持ってはいけない、天気が悪いと腰痛が悪化しやすい、などの説は本当なのでしょうか、みていきましょう。

目次

  1. ときには医師も間違える…正しい「腰痛」の対処法
  2. 誤解1.腰が悪い人は重いものを持ってはいけない
  3. 誤解2.腰が悪い人は体をそらしたり、ひねってはいけない
  4. 誤解3.急に腰が痛くなったらまず冷やす
  5. 誤解4.腰が痛い人は痛みが取れるまで安静に
  6. 誤解5.天気が悪いと腰痛が悪化しやすい
  7. 誤解6.腰痛でコルセットをつけると筋肉が弱る

ときには医師も間違える…正しい「腰痛」の対処法

ミドル・シニア世代のみならず、デスクワークなどで若い世代にも身近な体の不調である「腰痛」。インターネットの普及もあり、世間には「腰痛」に関するさまざまな説が存在します。

しかし、世間では「当たり前」とされていても、医師の視点から見た場合「間違い」である情報があります。また、ときには医師も誤って指導している場合があるため、以下では腰痛に関する「6つの誤解」を検証、解明していきます。

誤解1.腰が悪い人は重いものを持ってはいけない

腰痛患者さんに「重いものは持たないほうがいいですよね?」とよく聞かれます。それに対して医師も「無理して重いものを持たないほうがいいですね」と指導することが多いかと思います。

患者さんはそれを「やっぱり腰が痛いうちは重いものを持ってはいけないのだ」と少し誤って納得してしまうのです。実は「持ってはいけない」のではなく、「無理をしてはいけない」だけなのです。

実際に、重いものとは何㎏以上と具体的な数値などあるはずもなく、人によって異なります。

もしも重いものを持つことに不安があるなら、軽いものから始めて、徐々に重量を増して慣らしていけばよいと思います。

重いものを持たない・持てないと逃げるのでなく、持てるような体を徐々に作っていただきたいものです。また、なるべく体に密着させて持ち上げると、重心の移動がないので、同じ重さでも軽く感じられます。

誤解2.腰が悪い人は体をそらしたり、ひねってはいけない

これも多くの方が誤解しています。トイレで用をたしてお尻を拭くときには、体をそらしたり、ひねったりしませんか。自転車に乗る時にも、少しはひねらないと乗れませんね。

したがって厳密な意味では、多少は腰をそらしたり、ひねったりしない限り、日常生活はできないのです。

そうなると、「重いもの」の場合とまったく同じで、徐々に慣らして行き、そらしたり、ひねったりが無理なくできるようにするべきだと思います。

「そらしたり、ひねってはいけない」と指導する医師もいますが、あくまでも「無理せず行う」「適度に行う」ということが大切で、「〜しない」というのは誤りです。

誤解3.急に腰が痛くなったらまず冷やす

急に腰が痛くなることをぎっくり腰といいますが、ぎっくり腰の原因はさまざまです。にもかかわらず、筋肉の微細な損傷・断裂などとの「思い込み」が強く、急性期には冷やすと記載されている書物やインターネットサイトが後をたちません。

腹痛のときにお腹を冷やして対応することがないように、同じ胴体である腰や背中も、冷やして対応する必要はありません。

よっぽど強くぶつけて腰が腫れているなら別ですが、ぎっくり腰は必ずしも外傷とは限らないのです。したがって、あわてて冷やす必要はありませんし、もちろん、温める必要もありません。

温めるや冷やすに関連して、湿布について触れておきます。多くの人は「冷湿布は冷やす、温湿布は温める」と誤解しています。

実際は、湿布に含まれる成分によって皮膚が刺激されて、冷たい感じや温かい感じがするだけで、際立った温度変化はありません。使い捨てカイロを触れば温かいですが、温湿布の上に手を当てても温かく感じることはないのです。

実は、冷湿布や温湿布というのは30年以上昔の分類で、現在の湿布は痛み止め(NSAIDs)を含んだものが主流です。

誤解4.腰が痛い人は痛みが取れるまで安静に

「急性腰痛に関しては、安静よりも活動性維持のほうが有用である」と腰痛診療ガイドライン(医者向けの専門書)に書いてあります。

いきなり起こった腰痛(急性腰痛症・ギックリ腰)で、痛みのため動きがとれずに、当日、もしくは翌日くらいまで安静にせざるを得ない状況はやむを得ません。

しかし、いつまでも安静にして休んでいないで、可能なかぎり普段の生活に近付けていくという営みは、とても大切です。

一方で、歯を食いしばって痛みに耐えながら普段と同じように生活して、かえって痛みが増してしまうのもよくありません。あくまでも、「じっと安静にしているよりは、少しずつ動いてください」ということであって、決して無理を強要するものでないことにご注意ください。

3ヵ月以上腰痛が続いている慢性患者さんでは、むしろ腰痛は動かして治すと考えなくてはいけません。これもガイドラインに強く推奨すると明記されています。

すなわち長引く腰痛患者さんでは、安静にしてよくなるのを待っていてもダメで、徐々に動かしていかないと筋肉が弱っていくだけなのです。

誤解5.天気が悪いと腰痛が悪化しやすい

腰痛に限らず、昔から天候と痛みには相関関係があるといわれています。自分の痛み具合で、天気予報が可能という人もいます。

しかし、温度、湿度、気圧など様々な観点から研究がなされましたが、これを統計学的に証明した研究報告はいまのところありません。

誰でも、天気がよければ気分も晴々するけれども、天気が悪いと気持ちがダウンすることが多いのではないでしょうか。通り雨の瞬間だけ痛くなり、雨が止むと痛みが取れることもないように思います。

ただ、逆の立場から、天候と腰痛は関係ないと証明した研究もありません。もしも、気持ちの切り替えで痛みが変わるなら、気持ちはいつも前向きに持っていたいものですね。

誤解6.腰痛でコルセットをつけると筋肉が弱る

腰痛でつらいときにコルセットをつけると、多くの場合、動きが楽になります。痛みに応じて日常生活を送るために、痛みの強い時期にはコルセットを装着するのがよい方法だと思います。

しかし、コルセットをつけると筋肉が弱るので、つけたくないという人が後を絶ちません。コルセットで痛みが軽減するならば迷わず使いましょう!

コルセットの有無にかかわらず、姿勢を保つために腹筋や背筋は絶えず働いているのです。したがってコルセットをつけたからといって、大きく筋肉が弱ることはありません。

実際、コルセットをつけても、前屈や後屈はもとより、体をひねることも可能ですよね。「痛いのに筋肉が弱るからといってコルセットをしない」よりも「コルセットをしないせいで痛くて体を動かせない」ほうがよっぽど筋肉が弱ります。

ましてギックリ腰のような急性の腰痛で、短期間のコルセット着用ならば、筋力が弱ることはまずないでしょう。

長期間(主に3ヵ月以上)のコルセット着用は、確かに問題があります。それはコルセットをつけていることが問題なのではなく、3ヵ月もの長い期間にコルセットを外せるように腹筋や背筋を鍛えてこなかったことに問題があるのです。

腰痛の人は症状が軽減したら、腹筋や背筋を鍛える必要があることを忘れないでください。

吉原 潔
吉原 潔(よしはら・きよし)
日本医科大学卒業、医学博士。
大学病院にてスポーツ医学、人工関節、脊椎内視鏡手術など多岐にわたり研鑽し、帝京大学溝口病院で整形外科講師として教鞭をとる。
スノーボードFISワールドカップ医事主任を歴任、三軒茶屋第一病院整形外科部長を経て、現在はアレックス脊椎クリニック院長。
医師でありながらフィットネストレーナーの資格も持ち、自らの筋トレ・ウエイトコントロールの体験を元に、患者のリハビリ指導やボディメーキングのアドバイスも行っている。

日本整形外科学会専門医、
日整会内視鏡下手術技術認定医、
日本内視鏡外科学会技術認定医、
日本脊椎脊髄病学会指導医、
脊椎脊髄外科専門医、
日本スポーツ協会公認スポーツドクター、
全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会公認パーソナルフィットネストレーナー(NESTA)、
食生活アドバイザー
●アレックス脊椎クリニックHP