最終更新日:2021年12月2日
あなたの「信頼残高」を増やす、今すぐできる大切なこと

こちらの記事の監修医師
大澤 弘子

いざという時に頼れる人が何人いますか?大事な時に力を貸してくれる人がゼロというような生き方は寂しいもの。人とのつながり、絆(きずな)は、働く上でのとても大きな要素です。日テレHR代表の大澤弘子さんによる今回の記事は「信頼残高」がテーマです。
目次
あなたのことを手伝ってくれそうな人は何人いますか?
先日、昔の友人から「起業した」と連絡がありました。彼は45歳ですが、ほんの3ヶ月前まで大手企業の管理職でした。まったく起業するなんて考えていなかったと言います。ある日、ちょっと興味半分で自分の市場価値を知りたくなって、転職サイトに登録をしたのだそうです。
ある転職サイトのエージェントから「詳しく話を聞きたい」と思える情報提供があり、エージェントに会ってみたそうです。そこで、自分のキャリアについてどう考えているかを聞かれるがままに話しているうちに、そのエージェントから「それならば事業を始めてみられたらどうですか」と意外な一言をもらったと言います。そしてそれが、妙に心に響いたと。
後日、そのエージェントから紹介された事業家に会ってみたところ、その人と非常に息があったそうで、なんとそこから起業までたったの2ヶ月。人生、わからないものですね。転職ですら考えていなかったのに。人とのつながりが人生に大きく関わることは確かに珍しくないことなのかも知れません。
さて、起業したばかりの彼のその後です。サラリーマンしか経験がなかったので、一つひとつが初めてのチャレンジ。こんなにも自分は何も知らずに社会人をしてきたのかと、落ち込むところを通り越して笑ってしまうほどだったと言います。
そして、一人で初めてのことに挑戦したことで、普段から自分がいかに多くの人から支援をもらっているかということを実感したのだと話してくれました。そして、何人、応援してくれる人がいるかが、お金で買えない自分の本当の価値だと痛感するとも言っていました。
皆さんは、支援を求められる人が何人いますか?受け入れて一肌脱いでくれる人がそのうち何人いますか?
いざという時に力を貸してくれる人がゼロというような生き方は寂しいと感じます。力を貸してくれる人を得たいが「ため」に行動するのはどうかと思いますが、人と人との関係、つながり、絆(きずな)のようなものは、生きる上でとても大きなファクターとなります。今回は「信頼残高」についてお伝えしたいと思います。
信頼残高とは?
「信頼残高」とか「信頼貯金」といった言葉を耳にされたことはありますか?どちらも、周囲の人から、自分が信頼されているかどうか。その目に見えない「貯金」のような信頼がどのくらい貯まっているか、という概念です。「信頼」の量を決めるのは、言うまでもなくありませんが普段の自分の言動です。
「信頼残高」は、銀行が融資審査をするときのような「信用」とは異なります。「信用」は実質的な担保を求めます。担保に信頼性があるから「信用」しますという発想。担保は客観的な事実である必要があり、誰が見ても一定以上の価値を「事実」として認識できるものです。つまり、担保となる資産を持っているとか預金が多いとか、定量的なエビデンスですね。
でも「信頼」は異なります。人として「信頼できる」と思われているかどうか、「信じて頼る」に値する過去の言動があるかどうか、その人を信頼している人がどのくらいいるかどうかなど定量的なエビデンスでは示しにくいものです。
「信頼残高」が高い人は低い人に比べて、
- 人からの協力を得やすい
- 人に紹介してもらいやすい
- 人の役に立てる可能性が高い
と評価されます。ビジネスで関わるには信用できる相手であることは大前提ですが、「信頼」がないと双方が成長できるような広がりは生み出せません。
せっかく1度きりの人生、尊敬できる人や自分にできない思考や行動ができる人から多様な刺激を受けながら自分らしい人生を築きたいと思うなら「信頼残高」は重要なカギとなります。
信頼残高の高い人がやっていること
「信頼残高」が高い人に質問したことがあります。人とのつながりに関して、普段、行動指針にしていることはありますか?
ただ名刺交換をしたような人は「人脈」ではないですよね。本当に大切にし合える人とのつながりを構築するために、どんなことを意識していますか?その人に教えてもらったことは、誰でも自分の気持ち一つで「今すぐできること」ばかりでした。それらをまとめてみます。
(1)新規より既存を振り返る
新しい人脈がキラキラした未来を運んでくると思うのは幻想です。これまでの人脈を振りかえって自分が過去にお世話になった人や大切な人としっかりつながっていますか?
家族や親友にはじまり、これまで生きてきた中で助けてもらった人、支えてくれた人、一緒に頑張った経験がある人などが「既存」の人脈です。信頼残高が高い人は、いつも「自分はその人たちに恩返しできているかな」と考えると話してくれました。
(2)ゆるいつながりの人と、ちゃんとつながり続ける
SNSも一般的になり、ビジネス上でも活用されている方も多くなりました。これによって、対面のみだった時代に比して「ゆるいつながり」の人間関係というのが増えました。そこまで深く関わってはいないけど、緩やかにつながっている人というのが、皆さんの周りにもいらっしゃるのではないでしょうか。
全く新しい人脈をどんどん広げていくよりも、時折ゆるいつながりの人に声をかけてみる、お変わりありませんか?と心を寄せてみる、そんな発信を自分からすることを習慣にしていると言っていました。
(3)やってもらうより、やれることを考える
「いざ」というときに力を貸してくれる人が何人いるかを数える前に、自分が、相手の「いざ」のときに役に立てると自信を持って言える人が何人いますか?自分が「この人のためになら一肌脱ごう!」と思える人が何人いるかということです。一人ずつ名前を書き出していったとき、連絡リストも何も見ずに、何人書けるでしょうか。
そこで出てくる人が、きっと自分が困った時、本気で依頼した時、力を貸してくれる人の数の最大値であると言います。
(4)自分ができることをはっきりさせて発信する
自分が苦労なくできることや、ちょっと詳しく知っていること、得意かもしれないなと感じること、夢中になってできることを、周囲の人に、「わかりやすく」伝えておくことを大切にしていると教えてもらいました。
- 安くて美味しいお店なら聞いてね
- 見やすいレイアウトに資料を整えるときは手伝うよ
- XX部の●●さんへの交渉ならわたしがやるよ
- その手のプロジェクトならマネジメントしたことがあるよ
直接業務に関わることから、そうでもないことまで、わかりやすい言語化をして発信をしておくと、ふと困った時に人から思い出してもらえるのだと言います。その時に、力になれると自分も嬉しいし相手も助かる。そこに信頼貯金も増えるのです。「ヘルプ」の声がかかるためには、どんな時にどこに連絡すれば良いかをわかりやすく伝えておく必要があるのは、確かに納得ですね。
(5)普段から人を信じて頼る
これはちょっと意外でした。普段から、得意な人に、力を借りる機会を自らつくるようにしていると言うのです。ただしポイントは、些事(些細なこと・小さなお願い)から始めること。
- ちょっと教えて欲しい
- ちょっと聞かせて欲しい
- こういうことに詳しい人を誰か知らない?
いきなり相手に負担をかける「大事」をお願いするのではなく、ちょっとした「些事」から始める。これによって、互いの関係に電気を通しておくのだと言います。
確かに、長いこと使っていないケーブルは錆び付いて、急に必要になったからといって高電圧の負荷をかけたら、間違いなく焼け焦げたり、下手すると火災になったりしますよね。人間関係も同じだということです。
これは、「ゆるいつながりとつながり続ける」ことに近いですね。相手を信じて頼ると、実は相手にも自分にも良いことが起きる。
あなたから頼られた相手は、面倒だなと思うか、よくぞ頼ってくれたと思うか、どちらが多いと思いますか?信頼貯金が貯まっていれば、あなたから「信頼された」ことをポジティブに感じることの方が圧倒的に多いのだと言います。困ったときに自分を思い出してくれた。助けになる「できる」人だと信頼して相談してくれたことに好感を持つのだそうです。人は基本的に「善」を行い人から感謝されることに欲求充足を感じる本能があるためです。
ちなみにこの時点で「面倒がる」人とは、それ以降はお付き合いしなくてもいいかもしれません。きっとあなたの役に立とうという気持ちがない人でしょう。
そして自分の方はどうでしょう。お願いをした方の自分は、助けてもらったら直接的に助かります。加えて、一肌脱いでくれた相手に対してどこかで「お返し」をしたいと思う気持ちを自然に持てるようになります。返報性の法則ですね。相手の役に立てることを探しながら、何かあったら「やろう」とするモチベーションを保照のです。これが、人との関わり方にポジティブな変化、信頼残高をあげられる生き方をもたらします。
どれかピンとくるものがあったら、早速明日から意識して、できる範囲でやってみてください。思った以上に、人との関係、つながり、広がり方に変化を作り出せるかもしれませんよ。

日本テレビでプロデューサー歴25年。各界の著名人を取材し、誰しも「自分の軸」に気づいて殻を破る転換点があると知って感動。史上初のNHKとの共同制作実現、タレントと視聴者が「ワーキングマザー」として交流するサークルなど、TV番組の枠を越えた取り組みを推進。2016年、慶應義塾大学大学院SDM研究室・前野隆司教授に学び「最大の成果を出すチームに共通する力」を導く。2019年「日テレHR」スタート。上場企業の人材育成に従事。2020年には全国170,000人の人事パーソンが選ぶ「HRアワード」受賞。サラリーマンこそ「キャリアビルディング」意識が必要と考え、人材育成コンサル・研修・個別コーチングも多数。

こちらの記事の監修医師
大澤 弘子
国家資格キャリアコンサルタント 日本青少年育成協会認定教育コーチ(中級)
日本テレビでプロデューサー歴25年。各界の著名人を取材し、誰しも「自分の軸」に気づいて殻を破る転換点があると知って感動。史上初のNHKとの共同制作実現、タレントと視聴者が「ワーキングマザー」として交流するサークルなど、TV番組の枠を越えた取り組みを推進。2016年、慶應義塾大学大学院SDM研究室・前野隆司教授に学び「最大の成果を出すチームに共通する力」を導く。2019年「日テレHR」スタート。上場企業の人材育成に従事。2020年には全国170,000人の人事パーソンが選ぶ「HRアワード」受賞。サラリーマンこそ「キャリアビルディング」意識が必要と考え、人材育成コンサル・研修・個別コーチングも多数。