最終更新日:2022年2月11日
オミクロン株対策としての「鼻うがい」のススメ

こちらの記事の監修医師
堀田修クリニック
堀田 修
~オミクロン猛威の中でまだできることがある:「鼻うがい」はゲームチェンジャーになれるか?

感染リスクの低い屋外でもほとんどの国民がマスクをつけ、ワクチン接種率が8割を超えているにもかかわらずオミクロン株の猛威は止まりません。そして、世界に目を向けるとワクチンの4回目接種が進行中のイスラエルでオミクロン感染者数が急増しています。ワクチンを含めたこれまでのコロナ対策の限界が世界中で露呈していますが、私たちにはまだカードが残されています。それが「鼻うがい」です。
これまでの変異株と何が違う?オミクロン株の特徴
新型コロナウイルスは空気を介した侵入が主な感染経路ですが、オミクロン株はデルタ株までの新型コロナウイルスと異なり、肺炎を生じがたいという特徴があります。つまり、ウイルスが感染し、増殖する部位が鼻とのどにとどまっていることを意味します。
のど痛はオミクロン感染患者で高頻度に認められますが「のど(中咽頭)が赤くないのにのどが痛い」のが特徴です。その理由は口を開けたときに見える中咽頭ではなく、口蓋垂の裏で鼻の奥に位置する上咽頭に炎症が生じているためです。

上咽頭に炎症が起こるとその関連痛として頭痛や首肩こりが生じ、倦怠感や発熱をしばしば伴います。これらの症状は急性上咽頭炎によるもので、オミクロン株に特徴的なものではなく、従来から「のど風邪」として知られる季節性コロナウイルス感染による急性上咽頭炎でも同様に認められます。
「鼻うがい」のメカニズム
食塩濃度0.9%の生理食塩水で鼻腔と上咽頭を洗うのが一般的な「鼻うがい」です。水だけで洗うと鼻がツンとしますが適量の食塩を加えることで“痛くない鼻うがい”ができます。
鼻うがいには①ウイルス、細菌、ホコリ、花粉などを洗い流す作用、②鼻腔・上咽頭粘膜の繊毛の働きを改善する作用、③粘膜のむくみを改善する作用、④細胞に感染したウイルスの増殖を抑制する作用があります。③④の作用は塩分濃度が高い高張食塩水で認められます。

鼻うがいの効果:「新型コロナウイルス感染」に対する研究結果
遺伝子ワクチン開始前の米国でアルファ株が流行していた時期に、米国オーガスタ大学がCOVID-19に対する鼻うがい効果を検証しました。COVID-19新規陽性者を対象に1日2回2週間、鼻うがいを実施させた結果、入院・死亡率が 1/8 になったという研究結果が発表されました(CDC=アメリカ疾病管理センター COVID-19 症例監視データと比較 ※1)。
※1 https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.08.16.21262044v2
オミクロン株での鼻うがい効果を検証した臨床研究は今のところありませんが、もともと重症化率の低いオミクロン感染では、発症早期に鼻うがいを開始することでさらに重症化率を低減できることが期待できるでしょう。
鼻うがいの効果:「季節性コロナウイルス感染」に対する研究結果
2019年に英国エジンバラ大学が季節性コロナウイルスを含むウイルス性上気道炎患者61例を鼻うがい群31例、非鼻うがい群30例に無作為に分け、高張食塩水を用いた鼻うがいの効果を詳細に検討しました。その結果、罹病期間が22%短縮、家庭内感染が33%減少することが示されました(※2)。
※2 https://www.nature.com/articles/s41598-018-37703-3
さらに同研究者らは2020年、COVID-19パンデミックが始まったことで季節性コロナ15例(鼻うがい群7例、非鼻うがい群8例)を抽出して再度解析し、鼻うがいが季節性コロナウイルスによる急性上気道炎の軽症化をもたらすことを示しました。その結果をもとにCOVID-19において治療として鼻うがいを行うことを提言しています(※3)。
※3 https://jogh.org/documents/issue202001/jogh-10-010332.pdf
オミクロン株の症状は季節性コロナウイルスの症状とまったく区別がつかないほど類似しています。それゆえ季節性コロナウイルスと同程度の鼻うがい効果がオミクロン株にも期待できると思われます。
オミクロン時代における鼻うがいの「可能性」
ワクチン接種と以前の感染、つまり自然免疫に関する大規模な研究が、ニューヨーク州とカリフォルニア州のデータに基づいてCDCによって2022年1月に発表されました。COVID-19感染の既往のある人はワクチン接種の有無にかかわらず入院率が極めて低く、ワクチン未接種でCOVID-19感染の既往があるデルタ株感染者の入院率がCOVID-19感染の既往のないワクチン接種を受けた、いわゆるブレイクスルーのデルタ株感染者よりも低かったことが示されています(※4)。
※4 https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/71/wr/pdfs/mm7104e1-H.pdf
これは免疫学的には当然のことですがCOVID-19感染で得られた自然免疫がワクチンで獲得した免疫を凌ぐことをあらわしています。見方を変えると、感染しても無症状あるいは軽症で済めばCOVID-19が強力な「自然ワクチン」にもなるわけです。
昨年末、日本の空港検疫で発覚したオミクロン陽性者188人のうちの80%は無症状であったことや、ワクチン接種率の低い南アフリカをはじめとする諸外国の報告にもあるようにオミクロン感染者の多くは軽症なわけですから、オミクロン感染者の重症化率をさらに下げることができればオミクロン株を「自然ワクチン」に近づけることに繋がります。
新型コロナは今後も変異を続けて感染力がさらに高まり、ワクチンで感染を完全に予防することはできませんので、いずれは誰もがなんらかの変異株にはかかるということも予想されています。
オミクロン株の大流行で自宅療養者数は2022年2月初頭の時点で過去最高を更新し続けています。早期の鼻うがい導入によりオミクロン株の無症状化・軽症状化をもたらすことが社会不安の軽減に繋がり、世の中に良い流れを生むことを期待します。
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こちらの記事の監修医師
堀田修クリニック
堀田 修
認定NPO法人日本病巣疾患研究会(JFIR)理事長
医療法人モクシン 堀田修クリニック(HOC)院長
医学博士
特定非営利活動法人日本病巣疾患研究会 理事長
IgA腎症・根治治療ネットワーク代表
日本腎臓学会評議員
東北医科薬科大学腎臓内分泌内科臨床教授
1988年IgA腎症の根治治療として扁摘パルス療法を考案。
2001年、2002年扁摘パルスにより、早期の段階に治療介入を行えばIgA腎症が治りうる疾患であることを米国医学雑誌(AJKD)に報告。
その後は同治療の普及活動と臨床データの集積を続ける。
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