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双極性障害、双極スペクトラム障害…気分が揺れる精神疾患の原因、症状、治療法

最終更新日:2022年5月6日

双極性障害、双極スペクトラム障害…気分が揺れる精神疾患の原因、症状、治療法

こちらの記事の監修医師
メンタルクリニックさとう(神奈川県伊勢原市)
善本 正樹 先生

(写真=PIXTA)

人の気分は一定ではありません。良いことや嬉しいことがあれば気分は上がるし、嫌なことや悲しいことがあれば気分は下がります。気分は、睡眠、体調、天気、ストレスなどにも影響されて揺れ動きます。気分は思考や感情に強い影響を及ぼしており、気分を知ることは自分を安定させるために大切です。気分が揺れる精神疾患、双極性障害と双極スペクトラム障害について精神科医が解説します。

気分の高まりは躁状態、気分の下がりはうつ状態

精神医学的には、気分の高まりは躁状態、気分の下がりはうつ状態と言います。

躁状態では、気分が高揚した結果、睡眠時間が2~3時間でも爽快な気分で多弁多動となり、高額な買い物するなど、社会的な逸脱行為がみられます。本人は異常な気分の高まりを自覚することはなく、最悪のケースでは警察を経由して入院に至ることもあります。また、躁状態にはさまざまな程度があり、多弁多動になって本人も周囲も気が付かない程の気分が軽度に高い状態、つまり軽躁状態があります。

一方、うつ状態では、気分が下がる結果、意欲や興味がなく、考えることは悲観的なことばかりであり、自殺を考えるに至ります。貧困妄想や虚無妄想などに至り、食事もしなくなって入院に至ることもあります。うつ状態にも、さまざまな程度があり、仕事や生活に支障がない程度の軽度の状態、つまり気分変調(軽度のうつ)がみられます。

さらに、あまり聞きなれない言葉ですが、混合状態と言われるものもあります。これは、躁とうつが混合していて、例えば、気分はうつ的で落ち込んでいますが、意思や思考は躁的で頭の中がグルグル回転して忙しいような状態です。こんなときには、焦燥感が強くなり、いても立ってもいられず、強い不安から自殺衝動が高まることがあることから注意が必要です。

双極性障害と双極スペクトラム障害

このような気分の状態を観察して診断されるのが双極性障害です。それらには、気分が大きく躁とうつに振れる双極性障害Ⅰ型(躁うつ病)、気分が軽躁とうつがみられる双極性障害Ⅱ型が大別されますが、それら以外にもさまざまな気分が揺れる状態があり、それらを双極スペクトラム障害と呼んでいます。

双極スペクトラム障害は、未だ定まった基準を持った診断ではありませんが、1999年にAkiskalらによって提唱されました。この概念は、うつ病と躁うつ病を明確に2分するのではなく、気分の波を呈する状態を正常から病的水準まで連続体(スペクトラム)と捉えてものです。

この概念を知ることによって、当事者が苦痛を感じるうつの気分を安易にうつ病と診断して抗うつ薬を使用するのではなく、双極スペクトラム障害と鑑別することによって気分障害をより適切な診断と治療をすることに寄与します。

また、うつ病だけでなく、注意欠陥多動性障害、境界パーソナリティー障害、アルコール依存症など高い衝動性がある疾患では、気分の不安定さが原因のこともあり、双極スペクトラム障害との鑑別が必要なケースが多くあります。

双極性障害の診断は、気分の波を捉えることが最も大切です。日々刻々変化する気分を観察することは容易ではありませんが、例えば、起床時とか、少なくとも一日一回以上は自分の気分がどのレベルであるかを意識します。そのためには気分の観察日記が有用であり、最近ではアプリも出されています。気分の観察と同時に睡眠時間の記録も大切です。双極性障害におけるうつエピソードでは、過眠となり、一日10時間以上寝て、体が怠くて寝たきりのような生活になります。

一方、躁状態では、睡眠時間が3-4時間と短くなり、一日中活発に動き回ります。人の記憶は時間が過ぎれば曖昧になるために、自分の状態のパターンを知るためにも、このような観察記録は重要です。

治療は気分安定薬と非定型抗精神病薬

双極性障害の治療は、気分安定薬と非定型抗精神病薬を使用します。抗うつ薬は、躁転や気分不安定さを遷延化(長引くこと)させるために原則は禁忌です。安易な抗うつ薬の使用は、自殺衝動を高めます。とくに25歳以下の方には注意が必要です。

気分安定薬にはリチウム、バルプロ酸ナトリウム、ラモトリギンがあります。非定型抗精神病薬には、ルラシドン、オランザピン、クエチアピン、アリピプラゾールがあります。これらの薬は、躁やうつの状態のときに使い分けるのですが、躁もうつにも効果的な幅広い作用を持つのがリチウムであり、治療の第一選択となります。

リチウムは、自然界にあるミネラルであり、水道水、野菜、海藻類などに含まれて、神経保護作用、自殺予防作用、衝動性や攻撃性抑制作用が知られており、最近では認知症予防効果も期待されています(Anjum Memon et al,The British Journal of Psychiatry 2020. Takeshi Terao et al, Japanese Jouronal of Biological Psychiatry 2020)。

リチウムは、双極性障害Ⅰ型では、血中濃度を測定しながら、400㎎から1200㎎まで使います。腎機能の低下している方や痛み止めなどに使われる消炎鎮痛薬を使用している方では、血中濃度が高くなり、リチウム中毒になるリスクがあるために注意が必要です。

双極スペクトラム障害の治療では、リチウムは400㎎以下の少量で治療可能であり。厳格な血中濃度測定は必要ありません。また、双極スペクトラム障害は若い女性の患者さんが多いのですが、リチウムは600㎎以下の使用なら妊娠には影響ないと報告されています(Patorno et al, New Eng J Med 2019)。

薬物治療以外に大切な生活リズムとストレス対応

双極性障害の治療では、薬物治療以外に大切なのが生活リズムとストレス対処です。リズムが乱れると気分は不安定になります。規則的な生活を心がける助言を繰り返します。ストレスについては、ストレスの原因になっている人間関係を明確にして、どのように対処するかを話し合います。

双極性障害を通して気分と上手く付き合う方法を知ることが、治療の最終ゴールです。気分の上がりと下がりがあるとすれば、最も気を付けるのは、気分の上がり(躁状態)です。人は、調子が良く、気分が上がっているときは、調子に乗り過ぎます。その結果、体を疲労させて、人間関係を悪化させるリスクが高まります。気分の高まりの後に起こるのが、気分の下がり(うつ状態)です。気分は振り子のように、気分が高ければ高い状態を過ごすほどに、その後の落ち込みは大きくなります。

つまり、“調子は良いときには調子に乗り過ぎるな!”です。それでは、うつ状態のときにはどうすれば良いかというと、無理に気分を上げようとか、自分がダメだとか責めたりせず、ただうつ状態をとことん受け入れるしかありません。うつ状態の後には、必ず、気分は上がります。気分に合わせてゆっくり自分を動かしてみることが、気分と上手く付き合う方法です。

最後に、双極性障害は、自殺率が高く、一般人口に対してうつ病は15.9%に対して、双極性障害は29.2%と報告されています(Chen YW et ai, Biol Psychiatry 1996)。上述したように注意欠陥多動性障害やアルコール依存症に併存することも多くあり、自殺予防において社会的には注目するべき精神疾患です。双極性障害を適切に診断するには医師には十分な臨床経験が必要です(Dunner et al,1993)。医療関係者だけでなく、多くの人に対して、気分が揺れる精神疾患(双極性障害、双極スペクトラム障害)を知っていただきたいと思います。

こちらの記事の監修医師

メンタルクリニックさとう(神奈川県伊勢原市)

善本 正樹 先生

メンタルクリニックさとう 院長
医学博士
1991年 秋田大学医学部卒。96年 秋田大学医学部大学院医学研究科修了して学位を取得。2012年 医療法人慧眞会協和病院(秋田県大仙市)院長。2019年メンタルクリニックさとう院長就任。専門は精神神経薬理学。抗精神病薬、抗うつ薬、睡眠薬や抗不安薬の減薬外来を開設して、向精神薬の適正使用を行う。日本臨床精神神経薬理学会認定医、日本精神神経学会認定医・指導医、精神保健指定i医、日本医師会認定産業医、認知症サポート医。

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