ナルコレプシーの症状を解説!日中の過度な眠気以外の症状は?ナルコレプシーの診断と治療の流れもご紹介

最終更新日:2021年8月24日

ナルコレプシーの症状を解説!日中の過度な眠気以外の症状は?ナルコレプシーの診断と治療の流れもご紹介

こちらの記事の監修医師
三重心身クリニック
臼井卓士 先生

〇病院名 :三重心身クリニック院長
〇医師  :臼井卓士
〇アクセス:三重県鈴鹿市道伯町字筧田2064-1
〇診療科 :心療内科 精神科 内科
〇経歴:三重大学医学部卒業後、同大学附属病院精神神経科に勤務。
精神科病院の勤務を経験後
2003年 4月 三重大学附属病院心療内科勤務
2004年 1月 同大学精神神経科学講座助手(現 助教)
2004年 5月 三重県こころの健康センター勤務
2006年 4月 同センター技術指導課主査
2008年 4月 三重心身クリニックを開院

<資格> 日本医師会認定産業医/ 日本精神神経学会認定専門医

<所属学会> 日本心身医学会/日本心療内科学会/日本児童青年精神医学会/
日本統合失調症学会/日本精神神経学会/日本統合医療学会

ナルコレプシーとは睡眠障害の一種で、昼間突然眠くなってしまう病気です。

「narco(ナルコ)」は麻酔や脱力、「lepsy(レプシー)」は発作を意味するギリシャ語で、この病気の症状をしっかり表現しています。

この病気では日中の活動に支障を来すだけでなく、もし車の運転中に症状が出たら事故を起しかねません。

しかし症状の出方や対処法を知っておけば決して恐ろしい病気ではなく、日常生活も問題なく送れます。

まず病気を正しく理解することから始めましょう。

ナルコレプシーの症状

ナルコレプシーの症状としては「眠気」がよく知られていますが、これだけではありません。

主な症状は5つあり、そのうち日中の過度な眠気と情動脱力発作が確認された場合にナルコレプシーと診断されます。

日中の過度な眠気

ナルコレプシーの症状で最も特徴的なのが日中の過度な眠気です。

寝不足の状態であれば誰でも昼間に眠くなることがあるでしょう。

しかしナルコレプシーの場合は十分な睡眠がとれている状態でも日中にひどい眠気が襲ってきます。

この眠気は「72時間一睡もせず過ごした後、数学の問題を解いているときに感じる眠気」と表現されるほどの強さです。

突然強い眠気が出ることから「睡眠発作」とも呼ばれます。

睡眠発作後は通常30分以内に目覚め、目覚めは非常に爽快なのが特徴です。この睡眠発作を1日に何度も繰り返します。

情動脱力発作

驚いたときや笑ったときなど強く感情が動いた場合に脱力状態になり、姿勢が保てなくなる症状が「情動脱力発作」です。

意識を失うことはなく、首や膝の力が抜けて頭が不安定になったり、膝に力が入らなかったりします。

その他にもあごの力が抜けて呂律が回らない、全身に力が入らず倒れこむといった症状が出るほどの発作です。

基本的には数秒から数分で自然に治りますが、そのまま眠ってしまうと幻覚症状や睡眠麻痺を併発することがあります。

睡眠麻痺

入眠時や目が覚めたとき、意識ははっきりしているのに体が動かせなくなる症状で、いわゆる「金縛り」の状態です。

夜の就寝時だけでなく昼間眠り込んでしまった時にも症状が現れます。麻痺状態は数分で自然に解消し、長くは続きません。

この症状にはレム睡眠とノンレム睡眠のリズムの乱れが大きくかかわっています。

入眠時はノンレム睡眠を経てレム睡眠に移行するのが通常です。

しかしナルコレプシーでは脳がまだ覚醒している状態でレム睡眠に入ってしまいます。

レム睡眠中は体が動かせなくなるため、意識があるのに体が動かない「睡眠麻痺」が起きるのです。

睡眠麻痺はナルコレプシー以外でも起きる症状ですが、ナルコレプシーの方に多く見られます。

幻覚

ナルコレプシーでは入眠時や目が覚めたときに幻覚を見ることがあります。この症状もレム睡眠のリズムの乱れによって起きるものです。

脳が覚醒している状態でレム睡眠に入るため、まだ意識がある状態で夢を見ます。

その結果普段見る夢よりも鮮明に感じ、見えるはずのないものが見えたり、聞こえるはずのない音が聞こえたりするのです。

またこのときに見る夢は恐ろしい内容のものが多い傾向で、必死に逃れようとするものの睡眠麻痺により体が動かないため更に不安が強くなります。

自動症

眠っている状態のまま、意識があるかのように行動する「自動症」を伴うことがあります。行動の内容としては、眠る前に行っていたことや日頃のルーティン動作が大半です。

このときの眠りは浅く、周りからの声掛けや少しの刺激で目が覚めます。覚醒後は眠ってしまったことや自動症によって何をしたか記憶に残っていません。

睡眠不足や睡眠障害との違い

昼間に強烈な眠気が生じる原因としては以下の2つが考えられます。

・慢性的な睡眠不足

・脳内にある睡眠を調節する機能の低下

睡眠不足に陥る理由は不規則な生活や各種睡眠障害などが挙げられ、前者は睡眠の質と量が確保できれば症状が改善します。

しかし後者は十分な睡眠時間を確保しても、日中に過度な眠気が何度も現れます。

睡眠障害の代表格がナルコレプシーであり、睡眠時間の確保だけでは症状改善ができません。

もちろん十分な睡眠をとることは不可欠ですが、これ以外の治療が必須です。

関連する疾患や合併症

睡眠障害が長期間続くと、身体・精神の双方に負担がかかって何らかの疾患を併発することがあります。

精神的な疾患ではうつ病や抑うつ状態などの気分障害、その他不安神経症が代表例です。

眠気を我慢しているときの頭痛や、肥満・多汗症・糖尿病を併発するケースも少なくありません。

また睡眠障害により社会生活の中で失敗を重ねて自信を失う、情動脱力発作を恐れて他者を避けるといった性格的な変化も起こりえます。

ナルコレプシーの原因

ナルコレプシーの症状が出る原因は完全には解明されていません。

有病率は人種によって異なり、日本人は世界で最も高い600人に1人の有病率となっています。

男女差はほとんどないとされていますが、治療を受けるのは男性の方が多い傾向です。

これは性差や遺伝的問題ではなく、社会的立場の違いや社会進出の割合が影響していると考えられています。

主な原因はヒポクレチンを作る神経細胞の機能停止

ナルコレプシーの睡眠発作は乳児の眠りに似ているといわれます。

また10代から20代前半での発症が多いことから、成長の過程で何らかの原因により睡眠の発達が妨げられている、というのが大方の見解です。

なおナルコレプシー患者さんの脳脊髄液を検査すると、ヒポクレチン(オレキシン)がほとんど消失していることが分かっています。

ヒポクレチンは脳内の視床下部にある神経細胞から作られる物質です。

そのため、この細胞が機能低下を起こすとナルコレプシーに罹患するのではないかとも考えられています。

なお神経細胞の機能低下が起こるメカニズムは判っていません。

遺伝的要因も

親がナルコレプシーの場合、子供の発症リスクが10倍高くなることから遺伝的要因も示唆されています。

しかし一卵性双生児の一人が発症しても、もう一人の発症率は1/3程度です。

これらから、遺伝的要因は関連するものの環境要因の影響の方が大きいと考えられています。

ナルコレプシーへの理解は遅れている

ナルコレプシーでは場所や時間を問わず眠気を感じるため、通常なら緊張で眠気が飛んでしまうような場面でも眠ってしまうことがあります。

ナルコレプシーではない方が感じる眠気は「緊張で吹き飛ぶ程度のもの」だといえるでしょう。

ナルコレプシーの患者さんが感じる眠気は非常に強烈なもので眠気に打ち勝つことは難しく、本人に何も非がありません。

しかし周囲の方にとっては「居眠り」に見えてしまいますし、自身がナルコレプシーだと認識していない方もいます。

こうしたことから、この病気への理解が進んでいないのが現状です。

ナルコレプシーの診断・治療

症状が不眠だけなら内科、精神的ストレスを伴うなら精神科、身体にも症状が出ている場合は心療内科を受診するのが良いといわれています。

ナルコレプシーに適した受診科や具体的な治療方法をご紹介します。

睡眠障害に詳しいのは精神科

診療科によってはナルコレプシーへの理解が不十分な医師も多く、適切な診断・治療が受けられないこともまれにあります。

ナルコレプシーは睡眠を調節する脳機能の異常です。そのため精神科を受診するのが適切でしょう。

生活のコントロールと薬物療法

なぜ発病するのかがわかっていないため、根本的な治療ではなく対処療法を進めていくことになります。

生活をコントロールしながら症状を緩和するために、生活習慣の改善と薬物療法を実施するのが一般的です。

不規則な生活は症状を悪化させるため、規則正しい生活を行うことが治療の基盤となります。

また計画的な休憩や昼寝をとることで、すっきりとした気分で過ごすことができますし、薬の服用量を減らすことも可能です。

薬物療法では睡眠リズムを整えるために複数の薬を併用します。夜には眠気を促す薬、昼間には眠気を覚ます薬といった形です。

情動脱力発作・睡眠麻痺・幻覚に対しては抗うつ剤を使います。

別の疾患を併発している場合は治療を並行することになるため、服用する薬の種類や量に注意が必要です。

とはいえ医師が適切な飲み合わせを考えて調整・処方します。

治療が長期間に及ぶと薬の副作用が心配になる方もいるでしょう。

睡眠剤や覚醒剤に似た成分の薬を使うこともあるため、依存性に不安を持つ方が多くいます。

しかし医師の指示に従って服用すれば問題ありません。

不安だからといって自己判断で薬を減らしたり、服用をやめてしまったりすると睡眠リズムの乱れにつながります。

不安なことがあれば、医師に相談してみましょう。

徐々に軽減する例が多いため根気よく

治療を続けることで症状は徐々に緩和されていきます。しかし数日・数ヶ月といった短期間で改善するのは難しいでしょう。

5〜10年かけて少しずつ改善に向かうケースが多いため、根気よく治療を続けることが大切です。

またナルコレプシーという病気を理解して症状をコントロールし、生活の質を向上させることも欠かせません。

そのためには身近な人に病気を理解してもらう必要があります。

治療をしながら社会生活を営む方法を一緒に考えてもらうと精神的な負担も軽くなるはずです。

家族や職場の方への説明が必要であれば、医師や看護師に依頼してください。

予防法や注意点

ナルコレプシーの患者さんに発症以前の生活を確認すると、習慣的な夜更かしなど負担の大きな生活をしていた方が少なくありません。

神経細胞の機能低下が原因だとしても、発症のきっかけを作らないことが重要です。

規則正しい生活を送ること、過度なストレスをかけないことが予防につながります。

発症率の高い10代から20代前半の間は、特に注意しましょう。

まとめ

ナルコレプシーによる眠気は場所や時間を選びません。

運転中に症状が出れば交通事故の可能性がありますし、仕事中の居眠りが原因で労働災害に発展するリスクもあるでしょう。

勤務態度の評価が下がれば雇用も不安定になります。

何よりも、大切な時間を意図しない睡眠で奪われてしまいます。

ご自身が病気に対する理解を深めるのはもちろん、社会生活を営む上では周囲の理解を得ることが大切です。

また時間はかかりますが治療を継続し、症状をコントロールしながらQOL(生活の質)の向上を目指しましょう。

こちらの記事の監修医師

三重心身クリニック

臼井卓士 先生

〇病院名 :三重心身クリニック院長 〇医師  :臼井卓士 〇アクセス:三重県鈴鹿市道伯町字筧田2064-1 〇診療科 :心療内科 精神科 内科 〇経歴:三重大学医学部卒業後、同大学附属病院精神神経科に勤務。 精神科病院の勤務を経験後 2003年 4月 三重大学附属病院心療内科勤務 2004年 1月 同大学精神神経科学講座助手(現 助教) 2004年 5月 三重県こころの健康センター勤務 2006年 4月 同センター技術指導課主査 2008年 4月 三重心身クリニックを開院 <資格> 日本医師会認定産業医/ 日本精神神経学会認定専門医 <所属学会> 日本心身医学会/日本心療内科学会/日本児童青年精神医学会/ 日本統合失調症学会/日本精神神経学会/日本統合医療学会

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