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インスリン注射の副作用とは?注意すべきポイントや対処法を解説

最終更新日:2021年8月31日

インスリン注射の副作用とは?注意すべきポイントや対処法を解説

こちらの記事の監修医師
榊原記念病院
木村 眞樹子 先生

糖尿病の治療によく使われている「インスリン注射」。「治療のためとはいえ副作用が気になる」「副作用があるとしたら対処方法を事前に知っておきたい」と考えている人も多いのではないでしょうか。ここではインスリン注射をうった後の副作用や対処法について日頃から注意しておくべき点などを詳しく解説していきます。ぜひ参考にしてください。

インスリン注射とは?

(画像=Diabetes patient turn knob on end of insulin pen and dial up correct insulin dose for injection. Scale window on pen syringe showing number of units dose. Medical equipment is easy to self injection./stock adobe.com)

糖尿病を治療する際、不足しているインスリンを体外から補い、血糖値を下げるために使われるのがインスリン注射です。特に、インスリンを分泌する細胞が壊されてしまう1型糖尿病にかかっている人にはインスリン注射が欠かせません。

ここからは、インスリン療法の仕組み、インスリン製剤の種類、インスリン注射を行う方法の3つに分けて詳しく見ていきましょう。

インスリン療法の仕組み

インスリン療法とは糖尿病の人にインスリン注射を用いて体外からインスリンを補い、健康な人のインスリン分泌にできるだけ近づけるための仕組みのことです。

健康な人のインスリン分泌には2種類あります。1つは24時間絶え間なく分泌される「基礎分泌」、もう1つは、食事によって急激に上昇する血糖値を調整する「追加分泌」です。

インスリン療法ではこのような自然なインスリン分泌をできるだけ忠実に再現するため、さまざまなインスリン製剤をタイミングごとに使い分けて自己注射を行います。

ただし、糖尿病を発症したすべての人にインスリン療法が適応されるわけではありません。インスリン療法の主な対象者は1型糖尿病の人、あるいは2型糖尿病のうち経口薬療法が難しい人などです。

その人の病状やライフスタイルなどを考慮し、最適な治療方法を医師が選択するため、詳しくは主治医に確認することをおすすめします。

インスリン製剤の種類

インスリン注射による治療で使われるインスリン製剤は、大きく次の3タイプに分類できます。

  • 追加分泌を補うタイプ
  • 基礎分泌と追加分泌の両方を補うタイプ

基礎分泌を補うタイプのインスリン製剤は、注射後1時間から1時間半ほどでゆっくりと効き始めほぼ24時間効果が持続するのが特徴です。

一方、追加分泌を補うタイプのインスリン製剤は、注射して数分から30分ほどですぐに効き始め、3時間から8時間ほど効果が持続します。

基礎分泌と追加分泌の両方を補うタイプのインスリン製剤は、注射して数分から30分ほどで作用が現れ、効果の持続時間は約24時間です。

【主なインスリン製剤の種類一覧】

種類投与のタイミング作用・特徴
超速攻型インスリン製剤食事の直前追加分泌を補うタイプ。 注射後、数分で効果が現れ、約3~5時間持続する。
速攻型インスリン製剤食事の30分前追加分泌を補うタイプ。 注射後、約30分で作用し、8時間ほど効果が持続する。
中間型インスリン製剤決められた時間基礎分泌を補うタイプ。 注射後、約1時間半で作用し、約24時間持続する。投与後1~3時間後がピーク。
持効型溶解インスリン製剤決められた時間基礎分泌を補うタイプ。 注射後、約1時間で作用し、約24時間持続する。効果の波が少ない。
混合型インスリン製剤朝食直前、朝食直前と夕食直前、朝食前と夕食前30分以内など、ケースバイケース基礎分泌と追加分泌の両方を補うタイプ。 注射後、約30分で作用し、約24時間持続する。
配合溶解インスリン製剤食事の直前に1日1回、または朝食直前と夕食直前の1日2回基礎分泌と追加分泌の両方を補うタイプ。 注射後、数分で効果が現れ、約24時間持続する。

インスリン注射を行う方法

インスリン療法が始まると、インスリン注射を自分で打つことになります。中には「ちゃんと自分で打てるだろうか」と不安に思っている人もいるのではないでしょうか。

実際にインスリン療法を始める際には、医師や看護師から自己注射指導があるため心配いりませんが、ここでも簡単にインスリン注射を行う手順についてご紹介します。

【インスリン注射の手順】

  • 手を洗って清潔な状態にします。
  • インスリン製剤、注射針、消毒用アルコール綿を用意します。
  • 濁ったインスリン製剤は、液全体が均一な乳白色になるまで振ります。
  • インスリン製剤に注射針をまっすぐ取り付けます。
  • 注射を打つ前に空打ちし、針先から薬液が出るのを確認します。
  • ダイヤルを回して、投与する単位に合わせます。
  • 注射する部位を消毒し、皮膚に対して直角に注射針を刺します。
  • 注入ボタンをゆっくりと最後まで押し込みます。
  • 10秒ほど数えてから、注入ボタンを押したまま針をそっと抜きます。
  • キャップをかぶせてから針を取り外し、病院に指定された方法で廃棄します。

インスリン注射の副作用

インスリン注射の副作用としては、主に次の4つが挙げられます。

  • 低血糖症
  • 皮膚の赤み・かゆみ
  • インスリンリポジストロフィー
  • まれに血糖コントロールが困難になる

では、それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。

副作用1:低血糖症

インスリン注射の副作用、1つ目は「低血糖」です。低血糖とは、血糖値が異常に低くなることを指します。インスリンには血糖値を下げる効果があるため、効きすぎると血液中の糖分が異常に減ってしまい、さまざまな不調を起こすことがあるのです。

低血糖の症状には、主に次のようなものがあります。

  • 強い空腹感や倦怠感などの副交感神経症状
  • 冷や汗、手足のふるえ、動悸、顔面蒼白などの交感神経症状
  • 目のかすみ、眠気、生あくび、集中力低下、頭痛などの中枢神経症状

など。

低血糖の症状には個人差があり、特に高齢者は自覚しにくい傾向があります。ただし、重症化すると脳内の糖分が枯渇し、意識がもうろうとして昏睡状態に陥ってしまう場合もあるので、自分の体調を注意深く観察しておくことが大切です。

特に普段よりも食事の量が少ない時や、いつもより強い運動を長時間行った時などはインスリンが効きやすく、低血糖を引き起こす可能性が高くなるため注意しましょう。

低血糖を繰り返すことは体に大きな負担をかけ、低血糖以外の身体の不調の原因になることもあります。低血糖症状を頻回に起こしてしまう場合には、使用するインスリンの量を調整する必要がありますので主治医に相談することが必要です。

副作用2:皮膚の赤み・かゆみ

インスリン注射の副作用、2つ目は「皮膚の赤み・かゆみ」です。人によってはインスリンアレルギーを起こし、注射を打った部分が赤くなったりかゆくなったりすることがあります。

体内でインスリン抗体が作られてしまうことなどが主な原因とされていますが、インスリン製剤に含まれる防腐剤などの添加物が原因となっている場合も少なくありません。

時間の経過とともに皮膚の赤みやかゆみは治まっていくものの、インスリン注射を行うたびに毎回同じ症状を繰り返すようなら、必ず主治医に相談しましょう。

副作用3:インスリンリポジストロフィー

インスリンの副作用、3つ目は「インスリンリポジストロフィー」です。インスリンリポジストロフィーとは、注射部位の脂肪組織が変化して硬くなるなどの異常が起こることを指します。

インスリンリポジストロフィーの原因は不明ですが、長い期間、同じ箇所にばかり注射を打っていると起こりやすくなるので注意が必要です。

副作用4:まれに血糖コントロールが困難になる場合も

インスリンの副作用、4つ目は「まれに血糖コントロールが困難になる場合もある」ということが挙げられます。

通常、私たちの体はインスリン製剤に対して抗体を作りませんが、まれにインスリン抗体が産生されてしまう人も存在します。このような場合、インスリン抗体が低血糖や高血糖を起こさせ、血糖コントロールが不安定になることがあるのです。

そのため、血糖コントロールが不安定な場合は、インスリン抗体を確認するインスリン抗体測定を受けることをおすすめします。

抜け毛はインスリン注射の副作用?

インスリン注射の副作用として「抜け毛」を心配している人は少なくありません。ただし、インスリン注射が原因で抜け毛が起こるということはほとんどないため、安心してください。

そもそも、糖尿病を発症すると抜け毛が増える可能性があります。なぜかというと、糖尿病にかかると血流が阻害されやすく、血流が阻害されると髪の毛を維持するために必要な栄養素がうまく運搬されなくなるからです。

そのためインスリン注射を打ち始めたタイミングで抜け毛が起こると、インスリン注射の副作用と勘違いしてしまいがちですが、実は糖尿病の影響が大きいと考えられます。

インスリン療法で血糖値が落ち着き血流も改善されれば、新しい毛根細胞ができあがり徐々に新しい髪の毛が作られ始めるので、過度に心配する必要はありません。

インスリン注射の副作用への対処法

インスリン療法を行う場合は、インスリン注射の副作用への正しい対処法を知っておくことが大切です。

ここではインスリン注射の副作用が起こった時の対処方法を、具体的に3つご紹介します。早速チェックしていきましょう。

副作用の対処法1:低血糖の場合はすぐにブドウ糖を摂取する

インスリン注射の副作用で低血糖を起こしてしまった場合は、すぐにブドウ糖を摂取しましょう。

低血糖の症状に気づいた時点で、速やかにブドウ糖や砂糖を10gほど、またはブドウ糖を含んだ飲み物を150mlから200mlほど摂取してください。ブドウ糖や砂糖以外の糖分は効果が現れるまでに時間がかかるため、注意が必要です。

ブドウ糖を摂取してから15分ほど経過しても症状が改善しない場合は、もう1度同じようにブドウ糖や砂糖を摂取します。回復しない場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。

インスリン注射の副作用で最も危険なのが低血糖です。低血糖を繰り返すことでほかの病気にかかりやすくなったり、低血糖が重症化すると命にもかかわります。

低血糖を繰り返す場合には糖尿病の薬の調整をする必要があるかもしれませんので早めに主治医に相談するようにしてください。

副作用の対処法2:アレルギー反応が出る場合は主治医に相談する

インスリン注射の副作用で、繰り返し皮膚の赤みやかゆみなどのアレルギー反応が現れる場合は、早めに主治医に相談しましょう。

医師の判断のもと、抗ヒスタミン剤や副腎皮質ステロイドの投与、あるいは他のインスリン製剤への切り替えなど、各々の症状に合わせた適切な方法で対処してもらえます。

副作用の対処法3:インスリン注射を打つ場所を変える

インスリン注射の副作用でインスリンリポジストロフィーが現れると、その箇所にインスリン注射をしても吸収が妨げられ、十分な効果が得られなくなる場合があります。

そのため、インスリン注射を行う際には、毎回同じ箇所に打ってしまわないよう、注射部位を変えることが大切です。少なくとも前回の注射部位から2~3cm離れた箇所に針を刺すようにしましょう。

インスリン注射の副作用に備えて注意すべきポイント

どれだけ気をつけていたとしても、さまざまな条件が重なりインスリン注射の副作用が現れてしまうケースもあります。そのため、ここからはインスリン注射の副作用に備えて注意すべきポイントを3つご紹介していきます。

ポイント1:ブドウ糖を常に携帯する

インスリン注射の副作用である低血糖は、どのようなタイミングでも起こる可能性があります。だからこそインスリン療法を行っている人は、いつどこで低血糖が起こっても対処できるよう、常にブドウ糖を携帯しておくことが大切です。

ポイント2:副作用が現れた時の対処法を周りに共有しておく

インスリン注射の副作用により重度の低血糖を起こしてしまうと、意識がもうろうとして自分では対処できなくなってしまう場合もあります。

そのため、家族や友人、職場の仲間など、自分の周りの人にはインスリン注射の副作用が現れた時の対処法を共有しておくようにしましょう。

周りの人が対処法を知っていれば、万が一自分の意識がなくなってしまった時でも、落ち着いて適切に対処してもらえるはずです。

ポイント3:糖尿病患者用IDカードを常に携帯する

1人での外出時に低血糖で倒れてしまうなどの不測の事態に備えて、糖尿病患者用IDカード(緊急連絡用カード)は常に携帯するようにしましょう。

糖尿病患者用IDカードとは、個人個人の病態に合わせた適切な処置を、医療関係者に知らせるためのアイテムです。財布の中など、わかりやすい場所に入れておくことをおすすめします。

下痢や吐き気などがあるときのインスリン注射はどうするべき?

糖尿病の治療を続けていく中で、下痢や吐き気によって食事が取れなかったり、風邪をひいてしまったりすることもあります。このように糖尿病中に他の病気にかかることをシックデイと言います。

シックデイでは高血糖になりやすく、脱水やケトアシドーシス(糖尿病昏睡の一種)など危険な状態に陥ってしまうケースもあるため、細心の注意を払いましょう。シックデイの対応としては、こまめに血糖値を測ること、安静と保温を心がけること、水分や糖質を摂取することが大切です。

また、あまり食事ができないからといって、自己判断でインスリン注射を中止するのは危険です。血糖値が高くなりやすいシックデイにインスリンの投与が行われないと、驚くほど高血糖になってしまうことがあるため、必ず医師の判断を仰ぎましょう。

インスリン注射の副作用や対処法を知って安全に治療を進めよう

今回は、インスリン注射の副作用や、副作用への正しい対処法、そして副作用に備えて注意すべきポイントなどについて、詳しくご紹介しました。

インスリンは血糖値を下げるための特効薬ですが、重症化すると危険な副作用も存在します。ただし、適切な対処方法を把握しておけば、決して怖いものではありません。

ぜひあなたの身の周りの人にも、インスリン注射の副作用への対処法を共有し、安心して治療を進めていきましょう。

こちらの記事の監修医師

榊原記念病院

木村 眞樹子 先生

〇病院名 :東京女子医科大学病院
〇医師  :木村 眞樹子
〇アクセス:東京都 新宿区 河田町 8-1
〇診療科 :内科、循環器科、睡眠科
〇経歴:
東京女子医科大学医学部卒業
東京女子医科大学病院循環器内科入局
東京女子医科大学病院
KDDIビルクリニック
榊原記念病院(内科、循環器科、睡眠科)

【認定医資格】
内科専門医
循環器専門医
睡眠専門医
産業医

妊娠、出産を経て、産業医としても活動するなかで、病気にならない身体をつくること、予防医学の大切さを改めて感じるようになる。
医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行なっている。
http://www.twmu.ac.jp/info-twmu/
https://www.facebook.com/makiko.k.kobayashi