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子どものウイルス性胃腸炎…「コップ1杯の水」で症状悪化の危険性【小児科医が解説】

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最終更新日:2022年1月10日

子どものウイルス性胃腸炎…「コップ1杯の水」で症状悪化の危険性【小児科医が解説】

こちらの記事の監修医師
医療法人 啓信会きづ川クリニック
米田 真紀子 先生

※画像はイメージです/PIXTA

ウイルス性胃腸炎は冬場に流行りやすく、この時期は保育園などで大流行の恐れがあります。また、子どもがウイルス性胃腸炎にかかった際、適切に対処できなければ症状が悪化する危険もあると、小児科医の米田真紀子氏はいいます。ウイルス性胃腸炎に関する正しい知識とともに、もし子どもがウイルス性胃腸炎になった際、気を付けなければならないことをみていきましょう。

突然の嘔吐下痢!ほとんどは「ウイルス性胃腸炎」


コロナ禍の2021-2022年のシーズンはインフルエンザがあまり報告されていません。ただ、全国的に胃腸炎が流行している地域が多いです。

夕食時まではすこぶる元気でパクパクごはんを食べていた子が、夜中に突然起きて嘔吐したり、下痢をしてしまったりした経験をもつ保護者も多いのではないでしょうか?

食べ過ぎたのではないか、なにか食べたものが悪かったのではないか、と思われるかもしれませんが、小さいお子さんでは多くの場合、「感染性胃腸炎」にかかっています。

感染性胃腸炎とはその名のとおり、ウイルスあるいは細菌の感染により胃腸に炎症が起こった状態です。原因となる微生物にはたくさんの種類がありますが、多くがウイルス性で、ノロウイルスやロタウイルスなどが有名です。

細菌であればサルモネラ菌やカンピロバクターなどが有名ですが、これらは食中毒とも関連する微生物でもあるので、発症前に摂取した食物の情報が診断に結びつくこともあります。

ウイルスの種類によっては抗原検査をする方法もない


ウイルスは、前述のとおり「ノロ」や「ロタ」などが有名ですが、その他にも「アデノ」や「サポ」、「アストロ」といったウイルスが原因となっていることもあります。

外来ではよく「ノロじゃないですか?」と気にされる方がいますが、ノロウイルスであれロタウイルスであれ、感染対策は大きく変わらないうえ、治療方針も基本的には同じなので、病原微生物の診断は必ずしも必要ではありません。

2022年1月現在、ノロウイルス、ロタウイルスそしてアデノウイルスについてはウイルス迅速検査の保険適応があります(※)。

(※)ノロウイルスの保険適応は3歳未満あるいは65歳以上の患者、もしくは免疫抑制状態にあると判断される患者に限定されています。

しかし、その他のウイルスは一般的に抗原検査をする方法もありません。さらに、どのウイルスも人から人に感染するウイルスなので、保育園児などのあいだで大流行します。

「ウイルス性胃腸炎」…具体的にはどのような症状?


ウイルス性胃腸炎の主な症状は、どのウイルスにも共通していますが、発熱(ないこともある)、嘔吐、下痢、腹痛です。

ノロウイルスひとつとっても、遺伝子型がたくさんあるため、一生のうちで何度も感染してしまいますが、一般的には初感染時がもっとも重く、感染を繰り返すごとに症状は軽くなります。

また、体に入ったウイルス量が多ければ多いほど、発症時の症状も強くなる傾向があります。

症状は、まず前兆もなく突然の嘔吐で発症するケースが多く、嘔気や嘔吐が半日から1日程度続きます。

嘔吐が起こってから、あるいは嘔吐が落ち着いてくると、今度腸の動きが激しくなることによって腹痛が起こり、次第に下痢症状が目立つようになります。

症状の強さには個人差があり、嘔吐がみられないケースや、下痢がない場合もあります。経過中、もっとも辛いのが嘔吐を繰り返す時期で、小さな子どもの場合は、この時期にどのように過ごすかで、その後の経過が変わってきます。

コップ1杯の水ではなく、スプーン1杯の経口補水液から


胃腸炎で嘔吐を繰り返しているとき、多くの場合、子どもは水分を欲しがります。大抵はこのときに、子どもの要求に応じて多くの水分を摂らせすぎることで、また嘔吐を誘発し、脱水の悪循環に陥ってしまいます。

まず大切なのは、1度に摂取させる水分の量を調整することです。コップに少しだけ、と思って注いでも、実は許容量オーバーなことが多いので、はじめはスプーン1杯程度の量から摂取させるとよいでしょう。

足りない、と泣いて抗議されるかもしれませんが、とりあえずなだめてそこから5分から10分は様子を見ましょう。

そして、嘔吐がなければ次はスプーン2杯、その次は3杯、というように、極少量から少しずつ増やしていくのがコツです。

さらに、摂取させる飲み物ですが、水やお茶では糖分も塩分も不足してしまうので、なるべく「経口補水液」と呼ばれるものを購入するか、自作して飲ませるようにしましょう。

経口補水液は糖分や塩分を効率的に吸収しやすいように配合されている溶液なので、適切に摂取できれば、点滴と同等の効果が得られるといわれています。

嘔吐を繰り返していても、この方法であれば少しずつ摂取できることがほとんどです。吐き気止めの内服薬や坐薬もありますが、実際にはこちらの方法のほうが効果的です。

経口補水液は1日かけて、幼児では約500ml、学童期以降では1000ml程度摂取できるとよいです。

嘔吐が収まると、多少食欲がでてくる子もいますが、お腹になにかを入れると、腸が過剰に反応して腹痛を起こし、すぐ下痢をしてしまうことがよくあります。

感染性胃腸炎の腹痛や下痢に対しては有効なお薬はないため、消化にいいものを少しずつ、胃腸を休めながら摂取していくしかありません。

看病の際には「感染対策」もしっかりと


ノロウイルスやロタウイルスなど、胃腸炎ウイルスのなかにはアルコール消毒が効かないものもあります。吐物や下痢が共用スペースについた場合には、塩素系の消毒薬(次亜塩素酸ナトリウムなど)を使うほうがいいでしょう。

また、嘔吐・下痢の症状がある子どもはほとんどが感染力を持っていると考えて、タオルやコップの共用を避ける、手洗いを徹底するといった、できる限りの感染対策を行うことが大切です。

こちらの記事の監修医師

医療法人 啓信会きづ川クリニック

米田 真紀子 先生

日本小児科学会専門医/日本アレルギー学会専門医
1981年生まれ。平成19年滋賀医科大学医学部卒。同年4月より滋賀医科大学付属病院にて初期研修の後、同大学小児科学教室入局。平成23年より済生会滋賀県病院勤務の後、平成27年より京都きづ川病院勤務。
その間、3人の子供に恵まれ、育休・産休を取得しつつ、現在はその経験を生かして、患者とその家族の心に寄り添う診療を心がけている。一般診療から小児救急、新生児領域まで幅広い経験を有する。