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腸重積症とは

最終更新日:2021年2月15日

腸重積症とは

こちらの記事の監修医師
すずきこどもクリニック
鈴木 幹啓 先生

 腸重積症とは、口側の腸管が肛門側の腸管に引き込まれることで起こる腸閉塞症で、腸管の循環障害を伴う絞扼性イレウスのひとつである。原因不明で特発性の回腸結腸型の腸重積症がほとんどで、先行感染による回腸部のリンパ濾胞(Peyer板)の肥厚や腸間膜リンパ節腫脹が先進部と考えられている。

 一方、腸重積の器質的病変を特定できることはほとんどなく、ポリープ、メッケル憩室、異所性膵、腸管重複症、アレルギー性紫斑病などが病的先進部となっている。発症例の半数以上は1歳未満の乳児で、3カ月未満、6歳以上の乳幼児の発症例は少ない。

腸重積症のポイント

【症状】

 腹痛・嘔吐・血便が主な症状で、初診時に3つの症状すべてが該当する症例は10~50%である。5~30分間隔で不機嫌になり啼泣を繰り返す。初期症状は反射性嘔吐が起こりやすく、イレウスが進行すると胆汁性嘔吐に変わり、血便の回数も増える。発症から24時間後に腹部膨満および発熱がみられるようになる。時間の経過とともに症状が変化するため、受診のタイミングにより重症度が異なる。

【身体・検査所見】

 腹痛が収まっている間に触診を行う。右季肋部付近にソーセージ様腫瘤が確認でき、右下腹部は空虚な感じ(Dance徴候)を認める。腹部膨満の状況や腹膜刺激症状の有無を確認、評価する。

 腹部の単純X線写真は診断基準とはならないが、遊離ガス像や小腸閉塞像が確認できる。

 簡便で侵襲性が低い超音波検査は、感度・特異度が高くスクリーニング検査として有用性がある。Target signやpseudokidney signの有無で診断する。また、重積腸管内筒の血流の状態、器質的病変の確認、腹水の有無を確認することで重症度の診断基準となる。

 CT検査は被ばくの問題があり積極的に行われないが、本症の可能性が疑われたり、稀な小腸小腸型が疑われる場合の検査として有用である。血液・生化学検査では、貧血、電解質異常、炎症反応、脱水を確認する。

【治療方針】

 嘔吐により循環血液量の低下や脱水状態が起こるため、本症を疑われる場合は細胞外液補充液による輸液を行いながら、診断を進める。軽症でも非観血的整復術の合併症が起こった場合に備えて輸液ルートを確保しておく。

 下部消化管造影検査を行い、特徴的な蟹爪様の陰影欠損が見られれば本症の診断となる。非観血的整復術により8~9割は整復可能である。これは重積腸管の先進部に肛門側から圧をかけ、徐々に押し戻す方法である。整復術を行うにあたり、全身麻酔、鎮静薬の投与は必要ない。他院での非観血的整復が成功せず搬送された症例でも、全身状態が良好であれば、再度整復術を行う(delayed repeat enema)と成功する例が多い。

治療の実際

【非観血的治療】

 直腸内にバルーン付きカテーテルを挿入する。カテーテルが抜けないようあらかじめ殿部を両側から寄せ、下肢を弾性包帯で巻いて行う。6倍希釈(6~10倍)のヨード系造影剤(ガストログラフィン)を用いて経肛門的に100~120cm溶液柱の圧をかける。硫酸バリウムは重度の腹膜炎をきたすおそれがあるため使用しない。通常、透視下では横行結腸に蟹爪様の陰影欠損が認められ、先進部が回盲部に達すると停滞することが多い。

 3分間加圧しても整復できなければ、減圧後に再度加圧する。3回加圧を行っても整復できなければ、すぐに外科的治療に移行する。このようなRule of threes(3フィート・3分・3回)を遵守して加圧しても腸管穿孔のリスクがあるので、乳児の月齢や全身状態を考慮しながら治療を行う。

 十分な長さの回腸が造影されれば整復は成功とする。エコーや圧迫筒で回腸を精査し、回腸回腸型腸重積の残存や器質的病変がないことを確認のうえ、速やかに減圧して加圧を終える。入院して禁飲食、補液を行い、半日程度の経過観察後に哺乳や食事を開始する。症状が再燃しなければ再発のリスクを説明して退院とする。外来フォローアップは行っていない。

 非観血的整復術は、そのほか超音波ガイド下に生理食塩水を注入しての整復術や空気を用いた整復術が報告されている。透視下での造影剤整復と比較して画像が不鮮明ではあるが、被ばくのリスクがないことや腸管穿孔でも腹膜炎のダメージが少ないと考えられる。

【外科的治療】

 腸重積症の手術適応は、ショックが改善しない、腸管の壊死・穿孔が疑われる腹膜炎の所見がある、非観血的整復では整復不可、器質性病変がみられる場合に選択される。術式は開腹手術と腹腔鏡手術の2つがある。

 いずれも重積部を引っ張るのではなく、肛門側から腸管を押し出すように徐々に整復するHutchinson手技を基本として行う。開腹すると既に整復されていた症例が約10%にみられる。

 腹腔鏡下観血的整復術では、開腹手術と比較して術後の経口摂取開始が早いとされるが、イレウスが高度であると視野の確保が難しい。手術の際、回腸末端部を上行結腸に固定する方法、回腸結腸襞の切離、虫垂切除などが報告されているが、これらの付加手術が再発を予防する根拠はない。整復後の再発率は全体で約10%だが、観血的整復後の再発は1~4%と低率である。再発例では器質的病変の有無を重視した精査が必要である。

こちらの記事の監修医師

すずきこどもクリニック

鈴木 幹啓 先生

〇病院名 :すずきこどもクリニック
〇医師  :鈴木幹啓
〇アクセス:和歌山県新宮市下田2丁目3−2
〇診療科 :小児科
〇経歴:株式会社オンラインドクター.com代表取締役CEO
1975年三重県伊勢市生まれ
1995年自治医科大学入学(県からの奨学金制度)
2001年自治医科大学卒業

日本小児科学会認定小児科専門医
国家資格ケアマネジャー

三重県立総合医療センター、国立病院機構三重中央医療センター、国立病院機構三重病院、伊勢赤十字病院、紀南病院
平成22年5月、新宮市に「すずきこどもクリニック」を開院
【製薬会社社外講師・CM出演等】
グラクソスミスクライン社、JCRファーマ社、杏林製薬、明治製菓ファーマ、鳥居薬品

【メディア出演・TV監修】
日本テレビ、読売テレビ、東京MX、テレビ朝日(医療監修)「くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館」

【著書】
日本一忙しい小児科医が教える病気にならない子育て術(双葉社)
開業医を救うオンライン診療(幻冬舎)

2020 年 10 月株式会社オンラインドクター.com を設立。