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日本人の10人に1人が該当…日常生活で気づけない「骨粗鬆症」の危険性【医学部教授が解説】

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最終更新日:2022年1月22日

日本人の10人に1人が該当…日常生活で気づけない「骨粗鬆症」の危険性【医学部教授が解説】

こちらの記事の監修医師
杏林大学医学部付属病院 整形外科
森井 健司 教授 先生

※画像はイメージです/PIXTA

高齢化社会の日本において、約1000万人以上の患者がいるといわれている「骨粗鬆症」……進行すると骨折の危険性が高まり、最悪の場合は寝たきりの原因にもなると、杏林大学医学部教授の森井健司氏はいいます。骨粗鬆症の詳しい症状とその予防法についてみていきましょう。

高齢者だけじゃない…「骨粗鬆症」疾患の特徴

骨の強さが低下し、骨折が発生する危険性が高くなる疾患です。その最も大きな原因は加齢変化、とくに閉経後女性の女性ホルモン(エストロゲン)量の急激な減少です。したがって閉経後の女性は齢を重ねると骨粗鬆症が急速に進行します。

高齢化が進行している現代の日本では、約1000万人以上の骨粗鬆症の患者さんがいるといわれています。

また、多くの病気の治療に用いられるステロイドホルモン製剤も骨粗鬆症を起こすことが知られており、比較的若い人でも対応が必要です。

骨粗鬆症により「骨折しやすい骨」

骨粗鬆症自体では痛みなど具体的症状をきたすことはありません。しかし骨粗鬆症が進行すると、骨が弱くなることによって、通常骨折をおこさないわずかな外力で骨折が発生します。

骨粗鬆症により骨折しやすい骨は、橈骨遠位端(手首)、大腿骨頚部(太ももの骨のうち股関節に近い部分)、そして脊椎(せぼね)です。

手首を骨折した場合、手術や1か月程度のギブスでの固定が必要です。大腿骨に骨折が発生した場合、骨折が自然に治癒することはほとんどないことが知られていることに加え、長期間の寝たきりの原因になるため、大部分の症例で手術が必要となります。

手術は骨折の形態によって、金属で固定する方法や人工関節を挿入する方法が適宜選択されます。

脊椎の骨折は1か月程度で自然に固まることも多いのですが、骨折の治癒が遅れ強い痛みが長く続くことや、変形した骨が後ろにある脊髄を圧迫して麻痺やしびれの原因となることがあり、こうした場合は手術が必要です。

また脊椎の骨折は痛みを伴わずにいつのまにか発生していることもあり、こうした骨折はたまたま撮影したX線検査などで発見されます。

いったん骨折が発生すると、仮に骨折が完全に治癒したとしても、なんらかの不自由さを残すことも少なくなく、最悪の場合は寝たきりになることもあります。

骨粗鬆症は普段の「ちょっとした工夫」で予防できる

ふだんの生活のちょっとした工夫で骨粗鬆症の進行に対する予防が可能です。例えば、骨の質を良好な状態に維持する成分であるカルシウム、ビタミンD、ビタミンKなどの摂取は、すぐにできる予防といえるでしょう。

こうした成分を多く含む乳製品、魚、納豆や海草類を意識的に食事に取り入れてみましょう。

また骨粗鬆症が発生しやすい高齢の方にとって、家の外での適度な運動習慣は、筋力やバランス感覚を維持し、転倒予防となることに加え、日光にあたることによるビタミンDの活性化も期待できます。ぜひ習慣づけるとよいでしょう。

骨折する前に「骨の状態」を調べてみる

骨粗鬆症は骨折が発生するまで症状が出ないため、閉経後女性やステロイドホルモンを使用している場合など骨粗鬆症になりやすいとされている人は、機会を設けて骨の状態を調べることが必要です。

一般的なX線撮影でも骨の状態を観察し骨粗鬆症があるかどうか大まかに判定することはできますが、薬物治療が必要であるかの判断には、専用の機械で骨密度(骨の量や成分)を測定することが必要です。

これに加えて、一度骨粗鬆症による骨折を経験した場合、他の部位に骨折が発生する危険性が高いことが疫学的に指摘されているため、骨粗鬆症による既存骨折を持つ方も薬物治療の対象となります。痛みを伴わずに発生した脊椎の骨折の有無をX線検査で調べます。

薬物として今日多く用いられているものは、骨の形成を促進する活性型ビタミンD誘導体や副甲状腺ホルモン、骨の吸収を抑制するビスフォスフォネートと呼ばれる物質や抗RANKL抗体などがあり、骨粗鬆症の重症度などに応じて適宜選択されます。

治療効果を判定するため定期的に骨密度を測定し、改善が不十分である場合はより効果的な薬物に変更します。

骨粗鬆症の予防が「豊かな老後の生活」につながる

皆さんは健康寿命という言葉をご存知でしょうか?

健康寿命とは人間が齢を重ねても身体機能が低下せず、元気で活動できる期間を指します。

日本人の寿命は2020年過去最高を記録しましたが、それに伴って健康寿命が延びない場合、快適な老後をすごすことができないばかりか、介護の需要や社会保障費用の増大につながります。現在、平均寿命と健康寿命の差は約10年といわれており、健康寿命の延伸は日本社会の大きな課題です。

高齢者が要支援・要介護と判定される場合、その原因疾患の4分の1は運動器疾患であり、骨粗鬆症をはじめとした運動器疾患は健康寿命に大きく影響していることがうかがえます。

運動器に障害がある場合、長生きしてもやりたいことが好きにできなくなったり、寝たきりで過ごす時間が長くなったりするため、幸せな老後を過ごすことができません。

重大な運動器障害にもつながる骨粗鬆症を予防し治療することは、豊かな老後の生活を送るためにとても大切なことなのです。

閉経後の女性やステロイドホルモンを内服したことがある人など、骨粗鬆症となりやすい人は、骨折が発生する前の段階で、一度専門のクリニックで相談してみることをお勧めします。

こちらの記事の監修医師

杏林大学医学部付属病院 整形外科

森井 健司 教授 先生

1991年 慶應義塾大学医学部卒 
1998年 日本整形外科学会専門医 
2001年 米国マサチューセッツ総合病院、ハーバード医学校 整形外科訪問研究員 
2004年 慶應義塾大学整形外科助手
2006年 杏林大学整形外科講師
慶應義塾大学整形外科講師(非常勤)
2010年 杏林大学整形外科准教授
2018年 現職