最終更新日:2022年10月2日
にゅうようじとつぜんししょうこうぐん乳幼児突然死症候群(SIDS)

こちらの記事の監修医師
小児科医・新生児科医
今西 洋介
概要
乳幼児突然死症候群(Sudden Infant Death Syndrome以下SIDSと略します)は、生後2週間から1歳までの間に突然で前兆がなく死亡してしまう症候群のことです。SIDSはまれにしか見られませんが、乳児の死亡原因の第3位をしめ、頻度の高いものです。SIDSの原因は未だはっきりしていませんが、いろいろ有力な原因説が唱えられています。危険因子として、うつぶせ寝、添い寝、家族の喫煙、暖かすぎる、あるいは寒すぎる周辺環境などがあります。SIDSが疑われる場合は、遺体を解剖して死因を診断します。SIDSの予防のために、仰向けで寝かせる、母親は禁煙する、母乳哺育するなどが重要です。
原因
SIDSの原因は未だはっきりしていませんが、いろいろ有力な原因説が唱えられています。SIDSはうつぶせ寝をしているときに起こりやすいと言われますが、うつぶせ寝の方が熟睡できるため、うつぶせ寝が好きな子どももいます。通常は、うつぶせていて鼻や口がふさがり、息苦しくなったら自然に頭を動かして窒息しないようにするものです。ところが、脳幹部に異常があって息苦しさを感じにくい子どもがいて、呼吸ができないままに眠り続けて、SIDSを起こしてしまうことがあります。ただし、脳幹部に異常がある子どもが全てSIDSになるわけではなく、次に示すような危険因子が重なって、はじめてSIDSが発症するようです。SIDSを引き起こす危険因子として、うつぶせ寝、柔かい寝具、ウォーターベッドのマットレス、古いベビーベッド、添い寝、家族の喫煙、暖かすぎる、あるいは寒すぎる周辺環境、発育不全、低出生、母親が20歳未満、おしゃぶりを使わないことなどが報告されています。また、SIDSは生後3カ月前後に多い病気ですが、これには次のような原因が考えられています。赤ちゃんが生まれたばかりのころは、母親から胎内で受け取った感染への抵抗力がありますが、生後3カ月くらいで、それを使い果たしてしまい、風邪などもひきやすくなる時期です。また、この時期には、脳や心臓の働きも不安定となってきます。こういった脳幹部の異常、危険因子、抵抗力や体の不安定さが重なり合い、SIDSを起こしてしまうと考えられています。
症状
乳幼児突然死症候群は、生後2週間から1歳までの間に前兆がなく死亡してしまいます。発症の一番多い時期は生後2∼4カ月であり、ほぼ全例が眠っているときに起こします。
検査・診断
原因が不明の乳幼児の突然死が見られた場合、異常死の疑いとして警察に届けられ、検死が行われます。その際には、厚生労働省SIDS研究班が発行している「乳幼児突然死症候群(SIDS)診断のための問診・チェックリスト」を用いられます。検死の結果、異常死と判断された場合は法医解剖が、病死と判断された場合は病理解剖が必要です。いずれにしても、遺体を解剖して死因を診断するということです。SIDSは、突然死の原因となる他の病気、例えば頭蓋内出血、髄膜炎、心筋炎などを除外することで診断します。また、窒息、虐待による死亡を慎重に除外することも重要です。
治療
発症時には死亡しており、治療法はありません。
予防/治療後の注意
SIDSの予防のためには、危険因子を取り除くために下記のような注意が必要です。乳児は仰向けで寝かせる、横向け寝やもたれかけ寝は不安定なので避ける、乳児の暖めすぎや着衣・毛布でのくるみすぎを避ける、羽毛の掛布団・枕・ぬいぐるみをベビーベッドに入れない、添い寝をしないなどが望まれます。おしゃぶりは気道閉そくの予防になるため、使った方が良いでしょう。頭がへん平になるのを防ぐためには、監視下でうつぶせにしたり、週替わりで、寝る時に頭の向きを変えたりするだけでも効果があります。チャイルドシートや抱っこひもを使用した状態で長時間は寝かせない方が良いでしょう。母親は妊娠中に禁煙し、乳児をたばこの煙に暴露させないようにしてください。また、感染予防のために母乳哺育がおすすめです。ちなみにSIDSを予防すると宣伝されている家庭用モニターは役に立ちません。SIDSが発症した後は、特別に訓練された看護師あるいは同様の経験をした人が、SIDSで子を失った親や家族を訪問し、罪悪感を抱かせないようにし、悲しみを乗りこえるように支援するべきです。

こちらの記事の監修医師
小児科医・新生児科医
今西 洋介
【経歴】
2006年富山大学医学部卒業
石川県立中央病院 新生児科勤務
りんくう総合医療センター 新生児科勤務
大阪府医療センター 新生児科勤務
講談社モーニング連載漫画「コウノドリ」のドラマの医療監修を務める。
2022年4月ヘルスプロモーション会社を起業。
現在は一般社団法人チャイルドリテラシー協会の代表理事も務める。
【資格】
日本小児科学会専門医
日本周産期新生児学会新生児専門医