目次
導入事例(2020年9月時点)から見るオンライン診療のメリット
導入事例(2020年9月時点)から見るオンライン診療のデメリット
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オンライン診療とは?
2020年4月ごろから新型コロナウイルスの拡大とともに、オンライン診療が注目され始めました。外出しにくくなり、病院にも行きづらくなったとき、とても便利なのがオンライン診療です。
ここでは、オンライン診療について概要だけではなく、実際にオンライン診療を取り入れているクリニックの例も紹介します。
この記事を読めば、オンライン診療への理解が深まります。スマートフォンアプリから簡単にアクセスできるオンライン診療は、今後なくてはならないサービスになるでしょう。
オンライン診療の概要
オンライン診療という言葉を耳にしたのはここ数年だという方も多いでしょう。しかし、実はオンライン診療という概念自体は1990年代からありました。
オンライン診療の歴史やサービスについて見ていきます。
オンライン診療の歴史
1997年に離島やへき地での遠隔診療を認める厚生省健康政策局長通知が出されたのがきっかけです。ただ、当時は情報機器の発達が今ほど優れてはいなかったこと、資金的・人的資源の不足、社会的に理解してもらいにくい点などから、遠隔診療への取組みは継続できず、ストップしてしまいます。
やがて、2010年代後半に入り、オンラインでのやりとりが社会的に浸透してきた背景もあり、オンライン診療が再び注目されるようになりました。
オンライン診療とは?
スマートフォン・パソコン・タブレットなどのビデオ通話やチャットを利用して、医師による診療・薬の処方を受けることができるサービスです。
ただし、原則として、初診は病院で対面診察を受ける必要があります。(現在はコロナ禍で時限的緩和措置が取られており、初診対面診察が不要な場合もあります。)
厚生労働省が2018年3月に発表した「オンライン診療の適切な実施に関する指針」によると、オンライン診療は『遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び 診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為』と定義されています。
オンライン診療の保険適用と自費
オンライン診療においても健康保険が適用される疾患があります。ただし、対面診療に比べると数は少ないのが現状です。保険が適用されなかった疾患については、保険適用外(自由診療)としてオンライン診療を行っている医療機関もあります。
また、オンライン診療においては対面診療では算定されなかった診療料が設定されています。オンライン診療料とオンライン医学管理料です。
オンライン診療料(71点)
オンライン診療時に算定ができますが、月1回のみときめられています。
月1回必ず発生するわけではなく、再診料をとった月は算定できません。
オンライン医学管理料(100点)
オンライン診療を受信した後、対面診療を行った月に算定できます。
※前回の対面診療から期間が2ヶ月以内の場合のみ算定可能
医療機関側は、上記のオンライン診療料を保険診療で算定する際は制約があります。
<オンライン診療料を算定できる疾患>
・循環器・・・高血圧性疾患/不整脈/心不全
・消化器・・・胃潰瘍/十二指腸潰瘍/胃炎及び十二指腸炎
・内分泌・代謝・・・糖尿病/脂質異常症/甲状腺障害
<オンライン医学管理料の対象となるもの>
・特定疾患療養管理料
・小児科療養指導料
・てんかん指導料
・難病外来指導管理料
・糖尿病透析予防指導管理料
・地域包括診療料
・認知症地域包括診療料
・生活習慣病管理料
・在宅時医学総合管理料
・精神科在宅患者支援管理料
※算定対象となる患者のみ算定できます。
オンライン診療初診恒久化への経緯
オンライン診療を行う場合は原則として、初診は病院で対面診察を受ける必要があります。しかし、2020年4月大きな変化が起こりました。新型コロナウイルスの感染拡大で、時限的ではあるものの、初診対面診察なしでオンライン診察ができるケースが出てきました。
2020年4月以降はオンライン診療の重要性が注目され、2021年にはオンライン診療や服薬指導などを恒久化する動きが出てきました。厚生労働省は2021年秋にも指針改定をする方針だとニュースで報じられていました。
『かかりつけ医がいること』などの条件はつきますが、患者さんがオンライン診療を初診から受けられるようになれば、オンライン診療はさらに普及していくでしょう。
オンライン診療の利用手順
オンライン診療を利用するためにはどのような手順が必要なのでしょうか。医療機関側と患者側、それぞれの一般的な手順と事前準備について説明します。
医療機関側の利用手順と準備
<利用手順>
1.オンライン診療サービスを行っている会社に登録
2.患者さんへオンライン診療開始のお知らせ
3.予約の受付
4.予約時間に患者さんを呼び出す(スマートフォンやPCなど)
5.診察終了後、会計
6.処方箋や薬を郵送
※オンライン診療サービスは各社、料金プランや利用手順が異ります。
<事前準備>
・スマートフォン、パソコン、タブレットなどの通信機器
・ウェブカメラやマイク(必要なパソコンやタブレットの場合)
・快適なインターネット環境
・オンライン診療サービス(アプリケーション)への登録
患者側の利用手順と準備
<利用手順>
1.オンライン診療対応の医療機関を探す
2.オンライン診療サービスのスマートフォンアプリをダウンロード
3.オンライン診察の予約
4.予約時間にビデオチャットにて診察開始
5.クレジットカードにて会計(決済)
6.処方箋や薬がある場合は後日郵送で受け取り
<事前準備>
・スマートフォン、パソコン、タブレットなどの通信機器
・ウェブカメラやマイク(必要なパソコンやタブレットの場合)
・快適なインターネット環境
・オンライン診療サービス(アプリケーション)への登録
・保険証
・本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
・クレジットカード
オンライン診療の導入事例(2020年9月時点)
実際にオンライン診療を導入した医療機関はどのようなきっかけで導入し、使用してみてどんなことを感じたか、など医療機関へのインタビューからいくつかご紹介します。
ライフサポートクリニック広島(新宅院長)
きっかけはアメリカで臨床心理の医師として働いているお姉さんの患者さんの紹介でした。その患者さんは、アメリカ在住の日本人で、日本に帰国することになったため、日本で精神科のクリニックを探していたそうです。
新宅院長のクリニックは、その患者さんのお住まいからは遠く、新幹線で通院してもらっていました。アメリカではすでにビデオチャットでの診療が行われていましたが、その頃の日本では通院が当たり前で導入ができませんでした。
その後も遠方から通われている方、部活などがあって診療時間になかなか間に合わない中高生、容態が悪くて家から出られない方、引越しで通えなくなってしまった方などのために2018年よりオンライン診療を導入しました。精神科の受診の場合、相性のいい先生と出会えなかったなか、ようやく馴れてきて落ち着いて話せるようになった患者さんは他のクリニックで移るのがすごく不安だと話されていました。引き続きオンライン診療が受けられるのは安心だという声もありました。
オンライン診療の場合、お互いの時間を有効に使えるメリットがあります。診察時間が多少ずれることがあっても、事前にお伝えしていれば家の中などで用事を済ませてもらうことができ、患者さんの時間があまり無駄になりません。
現在は、オンライン診療で通院精神療法が保険適用されていません。カウンセリングやセラピーはオンライン診療でもできるため、患者さんの負担を考えると保険適用されることを期待しています。
九段下駅前ココクリニック(石井院長)
オンライン診療導入のきっかけは働き盛り世代の方々に「通いやすさ」を提供したいということでした。働き盛り世代の方々は、通院の不便さや時間のなさがネックとなり、病気を完治させないまま、治療を脱落してしまうケースが多いです。
石井院長は、健康診断後の受診率の低さに注目し、二次検診の患者さんへのオンライン診断を導入することを決めました。一般企業と契約を結び、従業員の方の中で健康診断を受けて結果に問題があった方は当院を受診していただき、再検査や治療を行うという流れです。検査結果をデータ化して、患者さんと共有できるので、結果説明はできる範囲でオンライン診療を取り入れています。
現状、医療機関側からすると、オンライン診療は算定要件の厳しさや点数の低さなどが問題になっていますが、オンライン診療で収益性を担保するためにはどうしたらいいかという考え方より、患者さんに対してどれだけ親切かつ便利なものをご提供できるかという視点で、今後のあり方を見出すべきだと思います。
医療法人瑞枝会クリニック(小椋院長)
当院はオンライン診療の導入前から、うつ病に対する磁気刺激療法(TMS) を行っており、全国開したいと考えていました。自費診療でTMSを行うために遠方からマンスリーマンションを借りてクリニックに通うケースがあり、初診カウンセリングはオンラインでお話を伺い、今後の治療について話す機会としました。導入のきっかけは「自費診療の集患」でした。
しかし、実際には保険診療で既にクリニックに通っている患者さんの需要が多く、継続して治療ができるメリットがありました。うつ病の場合、発症した地域から療養のために実家に戻るケースがあります。一番しんどい時期を知っている先生(発症した際に通っていた医療機関)から療養期間に別の先生(実家のある地元の医療機関)にバトンタッチしたときに、治療がうまくいく場合もありますが、相性の問題や治療の変化で長続きしないこともあります。療養の間、滞在先が変わるケースでも、同じ医師が継続して診療ができるということが、オンライン診療の強みだと思います。
現状のオンライン診療の算定要件やガイドラインには現場の感覚や運用とは少しズレを感じます。対面診療は原則としつつ、オンライン診療を対面診療よりも劣位なものとしてではなく、新しい選択肢の一つとして患者さんに提示できるよう、今後も育てていければと思っています。