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アメリカのオンライン診療を考察してみた。

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2021年10月7日

GAFAを生んだ国、アメリカ合衆国(以下アメリカ)。

オンライン診療についても、当然早く、広くビジネス化が進んでいることは言うまでもありません。

多くの国がアメリカを手本・模範として自国のオンライン医療に取組んでいます。

しかし、オンライン医療が発展する国々を見てみると、発展させざるを得ない事情がそれぞれにあります。

アメリカのオンライン医療を知ることで、日本はどうあるべきかを考えていきます。

目 次

1.良いとは言えないまでも、それが当り前だったアメリカの医療事情

2.どうしてそんなに高いのか

3.国民に支持されたオンライン診療

4.オンライン医療拡大の取組

5.コロナによる追風

6.Teladoc Health(テラドック・ヘルス)

7.アメリカのオンライン医療から見えること

1.良いとは言えないまでも、それが当り前だったアメリカの医療事情

●アメリカの医療制度

ご存知の方も多いと思いますが、アメリカと日本との大きな違いは、日本のようにアメリカでは国民皆保険制度ではありません。保険加入の義務もありません。国民一人一人が、民間の医療保険に入って医療を受けています。自分の健康については、あくまでも自己責任なので、個人で民間の医療保険に加入することを決めなければなりません。自己責任ですから、入らなくてもよいのです。

加入した保険会社によって、保険でカバーできる医療範囲も異なります。ですから、自分で決めなければならない責任が求められることになります。

日本と違い、「自分の健康は自分で守らないといけない国」なのです。ですから、便利性よりも信頼性が重視されます。よって、自分の責任において信頼できる医師や薬剤師を求めることになるのです。

●病気には覚悟が要る

日本と比べて、アメリカは「面倒だな」と思われたと思います。正直面倒です。ですから、以下のような面倒なことが発生します。

・病気になった場合は、基本的に主治医と保険会社が認めた病院に掛かることしか出来ない。

(何処でも受診できるわけではない)

・個人で保険会社と契約し、かかりつけ医(主治医)を設定しなければならない。

・かかりつけ医は保険会社が登録しているリストから選ばなければならない。

・一般の病院とは別に、眼科と歯科には別の保険を必要とする。

・医療費は日本よりもかなり高く救急車も有料。

・学校入学時の書類には主治医を記載する。

その他諸々あるようです。

●アメリカの保険制度

では、アメリカ人はどのように保険に加入しているのか。 一般的なアメリカ人の保険加入方法は、主に以下の方法となります。

・勤務先の会社が提携している保険会社に加入する。

・勤務先の会社が毎月の給料から会社が定めた金額を差し引いて、いざという時は会社が負担する。

・個人で民間の保険会社を利用する。

一般的に加入する民間の保険料もかなりの高額です。そのため、持病を持っている人は保険に入れない場合があったり、一般よりも高い額の保険料を課される場合があります。

実際には、アメリカ国民の約6人に1人しか保険に加入しておらず、病気になっても「治療を受けられない」という人が多くいるのが現実です。

つくづく日本の国民皆保険制度は有難いと痛感します。

●オバマケアの登場

日本のような国民皆保険制度がないアメリカは、低所得者などが十分な医療を受けられない、病気になっても治療を受けられないという不満は当然多くあります。

このような問題があり、前大統領のオバマ氏が改革に乗り出しました。それが公約の一つであった「オバマケア」です。 オバマケアとは「医療保険制度の改革」のことです。2010年に成立した法律、ACA(Affordable Care Act)を、通称「オバマケア」と呼んでいます。

オバマケアを簡単に説明すると、

・低所得者の方も、保険料の安い公的医療保険に加入できるようにする。

・保険会社は、どんな人にも(持病や重度の病気を持つ人も)差別なく保険の加入を認める。

・但し、保険に入らなかった場合は、確定申告の時に罰金を科す。

というものです。

これは日本の国民健康保険とは違い、あくまでも自分の意思での加入ということになっています。

しかし、このオバマケアには国家予算として、1.1兆ドル(約120兆円)の予算を必要とするとして、共和党を中心とした反対意見も多く、トランプ政権になって見直しが行われました。その後民主党に政権が移り、状況は変わりつつあります。賛同するアメリカ国民が多いことは事実です。

アメリカの医療はコストが非常に高くて、国土が広いので、アクセスも悪いことが問題になっていました。それが当り前になっているのです。

2.どうしてそんなに高いのか

アメリカの医療費は高いですが、医療費を高くするのにも理由があります。その辺の事情を少し見てみましょう。

●高額な医療費

オバマケアの登場には、アメリカの法外な医療費が大きな理由です。救急車を呼んで病院に運ばれるだけで数十万掛ると言われています。

民間の保険に加入していても、高額な医療費を払わされます。その最大の理由は、各医療機関が値段設定を自由にできるからです。ここが日本とは大きく異なります。

●アメリカの医師はかなり高給

医療ビジネスによって、アメリカの医師の給料は他の国に比べても圧倒的に高いのです。

先進国の医師の平均年収は大体900万〜1600万円くらいなのですが、アメリカの医師になると約2200万円以上になります。これは先進国の中で最も高く、日本の医師の倍以上と言われています。

日本は病気の種類や治療による料金を国が定めていますが、アメリカにはそのような固定価格はありません。ですから、病院側が自由に値段を設定しているのです。つまり個々の病院、医療が「ビジネス化」しているのです。

●医療・教育のビジネス化

アメリカの大学の学費は世界トップクラスの高さです。

これは教育機関も医療機関と同じように「ビジネス化」していることが主な要因です。このビジネス化が値段設定における原点と言っても過言ではありません。

アメリカの大学の医学部の学費は超高額です。借金をしてでも教育を受ける人は珍しくありません。ですからその後のこともあり、必然的に高い給料ではないと、仕事としてやっていけないという事情があるのです。

●研究には莫大に投資する

アメリカの医療技術は世界でもトップクラスです。それを支えているのは、医療機関による研究投資が莫大な金額を投じているからです。言うまでもなく、その負担はかなりのものです。

新たな治療法、技術、医薬品の開発など、研究費にかける費用はとても大きく、その負担が個人の高い医療費に繋がっていると言ってもよいでしょう。つまり、医療開発費のツケが一般医療費に回って来ていると言っても過言ではないのです。

●医療訴訟問題が怖い

アメリカのニュースや情報、あるいは映画やドラマなどで裁判のシーンがよく見られます、また、訴訟が起きたという情報をよく耳にすると思います。マイケル・ジャクソンが亡くなった時にも、いろいろと見受けられました。ご存知の通り、アメリカは訴訟社会なのです。

日本とは比べ物にならないくらい、アメリカでは頻繁に人を訴えます。中には、「えっ、こんなことで」といようなものもあります。当然の如く医療の現場でも、このようなことが頻繁に起こり、命に関わることですから、訴訟になった時に発生する金額も大変なものです。

万が一の医療ミスなどに備えて、「弁護士費用」を考慮した高い医療費を取っていると言っても過言ではありません。医師側は訴訟が怖いのです。ですから、過剰なサービスや治療を施して、訴訟の発生を避けていることも珍しくないのです。

訴訟を起こされて廃業した医師も少なくありません。医師の方々も必死なのです。

そして、アメリカでは保険は必須です。万が一に備えておくことは大切です。何か有った場合は、考えられない金額を請求されることが珍しくありません。

ビジネスは勿論、旅行に行く際も保険に入っておくことをお勧めします。

3.国民に支持されたオンライン診療

アメリカでは遠隔診療の導入が世界的にも早く、爆発的に拡大しました。2015年の時点では、すでに約1500万人の患者が診療を受けていました。

その後多くの国が後に続けと、オンライン診療に取組んでいます(日本が遅れていることは周知のとおりです)。

●テレメディシン(Telemedicine)の登場

アメリカで診療を受ける事は簡単ではありません。そのようなこともあって、スマートフォンやコンピューターを利用して、何処からでもインターネット経由で行う「Telemedicine(オンライン診療)」が注目されることになります。

それまでオンライン診療は、「医療機関が近くに存在しない地域に住む人達のためのもの」でした。さらに、オンライン受診の信頼性を疑う人が多かったのです。

しかし、風邪やインフルエンザで発熱しても、ベッドから出ることなく、24時間、土日でもすぐに医師に掛かれることから、オンライン診療は好感を持たれます。そのことが知れ渡ると、オンライン診療は急速に身近なものになってゆくことになるのです。

「これほど楽なことはない!!」、ということで、オンライン診療は話題となり、広くアメリカ国民から受け入れられることになります。

この状況を黙って見ているわけにはゆかなくなります。そこは自由の国アメリカです。

高騰するばかりの医療費の影響で、医療機関を気軽に受診できないという理由から、急速に遠隔診療の法整備が進められてゆきました。当然のようにスマートフォンを利用した遠隔診療が、安価で24時間受診できるサービスの登場など多くの面で進展がありました。

●顧客獲得合戦開始

多くの州で、民間医療保険会社に対し、オンライン診療を保険適用とするよう定めることとなり、多くの医療保険会社がオンライン診療サービスと契約することになります。そして全米に広がるのです。

同時にオンライン診療サービスは、「医療保険に加入していなくても利用できる体制」を備えるところも登場してきたのです。1回の受診料は高いのですが、民間医療保険の内容が契約料金次第のアメリカでは、好感が持たれました。

そうなると医療保険会社は、オンライン診療サービスとの契約が加速します。その結果、保険会社のサイトには、オンライン診療サービスが溢れるようなったのです。

そして、オンライン診療のサービスは加速します。

医療保険プランでの値段設定や待ち時間、薬の処方などで、サービスの向上と競争がどんどんと激しくなってゆくことになります。

●もっと幅広く使えるオンライン診療に

さらにアメリカのオンライン診療では、風邪などの軽い症状や糖尿病、高血圧などの慢性疾患の管理、禁煙やダイエットなどにも対応が広がってゆきます。

精神科のカウンセリング、婦人科、泌尿器科など幅広く対応し、自宅や個人のプライベートな場所からスマートフォンで、気軽に医師に相談できるようになりました。

米国の場合、かかりつけの家族向けの医師、専門医、救急対応医、検査施設など、役割が明確に分かれていますので、患者は誰の指示に従うのかで、迷うことも珍しくありません。

そんな状況ですから、オンライン診療によって、患者が使う医療サービスの選択肢が生まれたことは、国民にとっても都合が良かったのです。

●オンライン服薬指導も当然のことに

そうなると病院だけではなく、薬局も動き出します。アメリカでは薬局も、患者さんが契約している薬局があります。その薬局で薬を受け取るのが一般的です。

オンライン診療の普及により、オンラインでの受診の際に、自宅の近くの薬局を医師に伝えておくと、医師は処方箋をオンラインで、伝えられた薬局に電子処方箋を送ります。そして、自宅近くの薬局で薬を購入することになります。自宅まで送ってくれるシステムも当然あります

●アメリカの場合で言えること

アメリカは民間病院が多く、激しい競争原理が働くため、病院の経営レベルが高いのです。ですから、赤字の病院はほとんどありません。そのため、オンライン診療を整備・着手することへの取組がスムーズに行われた病院も珍しいことではなかったのかもしれません。

ここまでで、大体お分かりいただけたと思いますが、要するにアメリカでは、医療を受けられる環境、高い医療費、保険の都合など、面倒なことが多いのです。特に日本と比較するとそう見えます。しかし、これが当り前として長い間続いていたことを考えると、オバマケアやオンライン診療は革新的なことでもあるのです。

それは、医療に対する国民の不満から生まれたものとも言えるでしょう。

日本ではこのような不満を、あまり聞くことはありません。他の国も医療に対する不満が日本よりも強かったことが、オンライン診療の進展を後押ししたのかもしれません。

しかし、日本について言えば、いつまでも、「今のままでいい」という考え方では良くないのです。

4.オンライン医療拡大の取組

アメリカではオンライン診療の導入も早かったのですが、新型コロナウイルス流行以前は、目覚ましく普及したとは言えませんでした。しかし、様々な取組によって着実に広がりを増してゆきます。

●コロナ以前のオンライン診療

オンライン診療が導入・実施され、広く知られるようにはなりましたが、その実績は決して高い数字と言えるものではありませんでした。

特にクリニックやかかりつけ医のオンライン診療は遅く、またオンライン診療が提供されていることを認知していた人も多くはなかったようです。

しかし、オンライン診療は、誰でも出来る環境(パソコンやスマートフォンがあればいい)にあるので、利用者が徐々に増えてゆき、関連する機関や保険会社などが対応せざるを得ない状況を作り出されたことによって、需要と供給の対応を加速させることになります。

●医療保険での推進

アメリカでは企業の雇用主が、従業員向けに提供する医療保険にて、被保険者である従業員が利用しやすく、医療費を削減できる方法として、オンライン診療の提供を拡大しました。

2017年以前から、企業の保険にはオンライン診療サービスへの対応が含まれており、企業全体の半数以上が実施していました。今では企業の保険にオンライン診療サービスが含まれることは、当り前になっています。

●日々伸び続けるオンライン診療

現在、アメリカ国内では1日平均およそ10万回以上のオンライン診療が実施されていると言われています。

アメリカ全体でのオンライン診療は2020年で10億回以上に達したとも言われています。これは、コロナの影響によることも大きいことは間違いありません。

これだけのニーズがあると、様々なサービス、プラットフォーマーの拡大が発生することは言うまでもありません。それは競争を加速させ、価格とサービスの向上を招くことに繋がります。国民にとっても好都合です。

5.コロナによる追風

新型コロナウイルスによる影響で、アメリカ政府は対応に迫らけれます。そして、次々と施策を打ち出すことで、オンライン診療は拡大してゆくことになります。

●規制緩和

新型コロナウイルスの感染拡大により、アメリカでは83億ドルのコロナ対策費として計上されました。

その内5億ドルが、高齢者の感染リスクを考慮した、高齢者向けオンライン診療サービスの提供のために割り当てられました。

そして2020年3月、トランプ政権は65歳以上の高齢者を対象とした公的医療保険制度であるMedicare(メディケア) の加入者に、オンライン診療の利用を期間限定で大幅に規制緩和します。
この規制緩和により、全ての地域の患者は自宅からオンライン受診ができるようになります。この規制緩和は、コロナウイルス以外の疾患をもつ高齢者の院内感染リスク回避を目的としたものでした。

そして、メディケアで特定されていたオンライン診療における適用により、サイトの制限を解除することが可能となりました。その結果、数千万人のメディケア加入者を中心とするオンライン診療への拡張整備に繋がります。

●企業の利用

さらに米国保健福祉省と公民権局は、HIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act : 医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)の違反における医療機関や医療従事者に対する罰則規定を一時的に廃止しました。

これにより、アメリカの医師はApple、FaceTime、Facebook Messenger、Googleハングアウトビデオ、Skypeなどの無料及び低コストのビデオ通話ツールを利用したコロナ関連のオンライン診療が提供できるようになります。ここが大きなポイントです。

ここで重要な点は、民間の通信手段による診療提供を解放したことで、オンライン診療の門戸を広げたことです。緊急性を有する事態に法改正に一早く対応し、国民の安全性を優先した決断は見倣うべきものがあります。

●オンライン診療が焦点とし法改正

アメリカのオンライン診療は政府も保険会社も大企業も積極的に後押します。コロナによる社会的要請とも言える追い風を受けたことは、規制緩和に繋がり、オンライン診療の普及は加速します。それは合衆国政府だけでなく、州政府もオンライン診療の拡充を積極的に促進してゆきます。

さらに、民間保険会社によるオンライン診療の利用促進の動きも進んでゆくことになります。

民間の大手健康保険会社を中心として、コロナウイルスへの対応サービスが実施され、多くの民間保険会社が追従します。そして、オンライン診療の利用は急速に増加したのです。

●別の問題が発生する

しかし、時を同じくして、コロナの感染拡大による医療現場への新たな影響が発生しました。それは、プライマリ・ケアクリニック(幅広い相談を受ける総合的医療)を受診する患者が激減してしまったことです。

その結果、患者が激減したことが原因となり、プライマリ・ケアの医療機関の経営状況が急激に悪化します。そして、多くのプライマリ・ケアの担当医師が解雇されるという社会的問題も発生することになったのです。

プライマリ・ケアは、医療介入が必要となる慢性疾患の患者に対応する重要な役割を担っています。本来ならば、オンライン診療を必要とする大事な医療の内の1つと言えるものです。

コロナによって普及拡大したオンライン診療より引き起こされてしまったこの問題は、残念としか言いようがありません。

●流行する病気で変化を求められてきた歴史

コロナの影響で、オンライン診療は普及拡大しました。コロナ終息後も、オンライン診療の便利さに慣れてしまい、保険や医療機関の対応が徹底された現在、オンライン診療が「普通のこと」になってゆくのではないかと思います。アメリカ以外のオンライン診療が進む国でも同様です。

世界的に流行した病気と闘った歴史が人類にはあります。その都度克服し、医療体制や環境も変化してゆきました。

コロナ騒ぎを鎮める重要性は言うまでもありませんが、患者に寄り添う医療と健康を充実させることが、オンライン診療本来の目的でなければなりません。

コロナによって、オンライン診療に関心が無かった人達が、オンライン診療の便利さを見直したことで、普及が加速したことは事実です。逆にコロナ騒ぎが無ければ普及しなかったのであれば、アメリカの医療事情は鎖国状態のままだったのかと考えると、それも空しいことのように思えます。

6.Teladoc Health(テラドック・ヘルス)

やっぱりアメリカという言葉が聞こえてきそうな事が起こる国、それがアメリカです。

オンライン診療の世界にも、「テラドック・ヘルス」という怪物が生まれました。この怪物について、少し知っておきましょう(怪物という言い方はあまり良くないですね)。

アメリカの事情に詳しい人ならばご存知だと思いますが、日本では一般的には、あまり知られていないと思います。

●オンライン診療のアマゾン

テラドック・ヘルス社(Teladoc Health)は、米国No.1シェアのオンライン診療プラットフォーマーです。

2002年にテキサス州で創業しました。革新的なビジネスモデルから「オンライン診療のアマゾン」と呼ばれています。アメリカにおける医療費削減の流れを受け、低コストの診療サービスとして成長を続けています。

テラドック・ヘルス社(以下:テラドック)は、オンライン診療サービスの最大手です。多くのアメリカ人のスマートフォンやパソコンにダウンロードされていると言っても過言ではないでしょう。

●充実したサービスによる対応

テラドックのシステムに個人情報や病歴などの情報を入力し、診療が必要ならばアプリで医師とマッチングをした後、ビデオチャット等で診療を受けることができます。

そのサービスは、緊急性を伴わない遠隔での初診で事足りそうな症状であれば、受診申込から登録医師との対面は10分程の待ち時間という短さを実現しています。

病院の診療予約の手間や待合室・診察室で待たされるストレスがなく、年中無休で1日24時間いつでも受診可能です。

サービス会員になると、ZOOMのようなビデオチャットのやり取りで診療をしてもらうことも可能で、問診や医薬品の処方、対面診療を受けられる医療機関や専門医への紹介、さらにオンラインでの心理カウンセリングなども行っています。

スマートフォンのアプリやパソコンなどを使い、自宅にいながらビデオチャットで医師の診療を受けることができる。料金も従来の対面診療よりも割安。利用者が拡大しないわけがありません。

オバマケアがクレネのシモンに例えられることはありませんが、テラドックのようなオンライン診療サービスの登場は、アメリカ国民にとって一種の救世主であるとも言えます。

そして、コロナによるオンライン診療の好影響を受け、テラドックの株価は、とんでもなく上昇することになります。アメリカンドリーム的現象に繋がりました。株価の上昇の規模からも、第2のテスラ株現象とまで言われています。

●テラドックの凄さ

テラドックは、オンライン診療サービスを提供するビジネスモデルとして誰もが認める企業です。現在は本社をニューヨークに置き、時価総額は約230億USドル(約2.4兆円)という巨大企業となりました。そしてオンライン医療業界では、全米で75%以上という圧倒的シェアを誇っています。

有料会員は数千万人(日々更新中)に昇り、グローバル展開として、世界175カ国以上の患者にサービスを提供する17のオフィスを有し、40以上の言語でケアを提供しています。アメリカ以外の国外市場でも伸びている状況です。

国際事業は、スペインのバルセロナに本社を置き、ヨーロッパ、南米、アジアをカバーする国々にサテライトオフィスを有しています。これらを拠点として、世界中の会員に24時間365日のグローバルサービスを提供することで、会員はどこの国にいても、テラドックの医師によるサポートを受けられます。

オンライン診療市場自体が、2020年の254億ドル(約2.8兆円)から2025年には556億ドル(約6.1兆円)に達すると予測されています。オンライン診療市場全体の規模拡大は、間違いなくテラドックの企業成長に繋がっている状態だと言えます。

●M&Aで市場・シェアの拡大を図る

テラドックはM&Aを積極的に行い、多くの企業買収を行っています。買収した企業の中には、慢性疾患関連の企業もあり、市場への新規参入と拡大の基盤を固めているのです。

積極的にM&Aを進めてゆくことで、診療領域とサービス市場を拡大しています。その結果ますます巨大になっています。それは一歩も二歩も先を行くことで、他の追従を寄せ付けないための手段と言ってよいでしょう。

●アマゾンの追従

後発の企業も多々ありますが、テラドックの長年のノウハウと蓄積、その規模に対抗することは簡単ではありません。ですから、テラドックの地位は簡単に揺らぎそうにありません。

ですが、この状況をAmazon(アマゾン) やGoogleが黙って見ている訳がありません。そこがアメリカらしいところです。

2020年にAmazonはアマゾン薬局を立ち上げました。これはプライム会員に処方箋を提供し、薬代を節約することができるサービスです。

そして、アマゾンは従業員向けの遠隔医療サービス「アマゾン・ケア」の試験運用を開始します。このサービスをアマゾンの従業員向けのものでしたが、一般向けに拡大してゆく計画に取組んでいます。

「アマゾン・ケア」は、スマートフォンの専用アプリやウェブサイトから、ビデオ通話やテキストで医師や看護師に病状を説明すると診断が受けられ、場合によっては直接看護師が自宅訪問もする仕組みになっています。

このアマゾンのサービスの内容は、テラドックのサービスと類似しています。それだけでは、テラドックに対抗することは難しいことは、アマゾンも承知しているでしょうから、今後の動きが注目されます。

●業界2位と手を組むGoogle

一方、Googleはオンライン医療業界2位のAmwell(アムウェル)へ1億ドルの投資を発表しました。同社の持つ人工知能や機械学習を利用して、待合、翻訳、支払い業務などを支援するサービスを提供することを検討しています。Googleもオンライン医療参入への意気込みが、強く感じられることは言うまでもありません。

●オンライン医療攻防

因みに、テラドックは赤字経営の為、当期純利益でマイナス計上されています。しかし、売上高は順調に増加しています。

赤字経営の理由として、企業買収を積極的に行っている事が主な原因です。しかし、そのお陰で、医療サービスの幅は拡大し続け、他社の追従が益々困難となる牙城を構築しているのです。売上高の増加理由が買収による相乗効果である為、まだまだ成長期の企業であると言えます。

AmazonやGoogleの参入により、オンライン医療のマーケット拡大、利益はさらに伸び続けるのか、あるいは淘汰されてしまうのか、今後のアメリカにおけるオンライン医療における攻防が注目されます。

オンライン診療が年間1000万回を超え、オンライン医療が普通になりつつある(既になっている?)アメリカらしい話題です。

「巨人テラドックに挑むIT巨人達の攻防」という言い方は、決して大袈裟なことではないと思います。

残念なことは、このようなニュースは日本でも知る事は出来ますが、あまり知られていないことも事実です。

日本には、このような話題もニュースもありません。これにつきまして、いろいろと思うところがあると思います。しかし、世界に取り残されないオンライン診療の進展を期待したいものです。

7, アメリカのオンライン医療から見えること

ここまで見てきて、アメリカのオンライン診療サービスについて、簡単にまとめてみたいと思います。

●国民共通の不満解消

アメリカのオンライン診療では、医者と患者をデジタルで効率よく結びつけることにより、料金を引き下げ、予約から診療を受けるまでの期間を短縮し、来院時の待合室での待ち時間の短縮を実現しました。

この実現には、多くのアメリカ国民に共通する従来の医療制度における不満を解消したことが、大きな理由と言えるでしょう。

さらに、それに伴う医療保険や政府の規制緩和による利用者の増加や、テラドックのような大手プラットフォーマーの出現によるサービス向上の競争が発生した事も、大きな要因と言えます。それは、コロナによって煽られたと言っても過言ではありません。

●リーダーシップの重要性

コロナの流行により、日本国内の企業は、リモートワークの導入を強いられることになりました。

この急務は、既存の日本企業に大きく影響し、現場のリーダーシップの対応も含め、日本企業の体質が露呈したのではないでしょうか。

アメリカの病院では、今回のコロナウイルス感染拡大により、オンライン診療体制を充実させ、現場の医師がそれを受け入れ、対応する大切さを自覚したことが大きかったと言えます。

それを実現するための設備を整え、医療現場の目的と優先事項を明確にしたリーダーシップがあったからこそ実現できたのです。

自宅で診療を受けることが可能なことは、育児に追われるママさんや身体に障害のある方達にとっても、ありがたいサービスであることは間違いありません。

高齢化社会で医療費の高騰は今後も続いてゆくでしょう。医療提供体制はどうあるべきか。この課題は、日本だけではなくアメリカでも同様なのです。

「アメリカだから・・・」ではなく、「私達も・・・」と、良いことは見倣いたいものです。

そして、明るく、より便利な医療体制を期待したいものです。

〔参考引用〕

・日本経済新聞

・アメリカ部

・Digital Health Times

・Coral

・Yahoo

・The Motley Fool Japan

 他

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