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【第12回】日本一忙しい小児科医は見た…「医療コンサル」の仰天実態

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2021年12月18日

診療報酬の削減やコロナ禍による受診控え、それに伴う「長期処方患者」の増加…。クリニックの経営環境は苦しくなる一方です。コロナ禍が収束すれば経営状況も回復すると考える医師も少なくないようですが、開業医の未来は、決して楽観視できるものではありません。ただ診察をこなすだけでは淘汰される時代において、クリニック経営者に求められるスキルや姿勢とはどのようなものでしょうか。

「患者を大切にすること」と「利益追求」は表裏一体

医師が診察をこなすだけで高収入を得られる時代は、すでに終わりました。これからは、創意工夫をこらし一生懸命に集患を行わなければ、「下流医師」に転落する危険性が大きくなります。

そんな未来の医師にとって何より欠かせないのは、「経営力」です。

現代日本では、医師がお金について語ることをよしとしない風潮があります。「医は仁術」という言葉のとおり、金銭を追求したりせず、患者を全力で診察することが大事だというのです。

しかし私は、こうした考え方に賛成できません。私自身も、患者は大切にすべきだと信じています。

ただ、患者のために全力を注ぐことと利益向上を目指すことは、必ずしも矛盾しないと思うのです。

クリニックの経営状態が悪化すれば、スタッフの待遇悪化や解雇などの恐れが高まります。当然、スタッフにはつらい思いをさせますし、医療の質も下がって患者に迷惑も掛けてしまいます。

また、万が一クリニックが倒産や廃業に追い込まれたら、地域の医療体制にも悪影響を与えます。患者のために尽くしながら、同時に、経営についても真剣に考える。それが、これからのクリニックにとって必須の態度です。

医師の知的水準は高いため、医師が開業する際にはその頭脳を働かせてきちんと利益を上げられるか検討するものです。

ところが、ほとんどの医師には経営力が欠けているため、ピントのぼけた分析をしがちです。

その結果、人通りはそれなりに多いが、高齢者ばかりで子どもが少ない地域に小児科医院を開業するなどの失敗をしてしまいます。

「経営面は医療コンサルにおまかせ」も廃業リスク大

医師のなかには市場や競合の分析、マーケティングなどを「医療コンサルタント」などに任せる人もいます。経営に関する部分は外部の専門家に任せ、自らの限られたリソースを医学などに注ぐという考え方は、決して間違っていません。

ただし、実力のある医療コンサルタントを見つけだして依頼することはかなり難しいのです。

私も開院時、ある医療コンサルタントに話を聞いてみました。

ところが、その人がはじきだした1日あたりの見込み患者数は、たったの20人。現在、私の院には1日平均200人の患者が押し寄せていますから、彼の分析はまったくの的外れだったのです。

医療コンサルタントの多くは、東京などの大都市圏で仕事をしています。そのため、開院予定地域や競合医療機関の実情などをよく分かっていません。

そこで、診察圏内人口や開院予定地の人通りなどを機械的に分析し、小手先のマーケティングをするケースがほとんどなのです。評判のいい医療機関はコンビニエンスストアなどとは異なり、かなり離れた地域からも患者が集まりますが、「医療コンサルタント」と名乗っていても、そうした業界特性すら読み切れていない人は珍しくありません。

能力が低いのに高い料金だけを徴収する悪徳コンサルタントに依頼してしまったら、クリニックの経営はすぐに傾きます。

そこで、仮に専門家に経営への助言を依頼するとしても、彼らの善し悪しを見分ける目が医師には必要です。そして目利きになりたいのなら、やはり、ある程度の経営力が求められます。

経営力の根幹は「トレンドを読む力」

ところで、経営力とはなんでしょうか。人によって答えはさまざまだと思います。事業プランを立てる構想力を挙げる人もいるでしょうし、部下を育成する力や、あるいは市場を分析する力を挙げる人もいると思います。

これらの能力も、経営力の重要な一部だと思います。しかし私は、経営力のなかで一番大切なのは「トレンドを読む力」だと感じています。

私は常に、どの病気の患者が自分の院で増減しているか、あるいは、どの地域の患者が増減しているかなどの指標をチェックしています。

そうすることで、私の院が患者からどのように評価されているか推し量ることができるからです。

例えば、このところ、「舌下アレルゲン免疫療法」を望む患者が増えています。これはスギ花粉症やダニアレルゲンなどに悩む患者に有効な治療法で、通常は耳鼻科で受けるケースが多いものです。

ところが私の院の診察圏では、ほかの耳鼻科などを差し置いて、私の院が8~9割のシェアを獲得しています。これは、舌下アレルゲン免疫療法がトレンドになっていることをいち早くキャッチし、私の院の看板として大々的に売りだした結果でした。

私はすずきこどもクリニックのほかに、サービス付き高齢者住宅「グランドール紀の風」の経営を行う株式会社やさしさも経営しています。これも、トレンドを読んでの動きです。

私の院のある和歌山県新宮市では、他地域と同様に少子化が進んでいます。1980年における新宮市の年少人口(0~14歳人口)は9188人でしたが、2015年には3507人と6割以上も減っています。

つまり、小児科クリニックとしての対象患者数は先細っているわけです。

一方、1980年の老年人口(65歳以上)は5363人だったのに対し、2015年には1万377人とほぼ倍増しています。高齢者相手のビジネスに進出すれば、事業の柱が増えて経営が安定するというのが読みでした。2016年に創業した株式会社やさしさの事業はすでに軌道に乗り、私の予測が正しかったことを証明しています。

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