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【第8-1回】「待ち時間が短いクリニック」がやっている「看護師の問診」

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2021年12月14日

「日本一忙しい小児科医」と言われる筆者が1日に診る患者数は平均200人。一般の医師にとっては1日100人でも驚異的な数字です。なぜ、これだけの患者を診ることができるのか? それは医師による診察時間を最大3分以内に収めているからであり、診断に必要な情報の9割を、看護師による問診で得ているからです。患者の待ち時間を極力短くしつつ、たくさんの患者を診るための「看護師の問診」について見ていきましょう。

正確かつ具体的に聞き取るために「問診表」は使わない

私の院では看護師の問診のため、特定の問診票や「シナリオ」は用意していません。また、質問項目数は他院とそれほど変わらないはずですが、質問と記録のやり方はかなりユニークです(【⇒写真を見る:筆者の院の看護師が実際に作成した「問診メモ」】)。

患者にまず確認するのは、どんな症状がいつから表れているかという点です。

例えば発熱を訴える患者の場合、熱がいつからどの程度上がったのかを必ず聞き取ります。また、看護師には「昨日から熱が出た」ではなく、「●月X日の何時頃から熱が出た」と書かせるようにしています。「昨日」「一昨日」という表現だと、直感的に理解しづらいし、正確性にも欠けるからです。

続いて、症状に合わせて掘り下げる質問を行っていきます。

嘔吐をしている患者なら、いつ、何回くらい、どんなものを吐いたか。下痢や腹痛はないかを聞いていくわけです。

このとき大切にしているのが、症状をできるだけ具体的に書かせること。問診票を使うと、この点がおろそかになりがちです。

例えば嘔吐をした患者の場合、嘔吐の欄にチェックを入れ、それで記録を終えてしまうのです。このような「看護師の思考停止」を避けるため、私はあえて問診票を使わないようにしています。

正しい診断には「起きていない症状」の確認も不可欠

また、看護師に「起きていない症状」についてしっかり確認させることも必要です。私の院では、例えば主訴が嘔吐だった場合、「咳を『していない』」、「腹痛が『起きていない』」、「下痢を『していない』」、「血便が『出ていない』」などについても質問させ、カルテに記入するよう指導しています。

問診票の嘔吐の項目にチェックが入っていて、咳や腹痛、下痢、血便などの項目に〇も×もついていない場合、医師は正しい判断を下せません。

例えば胃腸炎で嘔吐した可能性もありますし、咳が原因で吐いてしまったのかもしれません。

一方、咳も頭痛も血便もない、と問診票に明記されていれば、おそらく胃腸炎だろうと判断がつきます。だから、「起きていない症状」の確認が何より大事なのです。

看護師にとって、問診で聞かなければならない項目は、診療科によってある程度固まっています。

一方、「起きていない症状」については盲点になりやすいため、普段から看護師への意識付けが大切です。

患者が体調・病状をうまく説明できない場合は…

子どもや高齢者の患者は、自分の体調を上手に説明できないケースが多々あります。また、症状はよく分からないが、とにかく体調に問題がありそうだという状況も珍しくありません。こうしたとき看護師には、患者の話したことを脚色なしに記録することを求めています。

例えば、「子どもが幼稚園のお昼寝からなかなか起きて来ず、その後もぐったりしていて元気がない」などのように、相手の話を聞いたままで書くのです。そしてこうした患者に対しては、私自身がいつもより長い時間をかけ、じっくり話をしながら治療を行います。

患者のコミュニケーションスキルなどに問題があって病状をうまく説明できない場合は、診察に時間をかけたり、何度も問診したりすれば正しい診察結果を導き出すことができます。

一方、やっかいなのが「よく分からないが、とにかく体調が悪い」という訴えの背後に重大な病気が潜んでいるケースです。この場合は、真の原因を見つけるために医師の「眼力」が求められます。

予定外の来院や、薬の要望…把握すべき「患者の事情」

患者の真の受診理由が何かはっきりさせることもおろそかにできません。

例えば、咳と鼻水、発熱を訴えて来院し、回復しなかったら3日後にもう一度来るように伝えた患者が、その翌日にもう一度来院したとします。この場合、看護師は患者に、なぜ3日後ではなく今日来たのかを確認しなければなりません。看護師が、「高熱が続くので心配になった」という事情を患者から聞き出していれば、医師は「それは心配でしたね。薬を出しますので安心してください」などと相手の心に寄り添った対応ができます。

一方、患者の事情をきちんと聞き取れていなかったら、医師は「3日後に来院するはずだったのに、どうして来たんですか?」と質問する羽目になり、患者をがっかりさせてしまいます。

患者は医師に「正しい診断」だけではなく、「共感」も求めています。その思いに寄り添うためにも、問診による事前のデータ収集が大切なのです。

看護師による問診では、普段使っている薬の種類や剤形も確認させます。

そして、看護師レベルで疑問に感じた点が少しでもあったら、きちんと患者に質問してその理由を明らかにさせます。

例えば患者のなかに、普段はシロップ剤を飲んでいるが、今回は解熱剤だけ粉薬にしたいと希望する人がいたとします。もし、その理由が問診メモに書かれていなかったら、私はカルテ内容との矛盾を感じて患者に質問しなければならないでしょう。その時間は明らかにムダです。

私の院の看護師には、私が診療現場で抱く疑問を最小限に抑えるため、高い質問力と判断力を兼ね備える必要があります。

まとめますと、私の院での問診手順は次のとおりです。

(1)患者の症状を聞く
(2)さまざまな症状のなかでどれが主訴か確認する
(3)それぞれの症状について、いつから発生しているか聞く
(4) それぞれの症状について、頻度や重症度がどの程度かできるだけ具体的に聞く
(5)「起きていない症状」について確認する
(6)普段使っている薬の種類や剤形を聞く

新人看護師には、こうした流れを頭に入れさせ、何度もトレーニングを行ってヒアリング力を高めるよう指導しています。

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