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【第2回】コロナ後も「クリニックの受診控え」が続くこれだけの理由

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2021年12月8日

診療報酬の削減やコロナ禍による受診控え、それに伴う「長期処方患者」の増加…。クリニックの経営環境は苦しくなる一方です。コロナ禍が収束すれば経営状況も回復すると考える医師も少なくないようですが、開業医の未来は、決して楽観視できるものではありません。今後、開業医に求められる経営戦略について見ていきましょう。

経営難の打開策は「オンライン診療」だが…

受診控えによって患者数が減少している今、従来どおりの経営戦略では、医療機関が経営状況を回復させることは難しいでしょう。クリニックはこの窮地に、どのように対応すべきでしょうか。私は、オンライン診療への進出が打開策になると考えています。

オンライン診療は、厚生労働省の定義では「遠隔医療のうち、医師―患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為」とされています。1997年、初診患者に対しては原則的に対面診療を行うべきだが、離島や僻地に住む患者など例外的な場合に限って、通信機器を用いた診療を認めるという通知が厚生労働省から出されたのが歴史の始まりでした。2015年には、患者からの要望に応じて対面診療とオンライン診療を組み合わせることは差し支えないという見解が示され、オンライン診療が事実上解禁に。

さらに、2018年の診療報酬改定で、オンライン診療に保険診療が適用されるようになりました。そして2020年に新型コロナウイルスの感染拡大が起き、厚生労働省から「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」の通知が出されました。それにより、あくまで一時的な処置ではありますが、初診でもオンライン診療が認められるようになったわけです。

しかし一方で、開業医はオンライン診療導入に消極的です。

医療機関向けにマーケティングリサーチやコンサルティング業務などを手掛けるeヘルスケアが臨床医528人を対象に行った調査によれば、2020年5月時点でオンライン診療システムを使ってオンライン診療を行っている医療機関はわずか3%でした(図表1)。電話を使った遠隔診療を含めても、約3割に過ぎません。そして、診療所や小規模病院に限ると、オンライン診療システムが2%、電話を含めた遠隔診療が19%と、さらに低い水準でした。

[図表1]電話やオンライン診療による初診受付
参考:eヘルスケア「第3回 新型コロナウイルス(新型肺炎)についてのアンケート」

オンライン診療の導入を阻む3つの理由

多くのクリニックがオンライン診療を導入しない理由は3つあります。

1つ目は誤診リスクです。オンライン診療では触診や聴診、レントゲン撮影などができません。そのため、対面診療に比べて得られる情報量が少なく、医師は誤った判断を下すことを恐れてしまうのです。

2つ目の理由は、オンライン診療の仕組みを構築する手間が大きいことです。タブレット端末やパソコン、カメラを購入し、オンライン診療システムを導入するにはそれなりの投資が必要です。また、ITに慣れていない医師や看護師にとって、こうした機器・システムを使いこなすまでにはそれなりの努力が必要になります。

一方、高齢者の患者のなかにはスマートフォンやタブレット端末の利用が難しい人も多いものです。IT化の手間やスキル不足が、医療機関と患者の双方にとってオンライン診療システム導入の障壁として立ちはだかっているのです。

そして3つ目の理由は、診療報酬の安さです。おそらくこれが、オンライン診療の普及を妨げる最大の原因になっているのではないでしょうか。

厚生労働大臣が定める疾患を主病とする患者に対し、診療所が治療計画に基づき療養上必要な管理を行った場合、「特定疾患療養管理料」の225点が加算されます。一方、オンライン診療で同様の診療を行う「特定疾患療養管理料(情報通信機器を用いた場合)」は、100点しか加算されません。診療内容にも左右されますが、オンライン診療で得られる診療報酬は現在のところ、外来の3分の2から4分の3程度です(図表2)。

[図表2]診療報酬
出典:厚生労働省「令和2年度診療報酬改定について」

実際に、前述のeヘルスケアの調査でも、オンライン診療を実施しない理由として「費用がない」「診療報酬が安い・費用対効果が低い」「ハード面が整っていない」「初診は難しい・不安」などの答えが並んでいます(図表3)。

[図表3]オンライン診療を実施しない理由
参考:eヘルスケア「第3回 新型コロナウイルス(新型肺炎)についてのアンケート」

誤診リスクは高く、導入のために費用も手間もかかるのに、診療報酬は安い。これでは、オンライン診療が広まらないのも無理はないと、私も感じています。

しかし、オンライン診療のニーズは全世代で拡大

さまざまな理由から、導入に消極的な医療機関が多いオンライン診療ですが、今後はそのニーズは高まると予想されます。

マーケティング会社のMMD研究所が2020年10月15日〜11月2日に行った調査によれば、オンライン診療の認知度は84.1%、そのうちオンライン診療の利用経験がある人は18.0%でした(図表4)。男女ともに20~30代のオンライン診療利用者が増えている半面、50代以上の利用者は1割以下にとどまっています。

[図表4]オンライン診療の利用経験 ※性年代別
出典:MMD研究所調べ

ただし、オンライン診療への関心は世代を問わず高まっています。同じMMD研究所の調査では、オンライン診療に対して「非常に関心がある」「どちらかといえば関心がある」と答えた人は、全世代で5割を超えています(図表5)。

[図表5]オンライン診療への関心度 ※性年代別
出典:MMD研究所調べ

また、すでにオンライン診療を利用したことがある人に聞いたところ、「オンライン診療が増えてほしい」と答えた人は66.7%もいました(図表6)。加えて、オンライン診療を「利用したいと思う」(52.0%)と「やや利用したいと思う」(34.0%)と考えている人は合わせて86.0%にも達したのです(図表7)。

[図表6]オンライン診療についての考え(n=321)
出典:MMD研究所調べ


[図表7]オンライン診療の利用意向(n=321)
出典:MMD研究所調べ

「オンライン診療の普及」は逆らえないトレンド

この結果は、実際に利用した人がオンライン診療のメリットを実感したからに違いないでしょう。

患者が来院を拒み長期処方を望む理由の一つは、医療機関における新型コロナウイルス感染を恐れているからですが、オンライン診療なら感染する危険性はゼロ。患者は安心して診察を受けることができます。

また、通院に時間的負担、肉体的・精神的負担を感じている患者にとっては対面での通院間隔を延長できるツールです。体調の悪いなか、着替えたり化粧をしたりしてから車や公共交通機関などを使って病院に足を運び、ロビーで長時間待ってから診察を受ける外来に比べると、自宅にいながらにして受診できるオンライン診療は、受診へのハードルがはるかに低いのです。普段なら「このくらいの症状ならたいしたことがないから、病院には行かず自宅で寝ていよう」と考える患者も、オンライン診療なら気軽に受診できます。

また、介護や育児などの都合で来院が困難な人にとっても利便性が高いものです。しかしそうした人々も、内心では「1ヵ月に1度の診察が、3ヵ月に1度になっても大丈夫だろうか?」という不安を抱えています。

ですから、医師に「3ヵ月に1度の診察だと心配ですから、1ヵ月に1度はオンラインで構わないので様子を見させていただけますか?」と提案されると、納得してオンラインに移行してくれるケースが多いと私は感じています。

今後は高齢化や働き方の多様化が進むことが予想され、自宅にいながらにして受診できるオンライン診療へのニーズはさらに高まるでしょう。

さらに、政府もオンライン診療の普及を後押ししています。医療界が抵抗しても、この流れを止めることはできません。

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