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健康状態が自分でわかる時代が来る?医師、製薬会社保険会社も注目する“デジタルバイオマーカー”とは?

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2021年12月16日

健康状態を可視化する「デジタルバイオマーカー」をご存知でしょうか?まだ馴染みのない言葉ではありますが、実用化に向けて研究・開発が盛んに行われており、また私たちが“ヘルスケア”という観点で実際に利用可能なものも出てきています。今回はそんな「デジタルバイオマーカー」について解説します。

目次

  1. デジタルバイオマーカーとは
    ・従来のバイオマーカーの弱点
    ・研究結果がもたらすデジタルバイオマーカーの必要性
  2. 私たちの体調を可視化するデジタルバイオマーカー
    ・心電図
    ・血圧
    ・血中酸素ウェルネス
    ・血糖値
  3. 心の健康を可視化するデジタルバイオマーカー
  4. デジタルバイオマーカーが導く今後の企業活動の変化予測

デジタルバイオマーカーとは

これまで医師は患者の診断や治療計画の策定にバイオマーカーと呼ばれる、血圧や心拍数、血液データ(血糖値やコレステロール値等)、画像診断、腫瘍マーカーなどの客観的指標を用いてきました。近年、それらに加えてデジタルバイオマーカーと呼ばれるものが利用され始めています。
デジタルバイオマーカーとは医師が患者の診断や治療計画の策定に用いるバイオマーカーの一種ではありますが、ウェアラブルデバイスやカメラ、スマートフォン等を用いて継続的かつ非侵襲的にデータを収集し、集まった膨大なデータをAIなどを用いて分析することによって、今までになかった洞察を引き出すことを目的としているものをいいます。

従来のバイオマーカーの弱点

従来のバイオマーカーは根拠に基づいた医療を実践するうえで非常に重要視されるものでありましたが、一つ弱点がありました。バイオマーカーは日内変動や気分による変動など様々な要因により変動することが知られており、検査はとある一時点で行われるため検査と検査の間にどのような変動があったかが分からないのです。

例えば、「血圧は寝起きの朝に極端に低血圧状態であるが日中はなんの問題もない」とか、「医師や看護師の白衣を見ると血圧が上昇してしまい、病院で血圧を測ると高血圧状態であるものの、家では正常血圧である」といったケースがあることは以前から知られています。

また、健康診断の一週間くらい前から節制生活を行った結果、血液データが正常近くになった、なんて話を聞いたことがあるのではないでしょうか?

このような時系列データの間隔が広くなってしまうという問題点を解決する可能性をデジタルバイオマーカーは秘めているのです。

研究結果がもたらすデジタルバイオマーカーの必要性

「健康の決定要因(Determinants of Health)(1)という研究分野があり、近年の研究により健康の決定要因は個人行動を中心としたライフスタイルが40%、遺伝的要因が30%、環境・社会要素が20%、ヘルスケアが10%であることが示されています。

この結果は個人の行動変容が健康増進に有効な手段である可能性を示唆していて、日常生活を継続的かつ非侵襲的にモニタリングして、疾病予防や早期診断につながるデジタルバイオマーカーの開発、利用が求められています。

経済的にも社会保障制度の堅持のためには医療費の増大を抑制することは大きな課題の一つであり、デジタルバイオマーカーはその切り札になりうる存在として期待されています。
以上のような背景も踏まえれば、2021年4月23日にREPORTOCEANが発行した世界のデジタルバイオマーカー市場に関する新しいレポート(2)による、2030年までに225.4億ドル、日本円で2.5兆円に達し、モバイルヘルスアプリの需要の高まり、スマートフォンのレベルの上昇、ヘルスケアにおけるウェアラブルテクノロジーにより、2020年から2030年にかけて毎年36.2%成長するとされているのもうなずけます。

 


(1)出典:医薬産業政策研究所「デジタルテクノロジーの進展と医療ヘルスケアのパラダイムシフト データ駆動型ヘルスケアの実現に向けて
(2)出典:PR TIMES「世界のデジタルバイオマーカー市場は2030年までに225.4億ドルに達するでしょう

私たちの体調を可視化するデジタルバイオマーカー

Junge Frau beim Fortschritt messen von Fitnes Ziel mit Smart Watch im Fitnesscenter

実は私たちの身近にも少しずつ使われ始めたデジタルバイオマーカーについて詳しく解説します。

心電図

以前から米国をはじめ、海外ではApple Watchで心電図を取得できることが知られていますが、日本でも2021年1月26日からiPhone用「心電図アプリケーション」とApple Watch用「不規則な心拍の通知プログラム」が利用可能となりました。

それまでのApple Watchには心拍数を計測する機能はありましたが、心拍数から心電図へと進化したことは「健康管理」から「医療管理」へと近づいたといっても過言ではありません。

なぜなら、Apple Watchで検出できるとされる心房細動は不整脈や狭心症発作というような心臓疾患の疑いを示していますが、私たちが健康診断時に受ける「12誘導心電図」と呼ばれる検査ではたまたま検査時に発作がなければ検出できません。そのため、そのような症状が強く疑われる場合には「ホルター心電図」と呼ばれる24時間心電図をモニターする検査が行われます。

一方で不整脈や狭心症は軽度であれば自覚症状がないことも多く、初期の段階で発見することは困難な場合が多いことが知られています。心臓の病気はご承知の通り命に直結します。Apple Watchのような技術は常時計測しているわけではなく、計測方法も12誘導心電図よりは精度が落ちるなど、完全ではないにしても心臓の不調を事前に察知することが期待されています。
日本での認可取得はまだですが、同様の機能を搭載するスマートウォッチはほかにもGoogle傘下FitbitFitbit Sence(CEマーク(EU加盟国の基準適合マーク)、FDA(米国食品医薬品局)の認可取得)やSamsungGalaxy Watch(FDA、CEマーク、MFDS(韓国の食品医薬品安全省の認可)を取得)などがあり、私たちにとって選択肢が増えていきそうです。

血圧

血圧の測定というと腕にカフを巻いて計測する方法が一般的ですが、近年血圧測定にも変化が起き始めています。

2019年8月にイスラエルの企業であるBiobeatのスマートウォッチと皮膚に貼るセンサーを組み合わせたシステムが血圧を計測するシステムとして初めてFDAに認可されました。

これはフォトプレチィスモグラフィ(PPG:光電脈波)という原理を採用しており、カフを必要とせず、継続して血圧を計測できる画期的なシステムです。これにより使用者本人をはじめ医師、看護師等の医療従事者は対象者の血圧をリアルタイムで共有することが可能となります。

現時点ではスマートウォッチのような単体でのカフを必要としないウェアラブルな血圧計測機器はFDAの認可を受けていませんが、SamsungGalaxy Watch3、またはGalaxy Watch Active2で血圧測定機能を実装したことを2021年1月に発表し、CEマークを取得しています。また、英国ベンチャー企業のAktiiaも2021年1月にスマートウォッチ型の血圧測定デバイスでCEマークを取得したことを発表しており、今後FDAの取得につながるか注目されています。
さらに、上腕血圧よりも疾病診断有用とされる中心血圧(心臓により近い大動脈の血圧)を非侵襲的に計測する技術を有するCardieXは新しいレーダーベースウェアラブル測定デバイスであるCONNEQT Bandを開発していて、臨床グレードの心拍を測定することができる他、血圧(中心血圧も)、動脈年齢、心臓への負荷などを算出することもできるとしており今後に期待されています。

血中酸素ウェルネス

ここからはFDAなどの認可が下りていないけれど、私たちの健康管理に有用で、今後、医学管理に利用される可能性があるものを紹介したいと思います。

先ほど紹介したApple  Watchでは心電図のほかに血中酸素ウェルネスというものが計測できます。これは血液中に取り込まれた酸素のレベルを計測するもので、昨今のコロナ禍でたびたび話題になる血中酸素飽和度(SpO2)と“似たような”指標です。

“似たような”というのは、SpO2はすでに医学管理指標として定着していますが、血中酸素ウェルネスは医学管理を目的とせず、あくまでも健康管理を目的に計測されています。計測の原理もやや異なり、計測部位がSpO2では指先で計測するのに対し、Apple  Watchでは手首で計測が行われており、この方式はSpO2の計測方法と比較して精度が低いとされています。

したがって、血中酸素ウェルネスをSpO2と同様の評価基準で医学管理に用いることはできませんが、自身の変化傾向を知っておけば健康管理に役立てることができるでしょう。血中の酸素レベルを計測するシステムはApple Watchに加えて、Fitbit Sense、GARMIN、Galaxy Watchなどにも搭載されています。

血糖値

従来、血糖値の計測は指先などに針を刺し、少量の血液を採取して計測することが一般的でした。以前から針を刺す際の痛みに関して、針を細くするなどの対策は行われています。

また、米国DexComは腹部にセンサーを貼り付け、持続的に血糖を計測するシステムを販売し、日本にも導入していました。これは医療認証も得られていますが、糖尿病患者しか使えず、センサーは針を使用し1週間毎に交換する必要がありました。

近年では非侵襲的に血糖を計測する技術の研究が盛んにおこなわれていますが、この市場は聖杯と呼ばれており、誰かが手にしたら絶大な事業へのインパクトがあるが誰も手に入れられていない分野です。それでもいくつかの企業は実用化を期待させるレベルにあり、米国KNOW LABSは高周波分光法という電磁波を使ったアプローチで、体内のグルコースを測定しようとしています。

同社の発表によれば、開発したスマートウォッチ型デバイスにより計測した血糖制度は、前述のDexCom社製品等FDA取得済みの製品と遜色なかったとしており、今後が期待されます。

また、Samsungはマサチューセッツ工科大学共同でラマン分光法という技術に基づいて非侵襲的に血糖を計測する技術を研究しており、この技術が近くGalaxy Watchシリーズに搭載されるのではないかと期待されています。

さらにイスラエルのベンチャー企業Gluco Vistaは赤外線で血糖値を計測するウェアラブルデバイスを開発しており、日本でも株式会社クォンタムオペレーションが「世界初となる非侵襲連続測定可能な血糖センサー」を発表しています。

現在、糖尿病の疑いがない人は年1回ないし2回の健康診断時にしか血糖値を意識することはないかもしれませんが、より身近に血糖値を意識し、糖尿病を予防できる未来はそう遠くないかもしれません。

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