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江川の肩

2021年12月23日

日本シリーズは20年振りにヤクルトが日本一を勝ち取り、米国メジャーリーグでは大谷翔平選手の大活躍が大きな話題となった2021年、平成の怪物と言われた松坂大輔さんが引退しました。

甲子園で優勝し、その後プロに進み、そしてメジャーリーガーとしての活躍という輝かしい実績を残した「平成の怪物」は令和に引退したのです。

元祖「怪物」

photo asahi shimbun

「怪物」という言葉がもっとも相応しかったスポーツ選手と言えば、やっぱり江川卓さんです。

日本でスポーツ選手に「怪物」という言葉が用いられるようになったのは、高校野球が最初ではないでしょうか。その先駆けが江川さんです。

江川さんの甲子園での活躍を知る人は、既に50歳を超えていると思います。若い世代の方は、江川さんのこと知っている方は多いと思いますが、その活躍の凄さは実感がないと思います。松坂さんやメジャーで活躍する大谷さん以上に、当時の話題は大変なものでした。そして、江川さんの投球を知る人は、今でも誰よりも速かったと言います。

?完成された高校球児

江川さんは1973年の春の選抜大会に栃木の作新学院の投手として出場しました。甲子園の出場・登板は春の選抜4回、夏の選手権2回しかありません。既に半世紀近く経つのに、依然として「怪物江川」の記憶は忘れられることはありません。

江川さんは、当然プロに入ってからも活躍しましたが、高校時代の投球が一番速かったとも言われています。江川さんは超高校級の豪腕投手として驚異的な記録を残しました。その活躍は怪物の名を欲しいままにするものでした。

甲子園の通算成績はわずか6試合で4勝2敗(負けた2試合はいずれも自責点1での敗戦)、投球回数59回1/3、奪三振92(1試合平均15.3、奪三振率14.0)、自責点3、防御率0.46。これだけの成績を残していますが、優勝どころか決勝にも進んでいません。

甲子園通算80奪三振以上の投手の中で奪三振率14.0は、横浜高校時代の松坂大輔さんや現在メジャーリーグで活躍している青森山田高校のダルビッシュ有投手など、その他多くの歴代の好投手と比較しても、ずば抜けた断トツ1位の記録です。しかも球種はストレートとカーブの2つだけです。しかも江川さんは、僅か6試合しか登板していません。

信じられないかもしれませんが、当時日本中の甲子園を目指す野球の強豪・名門校が「打倒江川」となったのです。打てないと分かっている投手をどのようにして倒すか、江川さん一人を全国の高校球児が立ち向かたと言っても過言ではありませんでした。

1973年の春・夏の甲子園は「江川の大会」になりました。一高校生の名前で呼ばれた全国大会、野球に限らず、そのように呼ばれたのは、江川さんだけではないでしょうか。

「時代が違う!」と言う人もいると思います。しかし今考えてみても、サッカーのプロリーグがない時代、優秀な運動能力を持った人たちの多くが野球に取組む割合は高かったと言えます。

?甲子園で起きた漫画の世界

今のようにネットでの情報が無い時代、「栃木に凄いピッチャーがいる」という新聞を中心としたメディアの情報しかありませんでした。そんな江川さんは、1973年第45回春の選抜高校野球大会に出場します。そして、ついに「豪腕江川」がベールを脱ぐことになります。それは、「誰もが度肝を抜かれた」という言葉があてはまるものでした。

対戦した大会の優勝候補であった大阪の北陽高校は、19奪三振完封に抑え込まれてしまうのです。優勝候補の強豪校を、赤子の如く手玉に取ってしまったのです。その結果に日本中が驚かされます。

試合開始早々、打者3人が三振します。誰もバットに当たりません。ファウルも無いのです。4人目の打者も同じく三振し、5人目の打者が初めてファウルをして、江川さんの投げたボールにこの日初めてバットが当たります。すると、観客から拍手が起こったのです。ファウルで拍手が起こるほどなのです。

そして「江川フィーバー」が発生します。今振り返っても、「松坂フィーバー」をはるかに凌ぐものでした。

江川さんは、野球漫画の世界を現実としてくれた人なのです。

?やっぱり肩を壊した

江川さんはプロ野球選手として活躍したのは9年しかありませんでした。やっぱり肩を壊してしまったことで、思うように投げられなくなってしまいました。ですから一説には、高校時代がピークだったとも言われています。高校時代に作新学院で捕手として江川さんのボールを捕り続けた亀岡さんは、江川さんのボールは高校2年の秋が一番速かったと語っていました。

江川さんがプロ現役時代のスピードガンは今ほど正確ではなく、江川さんの投げたボールの球速は正確には分かりません。ただ、記録、記憶、体験談において、今なお江川さんを超える投手は出ていません。

練習中に水を飲むことさえ禁じられた時代が昭和のスポーツにはありました。毎日の練習、全国からの招待試合、メディア攻勢、昭和という環境の中で、江川さんは活躍すると同時に肩の限界に少しずつ近づいて行きます。そして9年間という短いプロ野球選手生活を経て、野球選手を引退します。

?根性だけの時代ではない

今では投手の肩は消耗品という見方が当り前となり、練習も試合も無理をさせず、投球数が制限されてもいます。肩だけでなく、スポーツ選手の体調管理は年々進化しています。根性だけでスポーツを行う時代は忘れ去られてゆくように思えます。確かにスポーツには根性も必要です。それだけを頼っていた時代があったことも事実です。

今のようにスポーツ科学が進歩し、選手のケアがしっかりと行われていたとしたら、江川さんのプロ野球選手としての活躍は違ったものになっていたでしょう。

「コンディション」を重視したオンラインツール

●コンディション管理という意識

スポーツ選手のコンディションをオンラインで管理できる時代となり、既にオンラインで体調管理やアドバイスが行われています。その規模は年々広がり、「当り前」であると言っても過言ではありません。それは、新型コロナウイルスの影響で更に加速しました。

スポーツコンディションにおける意識・管理・実践では、やはり欧米が先進国です。日本は欧米と比較して、まだまだ遅れていると言われています。日本は根性論がいまだに根強い背景があり、コンディションについて軽視されている現場が多いと感じる関係者は多いようです。(やっぱりスポ根の影響はまだまだ根深いのでしょうか?)

そんな中で、気になるものがありました。㈱ユーフォリアさんが開発された、「ONE TAP SPORTS」というツールです。これは、スポーツ選手のコンディションを管理・分析するツールで、多くのアスリートの方に利用され始めています。

このツールは、元々ラグビー日本代表によるコンディション管理のために作られたものなのですが、トップアスリートがコンディション管理により結果を出したことで、コンディション管理に対する意識が一般にも高まり、注目されるようになったことから、一般の人にも使えるように改良されてきました。

最近では、ジュニアから大学まで、スポーツのおけるコンディションへの関心は高くなっています。トップアスリートたちのデータ活用によるコンディションの管理が結果に大きく影響していることで、一般にも広く意識されるようになってきました。今後はコンディション管理の重要性が、益々重要視されてゆくと思われます。

●選手の体調・コンディションを可視化し、スタッフが状態を把握する機能

このツールは、選手一人ひとりがコンディションをスマートフォンやタブレットから簡単に入力することができます。入力されたデータは、トレーナーや栄養士などのスタッフにより、選手全員の体調を毎日簡単にチェックすることができます。大会やイベント参加時の検温や体調記録も出来ます。そうすることで選手の体調・コンディションを可視化し、スタッフが状態を把握することができるのです。

●スポーツ傷害報告書の作成も簡単、選手のケガ・受傷の履歴を一括で管理

スポーツ選手には、ケガがつき物です。「ONE TAP SPORTS」は、そんな時の傷害報告書(インジュリーレポート)に入力された過去のケガや疾患のデータを自動集計し、分析することができます。

傷害報告書の作成も簡単に行えて、Excelへの出力もできるので、選手や各所へのフィードバックも簡単に行うことができます。今までに起きたケガの発生状況を分析することで、今後発生しうるケガの予防対策にも役立てることができますから、とても参考になります。

体組成データやフィジカルテストの結果など、定期的に行う測定データを一限管理し、取り貯めたデータはグラフに表示が出来る他、チーム内での比較・検証も可能です。さらに、外部測定機器と連携して外部からのデーを取り込む事も出来ます。

●ライフログを見える化する

「ONE TAP SPORTS」を一言で説明すると、「アスリートのライフログを記録し、見える化する」ツールだと開発者の宮田誠(ユーフォリア)さんは述べています。

例えば、一般人のライフログは、睡眠時間、食事の内容、今日どこに行ったかなど、いろんな足跡が容易に想像できます。これをアスリート、スポーツチームに特化して作られものが「ONE TAP SPORTS」です。

アスリートのライフログは一般人より細かく、特殊です。練習内容、ケガの状況、ドクターによる処置、トレーナーによるケアなど、様々な項目があります。ですから、アスリート独自の日常生活を可視化することにより、それぞれの特性や改善方法にも繋げられることになります。

●後悔したくない気持ちに寄り添う

宮田さんは、「アスリートだけでなく、子どもからビジネスマンに至るまで多くの人が、自分のポテンシャルを発揮できなくて表舞台から遠ざかっていったり、本番で力を発揮できなくて悔しい思いをしたりしている人たちを減らしたい、人の持つ素晴らしい能力を引き出したい」いう思いから、このツールを開発しました。

基本は「最高のコンディションを作り、最高のパフォーマンスを発揮して、最高の結果を得る」ことが、このツールよるサポートの目的ですが、同時に選手寿命を伸ばす、健康管理も目的としています。そして、多くのデータを集めて分析し、コンディション管理に反映させて、「ケガをしない」、「本番で力をピークにする」ことで、成果に繋げさせるのです。実際にこのツールを導入したことで、選手の怪我が減少し、パフォーマンスが向上したという例はいくつもあるようです。

●直感的に入力できる「わかりやすさ」

正直なところ、スマホやタブレットなどで、いちいち入力するのは「面倒くさい」という意識があります。

そこで、一般のアスリートの活用にあたっては、見える化の部分で「わかりやすさ」が重要視されています。

専門知識がない人でも使ってもらえるように工夫をし、いかに「直感的に入力できるか」といった部分にはこだわってつくられています。こういう行き届いたところはありがたいです。

「わかりやすさ」を追求したのは、日本人は我慢する人が多いことが理由の1つとしてあるようです。

辛い時に「辛い」とコーチに言うと怒られるとか、スタメンを外されるとか、外的圧力が強すぎて正直に数値を入れられない、という人が珍しくないようなのです(なんとなくわかります)。そのようなことから、「いかに入力をシンプルにするか」、「いかに傷みのレベルを直感的に表現するか」などの工夫がなされています。

その他にも、スポーツサイエンティストによるスポーツ科学・医学に基づいたサポートができるような体制を構築し、トップスポーツから得た知見をそれぞれのレベルに合わせて伝えてくれる機能を備えています。ですから、スポーツクラブや学校の部活動でも容易に活用することが出来ます。スポーツをする人の都合を広く捉えているところは、とても感心させられます。

●一般こそ大切

コンディション管理の重要性の認知は確実に広がっています。学校の部活や一般のアスリートに目を向けるとまだまだ浸透していないかもしれません。しかし、トップアスリートによるコンディション管理の重要性がメディアでも伝えられ、経験や勘だけに頼る指導に科学的な根拠を持つことができると、子どもたちやコーチの認識も変わってゆきます。ですから一般のアスリートが大切です。スポーツは人生を豊かにすることができるので、「ONE TAP SPORTS」は、そういう人たちにこそ必要なツールではないでしょうか。

スポーツにおけるコンディション管理は、簡単なものではないと改めて認識させられます。「ONE TAP SPORTS」はオンラインでの診療ではありませんが、アスリートのオンライン管理によるヘルスプロモーションとも言えるでしょう。

●練習が全てという考え方

日本のスポーツは長い間、トレーニングばかりに目が向いていました。しかし、なぜか本番ではなかなか結果が出せない。その原因を「練習量の責任とすることで補う」方法から、練習内容の変更・改善が実施されるようになってきました。練習だけを重視する考え方が主流だったのです。
でした。コンディションについての認識が軽視されていただけでなく、意識することさえ乏しかったと言えます。

「ONE TAP SPORTS」は、日本のスポーツ界における現場の意識改善を、大きく前進させてくれることに期待したいツールです。

●オンラインがスポーツを楽しくする

科学がスポーツレベルの向上に繋がり、それをオンラインでサポートする。今では当たり前のことではありますが、今以上にオンラインでのアスリート・ケアが進歩することで、アスリートたちのレベル向上と結果が得られるとしたら、スポーツ観戦の楽しみが増えることは言うまでもありません。

コロナ禍にあって、いろいろと揶揄された東京オリンピックでしたが、日本人アスリートの活躍する姿に日本中が歓喜しました。やはりスポーツの力は凄いのです。

大谷翔平さんだけでなく、日本人アスリートの活躍を観る楽しみは年々増えています。もっともっと観てみたいものです。

怪物という伝説

photo jiji.com

そして、江川さんのような怪物が再び現れることになるのか、という期待も湧いてきます。しかし、「江川ブーム」のようなことはないでしょう。昭和という時代、高校野球に対する意識、野球人気がスポーツの頂点に在った状況は令和の時代とは大きく異なります。

コンディションがきちんと管理されていれば、江川さんのプロでの活躍はもっと長く、素晴らしいものになっていたかもしれません。今思い出しても、記憶から忘れられることのない衝撃と存在感は既に伝説であり、「怪物江川」は日本の野球史で語り継がれてゆくのです。

やっぱり、甲子園の江川さんはカッコよかった!!

  • 【参考引用】
  • REAL SPORTS
  • 株式会社ユーフォリア
  • Number
  • ベースボールマガジン
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