オンライン診療対応クリニック病院検索・クリニック動画紹介のイシャチョク

学校閉鎖によるCOVID-19拡大抑制効果の検証

  • TOP
  • コラム
  • 学校閉鎖によるCOVID-19拡大抑制効果の検証
2021年2月15日

はじめに

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した小児の多くが無症状もしくは軽症で、学校では他の小児と長時間過ごすため、ウイルスの媒介者となる可能性がありました1)。感染拡大防止に有効かは不明でしたが、2020年3月に全米50州の学校が閉鎖されました。

 研究2)では、分割時系列解析(interrupted time-series analysis)を用いて、学校閉鎖の政策がCOVID-19罹患率減少に対して有効だったかを後方視的に検討されました。

論文の概要

 Johns Hopkins大学が提供するCOVID-19罹患率の時系列公開データ3)から、幼稚園~高校(5~18歳)までの教育機関閉鎖1週間前、および閉鎖6週間後のCOVID-19罹患率を州単位で取得し、アウトカムとしました。共変量として、州単位の(a)外出禁止令、エッセンシャルワーカー以外の休業命令、飲食店の休業命令10人以上の集会禁止令の4禁止令、(b)COVID-19検査実施率、(c)人口密度、(d)肥満率、(e)15歳以下および65歳以上の人口の割合、(f)老人ホーム入居者の割合、(g)社会フレイル指数――がモデルに組み込まれました。ウイルス曝露から発症までの5日間、発症から検査陽性、もしくは入院までの7日間、学校でウイルスに曝露した子供から大人への曝露まで4日間、合計最大16日間のタイムラグが、介入から効果が出るまでの期間として必要と仮定し、解析しました。

 全米のCOVID-19罹患率は、学校閉鎖から1~16日目は1週間当たり265%の増加でしたが、17~42日目は1週間当たり10%の増加にとどまりました(図1)。学校閉鎖16日目の前と後で見たCOVID-19罹患率の減少は、その62%が学校閉鎖によるものだとする可能性が示されました。

図1.全米50州のCOVID-19罹患率の推移

JAMA. 2020 2020; 324(9): 859-870.から作成

分割時系列解析とは

介入前後でアウトカムがどう変化したかを見た疑似実験デザイン

 分割時系列解析は、介入によるアウトカムへの影響(因果効果)を時系列のレベル変化(切片の変化)、もしくはトレンド変化(傾きの変化)にて解析する方法です4)。介入がなければ介入前の時系列変化はないと仮定し、現実には観察されないアウトカム(半事実アウトカム)と比較し因果を推測します。分割時系列解析は、対照群を割り当てられないなどランダム化比較試験が不可能な場合、集団への政策介入やガイドライン変更による効果についてリアルワールドデータを用いて後方視的に評価する場合に有効です。ランダム化比較試験より長期的な影響を評価しやすく、外的妥当性が高く理解も容易で、近年注目される手法です。

 本研究では、介入前のトレンド(黒実線)、介入後のトレンド(赤実線)、および半事実アウトカムのトレンド(赤点線)を図1に示しました。「学校閉鎖の効果はすぐには現れず(切片の変化なし)、学校閉鎖16日目以降に徐々に効果が現れる(傾きの変化あり)」と推測されるインパクトモデルを採用し、赤点線および赤実線の傾きを比較しました(傾きの差)。

分割時系列解析が仮定する前提条件と時間依存性交絡因子

 分割時系列解析は、基本的に次の3つの前提条件を仮定しています5)――(1)介入前の時系列変化は線形(もしくは線形に変換可能)、(2)観察期間中の集団背景は不変(3)介入以外に時系列の変化を説明できるものがない。

 分割時系列解析の利点は、単一集団の前後を比較するため、比較的徐々に変化する人口の年齢分布や健康の社会決定要因など典型的な交絡因子の影響がないことです。そして、徐々に変化する因子については、測定された交絡因子だけでなく未測定の交絡因子にも対応できます。

 一方、最も大きな欠点は、介入前後で急激に変化する時間依存性交絡因子に影響を受けることです。時間依存性交絡因子は適切に測定されていれば、モデルに組み込み調整可能とされています。もし、未測定もしくは未知の時間依存性交絡因子が存在する場合には対照群を割り当てるか、別集団における効果をみる、介入開始時/介入終了時の効果測定が推奨されます4)。

私の視点

方法論としての限界と結果の解釈

 本研究のクリニカルクエスチョン「学校閉鎖によりCOVID-19の罹患率が減少するか」の検討には、分割時系列解析が適すると考えられます。COVID-19に対しては手探りで迅速に集団への介入を行う必要があり、ランダム化比較試験は不可能でした。学校閉鎖の介入時期が明確でアウトカムのCOVID-19罹患率が継続して測定され、対照群がなかったため、既存の方法論のなかでは最適と考えます。

 しかし、限界もあります。その最大の理由は、学校閉鎖と同時に施行された他の政策介入効果が前提条件(3)に違反する点です。著者らは時間依存性交絡として、他の4つの政策介入をモデルに組み込んでいましたが、実際には全州が2つ以上、90%の州が4つの政策介入を導入していました。政策介入を行っていない対照群となる州がほぼ存在せず、明らかに学校閉鎖とそれ以外の政策介入効果が分けられていませんでした。このように、介入と同時に他の介入も行われている場合には、応用的な分割時系列解析となり、適切な対照群を設けた分割時系列解析が必要です6)。

 以上より、学校閉鎖に伴うCOVID-19罹患率減少効果は、同時に行われた他の政策介入に起因した可能性が否定できず、この研究だけでは結論を導き出すことは難しいでしょう。しかし、近年ではリアルワールドデータが広く入手可能になり、分割時系列解析は非常に有効な手法です。今後もこの解析が効果的な場面が増えると思われます。

参考文献

1) Lu X, et al. SARS-CoV-2 Infection in Children. N Engl J Med. 2020; 382(17): 1663-1665.

2) Auger KA, et al. Association Between Statewide School Closure and COVID-19 Incidence and Mortality in the US. JAMA. 2020; 324(9): 859-870.

3) Dong E,et al. An interactive web-based dashboard to track COVID-19 in real time. Lancet Infect Dis. 2020; 20(5): 533-534.

4) Bernal JL, et al. Interrupted time series regression for the evaluation of public health interventions: a tutorial. Int J Epidemiol. 2017; 46(1): 348-355.

5) Kontopantelis E, et al. Regression based quasi-experimental approach when randomisation is not an option: interrupted time series analysis. BMJ. 2015; 350: h2750.

6) Lopez Bernal J, et al. The use of controls in interrupted time series studies of public health interventions. Int J Epidemiol. 2018; 47(6): 2082-2093.

←戻る