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最終更新日：2023年2月25日

くらいんふぇるたーしょうこうぐんクラインフェルター症候群

こちらの記事の監修医師
東京医科大学病院
平澤 陽介

概要

クラインフェルター症候群は、男児が余分なX染色体をもって生まれる性染色体異常です。患者の外見は男性で、不妊症と高身長が主な症状です。四肢が長く、精巣が発育せず、二次性徴が欠如し、女性化乳房などがみられることもあります。血液検査などでXXY染色体を確認することで診断します。根本的に治す方法はありませんが、言語療法、テストステロン補充療法、カウンセリング、不妊症に対して体外受精、顕微授精などで治療します。メタボリックシンドローム・糖尿病・甲状腺機能低下症・骨粗しょう症・乳がんなどを合併しやすいため、定期的な検査が必要です。子どもに遺伝するリスクは非常に低く、1％未満の確率です。

原因

染色体は、細胞の中にあって遺伝子を含む構造体です。胎児が誕生後に男女どちらになるかは、性染色体によって決まります。X染色体とY染色体を１本ずつ（XY）持っていれば男性に、X染色体を２本（XX）持っていれば女性になります。クラインフェルター症候群は、男児がXXY染色体をもって生まれる性染色体異常です。どうしてこういった性染色体異常が生じるのかははっきりしていません。新たに生まれる男児の500～1000人に1人くらいの頻度でみられ、大抵の場合に男児は母親から余分なX染色体を受け継ぎます。ときにはX染色体が3～5本になることがあり、その場合はさらに症状が強くなります。

症状

クラインフェルター症候群患者の外見は男性で、不妊症と高身長が主な症状です。他にも次のような症状があります。四肢が長く股関節の幅が広い、精巣が発育せず、精子が少なくなり、生殖能力がない場合が多くみられます。ただし、勃起や射精は問題がありません。思春期の遅れ、二次性徴が欠如し、声変わりしない、ひげがまばら、女性のように胸が少し膨らむ（女性化乳房）といった症状もあります。知能は正常かやや低めで、発語や読むことが難しくなり、計画を立てることが苦手で、判断力が低く、過去の経験から学ぶ能力が低下する場合がありますが、重要なことはほとんど症状がみとめられず、不妊症が唯一の症状といったケースも多くみられます。クラインフェルター症候群のうち最大75％が診断されずに過ごすと考える研究者もいるくらいです。メタボリックシンドローム・糖尿病・甲状腺機能低下症・骨粗しょう症・乳がんなどを合併しやすいのも特徴です。

検査・診断

思春期に典型的な症状がみられる場合はクラインフェルター症候群を疑います。ただし、ほとんど症状がなく、男性の不妊症検査で見つかることも多い病気です。そして血液検査でXXY染色体が見つかることで診断します。また、出生前に何かの理由から羊水穿刺や絨毛採取をおこない、XXY染色体が見つかることもあります。さらに血液検査で男性ホルモンであるテストステロンの低下を認めます。

治療

クラインフェルター症候群を根本的に治す方法はありません。それぞれの症状に合わせて治療します。まず小児期の発語や読む能力を養うために言語療法が有効です。そして青年期からテストステロン補充療法でテストステロン剤注射を3～4週間ごとに続け、男性的な外見を発達させます。テストステロンは骨密度、筋肉量を高め、性欲や男性的な行動を促す作用があります。生殖能力を維持するためのカウンセリングも効果的です。不妊症の場合にわずかでも精子を認めれば、体外受精を試みる価値があります。また、無精子症の場合に精巣を切開して精子を探し出して回収し、その精子を用いて顕微授精する方法もあります。この方法は精子の回収率が50～60%と良好な成績です。さらに、女性化乳房に対して胸を小さくする手術をおこなうこともあります。

予防／治療後の注意

テストステロン補充療法はメタボリックシンドロームや糖尿病の予防にもなります。テストステロン補充療法の副作用として、肝機能障害、多血症、睡眠時無呼吸症候群などに注意してください。クラインフェルター症候群の治療は長期におよぶため、定期的な検査で健康管理が必要です。テストステロン値、血糖値、コレステロール値、乳腺超音波検査などが行われます。クラインフェルター症候群が原因で無精子症になっている場合でも、治療すれば子どもを授かる可能性があります。また、クラインフェルター症候群は、他の染色体異常の病気と比べると、子どもに遺伝するリスクは非常に低い（1％未満）病気です。

こちらの記事の監修医師

東京医科大学病院

平澤 陽介

〇診療科：泌尿器科

【学歴・職歴】
2008年3月　北海道大学医学部医学科卒業
2010年3月　横浜労災病院　初期研修修了
2011年4月　慶應大学病院　泌尿器科　助教
2014年４月　東京医科大学病院　泌尿器科　助教
2018年４月　東京医科大学病院　泌尿器科　助教・医長　医学博士取得
2019年5月　Cedars Sinai (アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス)にResearch fellowとして留学
2021年４月　東京医科大学病院　泌尿器科　講師

【資格】
日本泌尿器科学会　専門医・指導医
日本内分泌学会　専門医
日本ロボット外科学会　専門医　国内B級ライセンス
日本ロボット外科学会　（ダビンチ）認定医　certificate取得
泌尿器ロボット手術　プロクター認定医　手術指導医

【受賞歴・獲得助成金】
・アメリカ泌尿器科学会ベストポスター賞(2012年, アメリカ, アトランタ)
「Transurethral enucleation with bipolar versus open prostatectomy for patients with large prostate > 70cc」
・ヨーロッパ泌尿器科学会ベストポスター賞(2016年, ドイツ, ミュンヘン)　
「Impairment in Activities of Daily Living after radical cystectomy among elderly aged over 80. Assessment based on 6778 cases」
・埼玉地方会　ベストプレゼンテーション賞 (2011年)　後腹膜繊維症に対する腹腔鏡下尿管剥離術の検討
・科学研究費 2017-2018年　難治性前立腺癌に対するタキサン系抗癌剤とNFκB阻害剤を用いた新規治療戦略開発
・上原記念生命科学財団　海外リサーチフェローシップ 2020年 膀胱癌に対する新規免疫治療の効果予測バイオマーカーの開発
・佐々記念賞　「Sarcopenia as a Novel Preoperative Prognostic Predictor for Survival in Patients with Bladder Cancer Undergoing Radical Cystectomy　Yosuke Hirasawa, Jun Nakashima, Daisuke Yunaiyama et al.」
・東京医科大学科研費フォローアップ助成金 去勢抵抗性前立腺癌に対する新規治療戦略の確立
他、著作論文多数

治療に適した診療科目

泌尿器科

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