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最終更新日:2022年11月29日

ふぁろーしちょうしょうファロー四徴症

こちらの記事の監修医師
ニューハート・ワタナベ国際病院
渡邊 剛

概要

ファロー四徴症とは心室中隔欠損・肺動脈狭窄(きょうさく)・大動脈騎乗・右心室肥大の特徴をもった先天性心疾患です。心室中隔欠損とは右心室と左心室を隔てる心室中隔に穴が開いていること、肺動脈狭窄とは右心室から肺動脈へつながる経路が狭くなっていること、大動脈騎乗とは通常左心室にだけつながる大動脈が心室中隔にまたがり右心室ともつながっていること、右心室肥大とは右心室内の圧が高くなり右心室の壁が厚くなっていることを指します。症状は心雑音、チアノーゼ、無酸素発作、ばち状指などです。症状からファロー四徴症を疑い、心臓超音波検査や心臓カテーテル検査で診断します。根本的な治療法は手術療法であり、手術法には姑息術と開心術があります。手術を受けない場合は10年生きられる確率が10%と不良ですが、開心術を受けた場合は、術後30年まで生きられる確率が98%と良好な結果です。

原因

胎児のときに心臓が形作られる段階で、右心室と左心室を隔てる心室中隔と、肺動脈と大動脈の間のしきりがねじれてしまい、心室中隔に穴が開き、ファロー四徴症が発生すると考えられています。出生数3,600人に1人くらいの頻度で発生し、チアノーゼを生じる先天性疾患の中では一番多くみられる病気です。環境や遺伝が関係しているといわれますが、親がファロー四徴症のときに子どももファロー四徴症になる確率は約3%と報告されています。

症状

生後まだまもない時期に大きな心雑音が聴取されるのが特徴です。生後2~3カ月の時期にチアノーゼ(唇や爪床が紫色になる症状)がみられ、チアノーゼは赤ちゃんが泣いたりいきんだりするときに強くなります。また、入浴時や排便時にみられることもありますが、症状が強くなると1日中チアノーゼが続きます。チアノーゼとともに呼吸困難をおこすのも特徴で、これが無酸素発作です。通常は10分くらいでおさまりますが、長時間続いて命に関わることもあります。3歳以上になると無酸素発作が軽くなることが多いのですが、運動後にしゃがみこむ姿勢をとることがあります。また、長期にチアノーゼが続くと、指の先が太鼓のばちの様に膨らみますが、これがばち状指です。成人になるまでこういった症状に気づかないこともあり、10人に1人くらいはまったく治療せずに成人となるといわれています。右心室から大動脈へ静脈血が流れ込むため、動脈血中の酸素濃度が下がりますが、身体が順応し、動脈血中の酸素濃度を増やそうとして、血液中の血色素が増えて多血症をおこします。多血症のために血液がドロドロになり脳の血管がつまりやすくなり脳梗塞をおこすことがあります。また、ケガしてばい菌が血液の中に入り込んだ場合、通常は肺の毛細血管で捕らえられて、白血球により退治されますが、ファロー四徴症では、ばい菌が肺の毛細血管を通らずに脳に流れてしまい、脳の毛細血管にうみのたまりをつくり、脳膿瘍(のうのうよう)をおこすこともあります。

検査・診断

症状からファロー四徴症を疑い、心臓超音波検査で心室中隔欠損・肺動脈狭窄・大動脈騎乗・右心室肥大を確認することで診断します。さらに詳しく血液の流れや心臓内の圧を調べるために心臓カテーテル検査をして手術の参考にします。

治療

無酸素発作のときは膝をかかえ込んでおなかに押しつけると肺に血液が流れやすくなります。そして無酸素発作のときに飲ませる薬がβブロッカーです。またファロー四徴症のうち肺血流が動脈管依存性の場合はプロスタグランジンE1を使用します。根本的な治療法は手術療法であり、手術法には姑息術と開心術があります。1歳以前にチアノーゼが強い例やプロスタグランジンE1を用いている例では、まず姑息術を施し、条件が整ってから1歳前後に開心術をおこなうのが一般的な治療法です。姑息術では、人工血管を用いて腕にいく鎖骨下動脈と肺動脈をバイパスさせます。開心術は人工心肺を用いて心臓の中を手術し、心室中隔の穴を閉じて、肺動脈が狭くなっているところを広げる治療法です。手術後に肺動脈を広げた部分が再び狭くなった場合は、カテーテル治療で広げます。

予防/治療後の注意

ファロー四徴症で最も重症の場合は、発見されてからあとどのくらい生きられるかの確率が、1年後75%、3年後60%、10年後30%とされています。それに対して、開心術を受けた場合は、術後30年まで生きられる確率が98%と良好な結果です。開心術を受ければ、多くの場合ほぼ制限のない生活を送れます。ただし、激しい運動はある程度制限が必要です。また、人工物を使用した手術であるため、抜歯や外科手術のときには感染性心内膜炎を予防します。心臓が全く正常になったわけではなく、術後10年以上たってから、肺動脈や大動脈の病気を起こすことがあるため、手術後も定期的に検査してフォローアップが必要です。術後の遺残症が重くなければ妊娠出産は可能ですが、リスクを伴うため、主治医と十分に相談してください。

こちらの記事の監修医師

ニューハート・ワタナベ国際病院

渡邊 剛

【経歴】
1977年3月  麻布学園高等学校卒業
1984年3月  金沢大学医学部医学科卒業
1984年5月  金沢大学医学部附属病院 第一外科入局
1989年3月  金沢大学大学院修了
1989年5月  横浜栄共済病院 胸部心臓血管外科
1989年6月  ドイツ・ハノーファー医科大学心臓血管外科 留学
    (Hans G Borst 教授の下、ドイツ学術交流会奨学生として)
1992年1月  金沢大学医学部附属病院第一外科
1992年4月  富山医科薬科大学医学部第一外科
2000年9月  金沢大学医学部外科学第一講座 教授
2003年8月  東京医科大学外科学第二講座 客員教授
2005年7月  東京医科大学心臓外科 教授(兼任)
2011年7月  国際医療福祉大学 客員教授
2013年11月  帝京大学 客員教授
2014年5月  ニューハート・ワタナベ国際病院 総長
2018年7月  ニューハート・ワタナベ国際病院 総長兼理事長

【資格】
日本外科学会指導医
【加入学会】
外科専門医
日本胸部外科学会指導医
心臓血管外科修練指導者
心臓血管外科専門医
循環器専門医
日本ロボット外科学会理事長
ISMICS (International Society for Minimally Invasive Cardiothoracic Surgery)
【受賞歴】
Young Investigator's Award受賞 1988年10月(第41回日本胸部外科学会総会)
第12回とやま賞受賞   2000年5月(富山県ひとづくり財団)
平成27年度外務大臣表彰 受賞 2015年(外務省)