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最終更新日:2022年10月14日

ていたいおんしょう低体温症

こちらの記事の監修医師
グローバルヘルスケアクリニック
水野 泰孝

概要

ヒトが生命維持や生存活動において、脳や臓器などの動きを守るために一定に保たれる体の内部の温度を「深部体温」といいます。この深部体温が正常な生体活動の維持に必要な水準(35度)を下回る状態を「低体温症」といい、低体温症になることで心臓や脳などさまざまな臓器が正常に機能しなくなり、命にも関わる危険があります。

原因

低体温症は気温の低い環境にさらされることで体から失われる熱量が、体温(体から産生される熱量や日光や暖房器具など外部から得られる熱)を上回った結果として起こります。環境因子としては雪山での遭難、雨や雪・川で溺れて服が濡れた状態、家の中でも屋内環境が整ってなければ乳幼児や高齢者の低体温症の発症につながる可能性があります。これは乳幼児や高齢者が寒さへの適応力がないことに加え、体を暖かく保つための対策を自ら行わないからです。環境的な要因以外にもアルコールの大量摂取による泥酔、甲状腺機能低下症、低血糖、脳卒中や頭部外傷など頭部の障害でも発症に至る場合があります。これらにより意識不明になり、寒い場所に横たわったまま動けずにいるなどの状況に陥った際に注意が必要です。

症状

深部体温(以下体温)が35度以下に低下し、初期症状として体温を上げようとするために体が激しく震える(シバリング)や歯がカチカチ鳴るなどの反応がみられます。そこから動作が遅くぎこちなくなり、「うまく話をすることができない、呼吸がゆっくりになる、手先をうまく使うことができない」などの反応につながり、「ぼーっとして周囲の声かけに反応をしなくなる、意識が朦朧とする、思考・記憶・判断力がなくなる、さらには意識がなくなる」といった症状が現れます。そこから徐々に心拍や呼吸が弱くなり、最悪の場合には心臓が停止します。体温が低くなるほど死亡のリスクは増大します。体温が約31℃を下回ると死に至るおそれがありますが、死亡例の大半は体温が約28℃を下回った場合です。

検査・診断

深部体温が35℃以下に低下した場合に低体温症と診断され、この体温の測定には通常、直腸用の体温計を用います。また、呼吸状態や血圧、意識状態、低体温症に至った状況を確認します。低血糖、甲状腺機能低下症、脳卒中などの病気が低体温症を引き起こした可能性があると想定される際には、血液検査や頭部CTなどの検査も行います。患者に生存の徴候がみられない場合、心臓超音波検査を行い心臓が拍動しているかどうかを確かめる場合があります。

治療

低体温症を発症した際にはできるだけ体を温める対応が必要です。しかし、体に過度の刺激を与えると、重度の低体温症の場合は致死的になりうる不整脈を誘発する可能性があるため、必要最低限の刺激でそっと扱うことが求められます。服が濡れている場合には服を脱がし、毛布で覆うなどの対応が必要です。初期であればこれに加えて熱い飲みものを飲ませることで回復します。意識不明で発見された場合には救急車を手配して、病院にて治療を行います。病院では温めた酸素の吸入、温めた液体の静脈内投与またはカテーテル経由での膀胱・胃・腹腔・胸腔への投与を行い、体を温めます。さらに血液透析装置や人工心肺装置を使って温めることもあります。医師は患者の体が温まり、それでも心拍やその他の生存の徴候がみられないと判定されるまでは、心配蘇生などの医療行為を続けます。

予防/治療後の注意

遭難などの特殊な状況を除いて日常での低体温症は予防可能です。特に高齢者は以下のことに注意してください。①暖房器具を活用して温かい室温を保ちましょう。②衣類を重ね着しましょう。ウールや、ポリプロピレンなどの合成繊維で作られた衣類は濡れても保温効果があります。帽子や手袋、靴下などで身体を保護して熱が奪われるのを防ぐことも重要です。③温かい食べものや飲みもので体を温めましょう。④アルコール摂取は控えましょう。⑤習慣的に運動を行い、体の熱産生量を増加させましょう。

こちらの記事の監修医師

グローバルヘルスケアクリニック

水野 泰孝

〇診療科:内科・感染症内科・小児科・アレルギー科・トラベルクリニック

【学歴 】
私立駒場東邦中・高等学校(1982-1988)
昭和大学医学部医学科(1988-1994)
東京慈恵会医科大学大学院医学研究科(熱帯医学専攻)(1998-2003)
長崎大学熱帯医学研究所(1999)
(Diploma in Tropical Medicine)
タイ王国マヒドン大学熱帯医学部(2001)
(Diploma in Tropical Medicine & Hygiene; DTM&H)
バングラデシュ国下痢症疾患研究所(2002)
(Workshop on Emerging and Re-emerging pathogens)
連合王国ロンドン大学公衆衛生・熱帯医学部(2005)
(Travel Medicine Short Course)

【職歴】
東京慈恵会医科大学付属病院 臨床研修医(1994-1996)
東京慈恵会医科大学付属柏病院・第三病院 小児科助教(1996-1998)
東京慈恵会医科大学付属病院 感染制御部 診療医員(2003-2004)
国立国際医療センター(現:国際医療研究センター)国際医療協力局 厚生労働技官(2004-2005)
国立国際医療センター病院 国際疾病センター(現:国際感染症センター)厚生労働技官(2005-2010)
外務省 在ベトナム日本国大使館 一等書記官兼医務官(厚生労働省より出向)(2007-2009)
国際協力機構(JICA)感染症顧問医(2009-2017)
厚生労働省羽田空港検疫所 非常勤医師(2011-2019)
東京医科大学病院 感染制御部・渡航者医療センター 准教授(2010-2018)
東京医科大学病院 感染制御部 部長(2013-2015)
東京医科大学病院 感染症科 診療科長(2013-2015)
東京医科大学病院 国際診療部 部長(2016-2018)
一般病院・診療所 非常勤医師(2017-2019) 東京都(杉並区、新宿区、葛飾区、世田谷区、千代田区、調布市)、神奈川県(横浜市、川崎市)、千葉県(松戸市、流山市)、埼玉県(所沢市、三郷市、蕨市、羽生市、吉川市、上尾市)、栃木県(真岡市)、群馬県(渋川市)、茨城県(古河市)、山形県(庄内町)、岩手県(奥州市)、北海道(旭川市、釧路市、月形町、江差町)、熊本県(天草市)

【役職】
日本感染症学会評議員
日本熱帯医学会評議員
日本化学療法学会評議員
日本渡航医学会評議員
日本臨床寄生虫学会評議員
日本小児科医会国際委員長
国際協力機構海外協力隊派遣前訓練 感染症講師
株式会社 わらべや日洋ホールディングス釧路工場 嘱託産業医
株式会社JM 嘱託産業医
社会福祉法人ちとせ交友会 嘱託医
株式会社 電通 感染症対策アドバイザー
東京都三鷹市 感染症対策アドバイザー
認定資格
日本感染症学会認定感染症専門医・指導医
日本小児科学会認定小児科専門医・指導医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
日本医師会認定産業医
日本感染症学会推薦インフェクションコントロールドクター(ICD)
身体障害者福祉法指定医(免疫機能障害)
国際渡航医学会認定医(CTH® )
米国熱帯医学会認定医(CTropMed® )
一般旅行業務取扱管理者
PADIスクーバダイビングインストラクター(OWSI)
日本臨床内科医会認定医(~2013)日本人間ドック学会認定医(~2014)日本温泉気候物理医学会温泉療法医(~2015)日本化学療法学会抗菌化学療法指導医(~2017)