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最終更新日:2023年2月18日

しんこうせいかくじょうせいまひ進行性核上性麻痺

こちらの記事の監修医師
赤坂パークビル脳神経外科 菅原クリニック
伊藤 たえ

概要

進行性核上性麻痺は、脳の中の大脳基底核、脳幹、小脳といった部位の神経細胞が徐々に減少して、転びやすい、眼球が動かしにくい、喋りにくい、飲み込みにくいといった症状がみられる疾患です。初期にはパーキンソン病とよく似た動作緩慢(動きが遅くなったり少なくなったりする症状)や歩行障害などがみられ、区別がつきにくいこともあります。しかし進行性核上性麻痺はパーキンソン病治療薬があまり効かず、パーキンソン病よりも経過がより早く進む傾向にあります。日本における有病率は、人口10万人あたり10~20人程度と推測されています。主に40歳以降に発症し、50歳代から70歳代に多く発症します。近年、高齢化とともに患者数は増加傾向にあります。

原因

進行性核上性麻痺を発症する原因は不明ですが、タウ蛋白という異常なたんぱく質が、脳内の神経細胞とグリア細胞の両方に蓄積して、神経細胞の変性や脱落が進むことによると考えられています。このような異常が起こってくる原因はわかっておらず、この病気になりやすい生活習慣なども分かっていません。遺伝により発症することは稀と考えられています。

症状

進行性核上性麻痺は、転びやすくなったことで最初に気づかれることが多いです。半数以上の人は、発症して1年以内に繰り返し転倒がみられます。すくみ足(足がすくんで前に出にくくなる)、加速歩行(歩行が段々速くなって止まれなくなる)といった歩行異常もみられます。徐々に動作が緩慢になり手足の関節が固くなり、やがて寝たきりになります。また、眼球運動障害も特徴的な症状のひとつで、発症して2~3年経た後に現れることが多いです。上下、特に下方を見ることが困難になります。進行すると左右方向にも眼球を動かしにくくなり、やがて眼球は正中位で固定して動かなくなってきます。また、構音障害や嚥下障害もみられます。喋りにくさや飲み込みにくさ、むせやすいといった症状が徐々に出現し、中期以降には誤嚥性肺炎をしばしば合併します。認知症も合併しますが、程度は比較的軽い傾向を示します。病気に対する深刻感がなく、多幸的であることも多いです。発症してから寝たきりになるまでの期間は平均で4~5年程度とされますが、経過には個人差があります。

検査・診断

進行性核上性麻痺では、症状や経過、診察所見の確認、脳MRI、MIBG心筋シンチグラフィー、脳血流シンチグラフィー、前頭葉機能低下を確認する心理検査などを行います。診断のためにはパーキンソン病の鑑別が重要です。

治療

進行性核上性麻痺を根本的に治す治療法はありません。薬物療法としてパーキンソン病治療薬や抗うつ薬を使用することもありますが、効果は少ないとされ、あったとしても一時的です。筋力維持やバランス訓練などのリハビリテーションを行い、転倒や手足の関節拘縮を予防します。また症状に合わせて、嚥下体操などの嚥下に対する訓練や、発声訓練などの言語の訓練も行います。誤嚥性肺炎や褥瘡などの合併症があればその治療も行います。

予防/治療後の注意

進行性核上性麻痺の患者は転倒しやすいため、よく使うものをすぐ近くに配置するといった環境整備や、焦ってトイレに行かないよう余裕をもって早めの排泄を促すなどして、転倒を予防することが大切です。また、嚥下障害の状態に応じて食事形態を変更したり、水分でむせる場合には市販のとろみ剤を使用してとろみをつけるのも有効です。寝たきりになった場合は、床ずれや肺炎の予防が重要となります。進行性核上性麻痺は厚生労働省の特定疾患(神経難病)に指定されているため、介護サービスの利用などをあわせて、適切な療養環境を整えましょう。

こちらの記事の監修医師

赤坂パークビル脳神経外科 菅原クリニック

伊藤 たえ

〇病院名 :赤坂パークビル脳神経外科 菅原クリニック
〇医師  :伊藤たえ
〇アクセス:港区赤坂5-2-20赤坂パークビル2F
〇診療科 :脳神経外科

《 経歴 》
2004年3月 浜松医科大学医学部卒業
2004年4月 浜松医科大学付属病院初期研修
2006年4月 浜松医科大学脳神経外科入局
2013年7月 河北総合病院 脳神経外科 勤務
2016年9月 山田記念病院 脳神経外科 勤務
2019年4月 菅原脳神経外科クリニック 勤務
2019年10月 医療法人社団赤坂パークビル脳神経外科
菅原クリニック東京脳ドック 院長