最終更新日:2022年11月29日
ねこひっかきびょう(ばるとねらしょう)猫ひっかき病(バルトネラ症)

こちらの記事の監修医師
グローバルヘルスケアクリニック
水野 泰孝
概要
猫ひっかき病(バルトネラ症)とは、病原体を保菌している猫から引っ掻かれるまたは咬まれたりした際にその傷口からバルトネラヘンセレ(Bartonella henselae)という細菌が侵入することで感染症を引き起こす疾患です。人や動物へと広まる他、ノミを介することでも感染が広まります。人から人への感染はないとされており、身近なペットの犬や猫が感染源となります。病原体であるバルトネラヘンセレは、ネコノミと呼ばれるノミの一種に寄生しており、夏から冬にかけて好発します。子どもから高齢者までどの層にも発症します。
原因
猫ひっかき病(バルトネラ症)の原因は、バルトネラヘンセレという細菌がノミとして猫に寄生することで、保菌状態の猫となります。その状態の猫が、人をひっかいたり咬んだりすることでその傷から菌が侵入して感染症を発症します。また、そのノミは犬にも寄生することがあります。バルトネラヘンセレは、猫や犬の唾液にも分泌されるため、口移しで食べ物を与えるなどとして唾液に触れることでも発症することがあります。
症状
猫ひっかき病(バルトネラ症)は、ほとんどの場合に感染後3~10日程度で菌の侵入した部位から虫刺されに似た病変が出現します。発疹が隆起した状態になり、その後に水疱に変化します。また、化膿したり潰瘍に進行したりすることもあります。これらの症状の出現から、1~2週間ほどが経つとリンパ節の腫脹があらわれるようになります。初期の段階ではリンパ節が硬くなり押すと痛みがあります。進行するとリンパ節の内部が液状になり、排膿することもあります。また、リンパ節腫脹の出現に伴って、発熱・倦怠感・頭痛・食欲不振が生じることもあります。感染した5~10%の人は重症疾患とされる、パリノー眼腺症候群・肉芽腫性肝炎・神経症状とされる脳症・痙攣発作・視神経網膜炎・脊髄炎・対麻痺・脳動脈炎をきたします。心臓弁膜症やエイズなどの免疫機能を低下させる疾患がある場合には、治療をしないと死に至る可能性があります。
検査・診断
猫ひっかき病(バルトネラ症)は、血液検査で行うバルトネラ菌体抗原を用いた間接蛍光抗体法(IFA)が用いられます。IgM抗体が1:16希釈以上およびIgG抗体が1:128希釈以上で特異的な蛍光が見られたものを陽性判定とし、ペア血清においては、IgM抗体が検出されなかった場合にIgG抗体価に4倍以上の差がみられたものに対し陽性判定とします。しかし、これらは結果が出るまでに時間を要するために近年ではPCR法を行うことが多くなっています。
治療
猫ひっかき病(バルトネラ症)によるリンパ節腫脹は通常2~3週間で自然治癒するとされています。場合によっては数カ月かかることもあるとされています。投薬治療としては、マクロライド系の抗生物質やテトラサイクリン系の抗生物質が用いられます。また、猫に対する治療としてドキシサイクリン・リンコマイシン・アモキシシリンの薬物投与によってある程度の菌血症レベルを抑制できるとされています。
予防/治療後の注意
猫ひっかき病(バルトネラ症)の発症は、猫との接触や受傷によってすぐに発症するものではありません。猫ひっかき病の予防は、定期的に猫の爪切りを行う・ケガをした際には十分に消毒する・特に子猫を触ったときはきちんと手を洗うなどであり、猫は室内飼育をし、定期的なノミ駆除を行い、衛生環境を保ちましょう。子どものいる過程においては、ノミ対策済みの猫やバルトネラ菌が陰性であることを確認された猫を飼育することも一つの手段になります。

こちらの記事の監修医師
グローバルヘルスケアクリニック
水野 泰孝
〇診療科:内科・感染症内科・小児科・アレルギー科・トラベルクリニック
【学歴 】
私立駒場東邦中・高等学校(1982-1988)
昭和大学医学部医学科(1988-1994)
東京慈恵会医科大学大学院医学研究科(熱帯医学専攻)(1998-2003)
長崎大学熱帯医学研究所(1999)
(Diploma in Tropical Medicine)
タイ王国マヒドン大学熱帯医学部(2001)
(Diploma in Tropical Medicine & Hygiene; DTM&H)
バングラデシュ国下痢症疾患研究所(2002)
(Workshop on Emerging and Re-emerging pathogens)
連合王国ロンドン大学公衆衛生・熱帯医学部(2005)
(Travel Medicine Short Course)
【職歴】
東京慈恵会医科大学付属病院 臨床研修医(1994-1996)
東京慈恵会医科大学付属柏病院・第三病院 小児科助教(1996-1998)
東京慈恵会医科大学付属病院 感染制御部 診療医員(2003-2004)
国立国際医療センター(現:国際医療研究センター)国際医療協力局 厚生労働技官(2004-2005)
国立国際医療センター病院 国際疾病センター(現:国際感染症センター)厚生労働技官(2005-2010)
外務省 在ベトナム日本国大使館 一等書記官兼医務官(厚生労働省より出向)(2007-2009)
国際協力機構(JICA)感染症顧問医(2009-2017)
厚生労働省羽田空港検疫所 非常勤医師(2011-2019)
東京医科大学病院 感染制御部・渡航者医療センター 准教授(2010-2018)
東京医科大学病院 感染制御部 部長(2013-2015)
東京医科大学病院 感染症科 診療科長(2013-2015)
東京医科大学病院 国際診療部 部長(2016-2018)
一般病院・診療所 非常勤医師(2017-2019) 東京都(杉並区、新宿区、葛飾区、世田谷区、千代田区、調布市)、神奈川県(横浜市、川崎市)、千葉県(松戸市、流山市)、埼玉県(所沢市、三郷市、蕨市、羽生市、吉川市、上尾市)、栃木県(真岡市)、群馬県(渋川市)、茨城県(古河市)、山形県(庄内町)、岩手県(奥州市)、北海道(旭川市、釧路市、月形町、江差町)、熊本県(天草市)
【役職】
日本感染症学会評議員
日本熱帯医学会評議員
日本化学療法学会評議員
日本渡航医学会評議員
日本臨床寄生虫学会評議員
日本小児科医会国際委員長
国際協力機構海外協力隊派遣前訓練 感染症講師
株式会社 わらべや日洋ホールディングス釧路工場 嘱託産業医
株式会社JM 嘱託産業医
社会福祉法人ちとせ交友会 嘱託医
株式会社 電通 感染症対策アドバイザー
東京都三鷹市 感染症対策アドバイザー
認定資格
日本感染症学会認定感染症専門医・指導医
日本小児科学会認定小児科専門医・指導医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
日本医師会認定産業医
日本感染症学会推薦インフェクションコントロールドクター(ICD)
身体障害者福祉法指定医(免疫機能障害)
国際渡航医学会認定医(CTH® )
米国熱帯医学会認定医(CTropMed® )
一般旅行業務取扱管理者
PADIスクーバダイビングインストラクター(OWSI)
日本臨床内科医会認定医(~2013)日本人間ドック学会認定医(~2014)日本温泉気候物理医学会温泉療法医(~2015)日本化学療法学会抗菌化学療法指導医(~2017)