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最終更新日:2022年10月2日

ぷりおんびょうプリオン病

こちらの記事の監修医師
グローバルヘルスケアクリニック
水野 泰孝

プリオン病

概要

プリオン病は現在のところ治療法がなく最終的には死に至る、まれな脳の進行性の変性疾患です。脳にプリオンと呼ばれる異常なタンパク質が沈着することで発生し、脳神経細胞の機能が進行性に障害されます。ヒトにも動物にもみられ、動物のプリオン病としては牛海綿状脳症 (BSE)、いわゆる狂牛病がよく知られています。ヒトのプリオン病の中でも代表的なクロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease:CJD)では急速に進行する認知症を呈します。この他にもゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病 (GSS)、致死性家族性不眠症などがあります。人口100万人あたり年間約1人の確率で発症し、日本においては毎年100~200人の発病が報告されています。地域差や男女差はなく、世界各国で孤発的に発生しています。

原因

異常になったプリオン蛋白質が原因と考えられていますが、どのような機序で感染し発症するのか分かっていません。プリオン病はその病因により、孤発性、遺伝性、獲得性に分類されます。ヒトのプリオン病の約8割を占める孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病では、患者さんに家族歴ならびにプリオン蛋白遺伝子の異常は認められず、現在も原因不明です。遺伝性プリオン病ではプリオン蛋白遺伝子 における変異により引き起こされますが、変異遺伝子を持っていたとしても発症しない場合もあります。獲得性プリオン病はヒトからヒト、動物からヒトへの感染など二次的に引き起こされます。ただし、通常の接触によって感染することはありません。この病気で亡くなった患者さんの角膜や脳硬膜を移植など医療行為を原因とした医原性プリオン病、牛海綿状脳症 (BSE:狂牛病) に汚染された牛肉の摂取による変異型クロイツフェルト・ヤコブ病などがあります。

症状

精神症状と高次機能障害(記憶力低下、計算力低下、失見当識、行動異常、性格変化、無関心、不安、不眠、失認、幻覚など)で発症します。発病より数カ月以内で認知症が急速に進行し、筋硬直、深部腱反射亢進、病的反射陽性が認められます。さらに起立、歩行が不能になり、発病から半年以内に自発運動はほとんどなくなり無動性無言状態に陥り、その後2年以内に全身衰弱や呼吸麻痺、肺炎などで亡くなる場合が多く見受けられます。

検査・診断

現病歴と診察所見からプリオン病の可能性を疑うことが診断の第一歩です。正式な病歴(家族歴、移植歴、渡航歴等)の把握、検査所見(脳波検査、脳MRI検査、脳脊髄液検査、遺伝子検査など)によって他の疾患と鑑別して診断します。プリオン病の病型(孤発性、遺伝性、獲得性)ではそれぞれ所見が異なる為、プリオン病と特定する際にその病型についても診断を行います。脳波検査では周期性同期性放電(PSD) という脳波異常の有無、脳脊髄液検査では髄液中のNSE、総タウ蛋白、14-3-3蛋白といった値が指標として用いられます。特に遺伝子検査は遺伝性プリオン病の診断において必須となっており、血液を用いて行います。しかし、現在のところプリオン病の確定診断は、死亡後に病理解剖にて得られた検体の解析が必要となります。具体的にはウエスタンブロット法、免疫染色などによる異常型プリオン蛋白の同定が行われます。

治療

現在プリオン病の治療は根治的な治療法がなく、進行を抑制することが証明された治療法もありません。症状が現れて数カ月から1~2年で死に至るとされ、対症療法として症状の緩和と不快感の軽減に重点が置かれます。その他にも心理カウンセラーや医療ソーシャルワーカー、遺伝性プリオン病の場合には臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーなど、さまざまな専門家との連携をはかり、患者さんとそのご家族に対する社会的支援を行うことも大切です。

予防/治療後の注意

致死的な疾患であるため発病後数ヶ月以内で寝たきりになり、1-2年以内に全身衰弱、呼吸麻痺、肺炎などで死亡します。日常生活に特別な注意は必要ありませんが、患者さんから他者への感染のリスクを回避するため、献血はできません。また、プリオン病の罹患者であることを医療機関に伝えてから受診するようにして下さい。変異型クロイツフェルト・ヤコブ病に関してはBSE牛の肉や脳、脊髄、眼、回腸部の摂食を避けることで予防できます。

こちらの記事の監修医師

グローバルヘルスケアクリニック

水野 泰孝

〇診療科:内科・感染症内科・小児科・アレルギー科・トラベルクリニック

【学歴 】
私立駒場東邦中・高等学校(1982-1988)
昭和大学医学部医学科(1988-1994)
東京慈恵会医科大学大学院医学研究科(熱帯医学専攻)(1998-2003)
長崎大学熱帯医学研究所(1999)
(Diploma in Tropical Medicine)
タイ王国マヒドン大学熱帯医学部(2001)
(Diploma in Tropical Medicine & Hygiene; DTM&H)
バングラデシュ国下痢症疾患研究所(2002)
(Workshop on Emerging and Re-emerging pathogens)
連合王国ロンドン大学公衆衛生・熱帯医学部(2005)
(Travel Medicine Short Course)

【職歴】
東京慈恵会医科大学付属病院 臨床研修医(1994-1996)
東京慈恵会医科大学付属柏病院・第三病院 小児科助教(1996-1998)
東京慈恵会医科大学付属病院 感染制御部 診療医員(2003-2004)
国立国際医療センター(現:国際医療研究センター)国際医療協力局 厚生労働技官(2004-2005)
国立国際医療センター病院 国際疾病センター(現:国際感染症センター)厚生労働技官(2005-2010)
外務省 在ベトナム日本国大使館 一等書記官兼医務官(厚生労働省より出向)(2007-2009)
国際協力機構(JICA)感染症顧問医(2009-2017)
厚生労働省羽田空港検疫所 非常勤医師(2011-2019)
東京医科大学病院 感染制御部・渡航者医療センター 准教授(2010-2018)
東京医科大学病院 感染制御部 部長(2013-2015)
東京医科大学病院 感染症科 診療科長(2013-2015)
東京医科大学病院 国際診療部 部長(2016-2018)
一般病院・診療所 非常勤医師(2017-2019) 東京都(杉並区、新宿区、葛飾区、世田谷区、千代田区、調布市)、神奈川県(横浜市、川崎市)、千葉県(松戸市、流山市)、埼玉県(所沢市、三郷市、蕨市、羽生市、吉川市、上尾市)、栃木県(真岡市)、群馬県(渋川市)、茨城県(古河市)、山形県(庄内町)、岩手県(奥州市)、北海道(旭川市、釧路市、月形町、江差町)、熊本県(天草市)

【役職】
日本感染症学会評議員
日本熱帯医学会評議員
日本化学療法学会評議員
日本渡航医学会評議員
日本臨床寄生虫学会評議員
日本小児科医会国際委員長
国際協力機構海外協力隊派遣前訓練 感染症講師
株式会社 わらべや日洋ホールディングス釧路工場 嘱託産業医
株式会社JM 嘱託産業医
社会福祉法人ちとせ交友会 嘱託医
株式会社 電通 感染症対策アドバイザー
東京都三鷹市 感染症対策アドバイザー
認定資格
日本感染症学会認定感染症専門医・指導医
日本小児科学会認定小児科専門医・指導医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
日本医師会認定産業医
日本感染症学会推薦インフェクションコントロールドクター(ICD)
身体障害者福祉法指定医(免疫機能障害)
国際渡航医学会認定医(CTH® )
米国熱帯医学会認定医(CTropMed® )
一般旅行業務取扱管理者
PADIスクーバダイビングインストラクター(OWSI)
日本臨床内科医会認定医(~2013)日本人間ドック学会認定医(~2014)日本温泉気候物理医学会温泉療法医(~2015)日本化学療法学会抗菌化学療法指導医(~2017)