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最終更新日:2022年7月6日

さんごうつびょう産後うつ病

こちらの記事の監修医師
こころと眠りのクリニック成増
小田 祐子

産後うつ病

概要

女性は妊娠・出産を終えた後、「産褥期」という期間に入ります。妊娠生活で変化した身体や臓器、ホルモンバランスなどが、妊娠前の状態に回復していく期間です。この時期の母親は心身の変化が大きく、また様々な環境要因やストレスが重なって、様々な心身の不調をきたしやすい状態です。中でも出産の後に精神的に不安定な状態になり、抑うつ症状を呈する疾患を「産後うつ病」といいます。産後うつ病を発症しても、「自分が悪い」と思い込んでしまったり、薬や治療の児への影響を懸念したりして受診をためらいがちです。さらに周囲からの理解も得られにくく、産後うつ病になっても適切な治療を受けられていない母親も少なくありません。そのままの状態が続けば、最悪の場合自殺に至ることがあるため、ご家族のサポートと協力が必要です。

原因

妊娠・出産を終えた母親は、精神面においても不安定になりやすい状態です。妊娠・出産に伴う女性ホルモンの大きな変化や、母親になったことによる環境変化、育児に伴う疲労などの諸要因のほか、パートナーや家族など周囲のサポートが不十分なこともあります。また、統合失調症や気分障害といった精神疾患の既往がある場合は、産後に症状が悪化することがあるため注意が必要です。また分娩時に大量出血してショックに陥り、脳の循環不全により下垂体という部位の障害や機能不全が起こることがあり、この一連の症状をシーハン症候群といいます。このシーハン症候群が精神症状発現の誘因になることもあります。

症状

産後うつ病の多くは産後1ヶ月以内に発症し、妊婦の約10-15%程が発症すると言われています。症状は数週間から数カ月間続き、日常生活に支障が出ます。育児への不安や悩み、涙が出る、家事や仕事が上手くできない、気分の落ちこみ、食欲がない、母親としての自信喪失といった抑うつ症状を呈します。これらの症状により母親が児との絆を築けないことがあり、児の発達にも悪影響を及ぼすことがあります。さらに産後うつ病が重症化すると自殺のリスクが高くなり、母子の生命にも関わります。また同じく産褥期に起こる精神的な不調として「マタニティーブルー」があります。産後3〜10日頃に発症し、軽度の抑うつ感や集中力低下、涙もろさや情緒不安定、不眠といった症状があらわれます。しかしこれは生理的なものであるため治療は必要とされず、産後うつとは区別されます。通常2週間程度で軽快しますが、マタニティーブルーから産後うつ病に移行することもあるため、症状が遷延する場合には注意が必要です。また、マタニティブルーがあった女性は産後うつ病発症のリスクが高まると言われています。

検査・診断

産後うつ病は医師による問診を経て診断されます。また産後うつ病の早期発見と支援のため、産後の健診によるEPDS(エジンバラ産後うつ病質問票)を用いたスクリーニングが行われています。マタニティーブルーは生理的なものですが、産後うつ病に移行することもあるため、症状が遷延する場合には鑑別が必要です。またシーハン症候群において、副腎不全や甲状腺機能低下が前面に出た場合に意欲の低下が起こることがあり、これが産後うつ病と間違われることもあります。うつ病の早期診断および早期治療は、母子の生命と児の発育にとって重要です。本人のみならず、家族や友人が症状に気づいた場合には受診を勧めるようにしましょう

治療

産後うつ病の治療は、一般的なうつ病の治療と同じです。薬物療法や環境調整、認知行動療法や対人関係療法などの心理療法が行われます。薬物療法では抗うつ薬や、症状に合わせて睡眠導入剤や不安を抑える薬を用い、授乳に影響のない薬が選択されます。また環境調整については、育児の負担やストレスを軽減するために、パートナーや家族などの協力も大切です。

予防/治療後の注意

出産後に自分の気持ちが落ち込んでいると感じたら、抱え込まずにパートナーや家族、かかりつけ医に相談するようにしましょう。ストレスを溜め込んだり無理をし過ぎたりせず、しっかり身体と心を休めましょう。ストレスを軽減するためにはパートナーや家族などの協力も大切です。また症状が軽くなったと感じて自己判断で服薬を中止すると再び症状が悪化してしまうことがあるため、薬を服用中の場合は医師の指示に従うようにしましょう。

こちらの記事の監修医師

こころと眠りのクリニック成増

小田 祐子

<経歴>
2002年琉球大学医学部医学科卒業
2002年九州大学病院精神科入局・医学博士
2017年米国留学

<所属学会>
日本精神神経学会
日本うつ病学会
日本生物学的精神医学会
日本精神神経薬理学会

<認定・専門資格>
日本精神神経学会認定指導医
精神保健指定医
日本精神神経学会認定専門医