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最終更新日:2022年10月2日

だぶりゅーぴーだぶりゅーしょうこうぐんWPW症候群(ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群)

こちらの記事の監修医師
三九朗病院
伊藤 重範

WPW症候群
WPW症候群

概要

WPW症候群は、先天的(生まれつき)に心臓の正常な伝導路以外に副伝導路(ケント束)が存在することにより、上室性の頻脈性不整脈を引き起こすことのある症候群です。この疾患は珍しいものではなく、健康診断では1,000人に2、3人程度はみられるとされています。WPW症候群の患者さんは普段は何の症状もないことが多いですが、頻脈発作により動悸が出現することがあります。頻脈発作には、房室回帰頻拍と発作性心房細動の2種類があります。また、WPW症候群の症例を発表した、Louis Wolff、John Parkinson、Paul Dudley Whiteの3名の名前にちなんでこの疾患名が付けられています。

原因

WPW症候群は、先天性疾患であると言われています。通常の心臓での電気の伝わり方は、洞房結節・心房・房室結節・His束・脚・プルキンエ線維・心室と順に一方向に伝わります。一方、WPW症候群では、ケント束と呼ばれる副伝導路を経由して心房から直接心室へ電気的興奮が伝わり、早期興奮波の心電図所見としてδ波という波形が認められるのが特徴です。

症状

WPW症候群は、普段は無症状であり、時に頻脈発作を起こす際に、突然脈が速くなり・突然停止することが特徴です。房室回帰頻拍での症状は、動悸やふらつき、胸痛・息苦しさ・呼吸困難などで、発作性心房細動が生じた際はもっと症状の強い場合が多く意識消失をきたす時もあります。

検査・診断

WPW症候群ではδ波を12誘導心電図、発作性頻拍をホルター心電図によって診断します。

治療

WPW症候群は、無症状のまま一度も発作を起こさない方も多く、症状がない方に対しては、健診等で指摘されても特に治療の必要はなく経過をみられることが多いです。明確なルールはないですが、1年に1回程度または年に1回未満であれば経過観察となります。頻脈発作がある場合には、迷走神経手技による停止法として、バルサルバ手技(深呼吸の状態で息こらえをする)や冷たい水をのむ・冷たい水で顔を洗うなどがあります。ATP(アデノシン三リン酸)の急速静注やカルシウム拮抗薬(ベラパミル)の静脈注射が一般的によく使用され有効です。WPW症候群に合併した心房細動の場合には、心室拍数の過度の上昇により心室細動や突然死につながる可能性があります。ベラパミルの注射は心室細動を引き起こす可能性があり禁忌で、電気ショックが第一選択となります。また、発作を繰り返す場合は、Naチャンネル遮断薬、カルシウム拮抗薬やベータ遮断薬の内服が予防に効果的とされています。根治率が高い高周波カテーテル焼灼術(カテーテルアブレーション)も多く実施され第一選択となりつつあります。この高周波カテーテル焼灼術は、局所麻酔下にて、治療用の電極カテーテル(焼灼術用カテーテル)を静脈内に挿入し、副伝導路の部位に当てて高周波と呼ばれる電気を流します。電極と心臓との接触面が50~60度ぐらいまで熱くなり、その熱エネルギーで副伝導路の心筋細胞が機能しなくなります。これで副伝導路が電気的に活動しなくなり頻脈発作が起きなくなります。

予防/治療後の注意

WPW症候群は、交感神経緊張で頻拍発作が生じることがあり、日常生活で過度のストレスや不眠を避けることが重要です。また、高周波カテーテル焼灼術をしない場合には、一旦発作が収まっても、頻拍発作を繰り返し易いです。その度に来院して点滴で停止させる、もしくは発作を予防する目的で内服治療を続けます。つまり、薬物治療は病気を治す訳ではなく、あくまでも内服している間の頻拍発作予防にすぎません。その為に基本的に飲み続ける必要があり、経過観察の場合には、年に1回程度は心電図やホルター心電図を取り、頻拍発作が出現していないかを確認する必要があります。

こちらの記事の監修医師

三九朗病院

伊藤 重範

(所属) 
医療法人三九会 三九朗病院 循環器内科

(専門領域)
循環器病学 心臓病・生活習慣病への運動療法 心血管病へのカテーテル治療 

(経歴)
名古屋市立大学医学部卒 医学博士
名古屋市立大学第一内科、豊橋ハートセンター、名古屋市立東部医療センター等で循環器疾患の診療と研究に従事。その間、米国ワシントンホスピタルセンターへ心臓カテーテル治療研究のため留学。

(資格)
日本内科学会 総合内科専門医
日本循環器学会 専門医
日本心臓病学会 正会員(FJCC)
日本心血管インターベンション治療学会名誉専門医
日本心臓リハビリテーション学会 指導士
日本医師会認定 健康スポーツ医 産業医