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最終更新日:2022年10月3日

まんせいじんぞうびょう慢性腎臓病(CKD)

こちらの記事の監修医師
東京医科大学病院
平澤 陽介

慢性腎臓病(CKD)

概要

腎臓は尿をつくる臓器で、腰の辺りの背中側に、背骨をはさんで左右に1つずつ位置しています。そら豆のような形をした、握りこぶしくらいの大きさの小さな臓器ですが、毎日150-200Lもの血液をろ過して、老廃物を尿として体外に排泄しています。尿をつくる他にも、体液の量や浸透圧・血圧を調整したり、体内の酸塩基のバランスを保ったり、さらには血液を作るホルモンの分泌や、ビタミンDを活性化することで骨を健康に保つなどの多くの働きをしており、私たちの健康において重大な役割を担っている臓器です。腎臓の機能が慢性に低下した状態を慢性腎臓病(CKD)といい、「腎臓の障害」もしくは「腎機能低下」が、3か月以上持続している状態を指します。日本は味噌汁や漬物を想像してもお分かりのように、食事の多くが塩辛いものが多く、幼少時から腎臓に負担をかけているため、加齢とともにCKDを患うことが多く、実際に日本国内の患者数は1330万人と推測され、成人の8人に1人が患わっていることになり、人工透析を受けている患者様もすでに34万人を超え、その数は毎年数千から1万人ずつ増え続けており、CKDは新たな国民病とまで言われています。CKDは自覚症状がないまま進行していくことが多く、進行すると脳卒中や心臓病など様々な疾患のリスクを高めます。CKD発症と進行には糖尿病、高血圧、喫煙、高尿酸血症などの生活習慣が関わっているため、生活習慣を是正し適切な治療をうけることで発症と進行を予防することが必要です。

原因

腎不全により透析治療を必要とする患者のうち、糖尿病による腎臓病を原因とする方が最も多く、40%近くを占めます。1年間に約16000人が糖尿病のために透析治療を開始しています。また、生活習慣病による血管障害もCKDの要因となります。腎臓には心臓から送り出される血液の20%以上が流れており、毎日150-200Lもの血液をろ過しています。しかし、高血圧や脂質異常症、肥満などの生活習慣病によって血管障害が生じることで腎臓にも悪影響を及ぼします。さらに腎臓病が進行することで心血管病が増悪し、更に腎臓病が増悪するという悪循環に陥ることも知られています。

症状

CKDの初期には自覚症状が全くないことがほとんどであり、知らないうちにどんどん進行してしまう可能性があります。進行すると、夜間の尿の増加、立ちくらみや貧血、手足の浮腫(むくみ)、疲労感や息切れなどの症状が現れます。また、食欲低下や吐き気などの消化器症状や、睡眠障害や知覚異常、けいれんなどの神経精神症状がみられることもあります。これらの症状を自覚する段階では、すでにCKDがかなり進行して重度腎不全になっている可能性が高いです。腎臓の働きが極度に低下して起こる全身の変化を尿毒症といい、そのまま治療をしなければ生命にも関わる深刻な事態となります。尿毒症は腎不全の末期状態ですが、腎機能が緩やかに悪化した場合などは自覚症状がなく、検査して初めて分かることもあります。

検査・診断

腎臓の働きを判断する指標として、血清クレアチニン値や、eGFR(推算糸球体ろ過量)の数値が用いられ、この2つの指標と尿中のたんぱく質から腎臓の状態を評価します。GFRは糸球体が1分間にどれくらいの血液を濾過して尿を作れるかを示す値です。一般的には、①尿検査、画像診断、血液検査、病理などで腎障害の存在が明らかで、0.15g/gCr以上のタンパク尿(30mg/gCr以上のアルブミン尿)があること、②GFR(eGFR)が60(ml/分/1.73m2)未満に低下していること、これら①、②のいずれかまたは両方が3か月以上持続した状態がCKDと診断されます。

治療

CKDはその原因や進行度に応じて治療目標が定められます。基本的にダメージを負った腎臓が回復することは困難なため、それ以上悪くさせない腎機能の悪化の予防がまずはメインの治療になります。初期では食事療法や血圧管理、薬物療法などで腎機能の悪化を予防します。腎機能の悪化を防ぐには、治療を継続することが重要であるため、医師の指示に従いしっかり受診するようにしましょう。症状が進行して末期腎不全となると、尿毒症の症状が強くなるため、なんらかの腎代替療法が必要となり、対症療法として人工透析療法(腹膜透析や血液透析)、根治療法として腎臓移植があります。

予防/治療後の注意

近年では医療技術が進歩し、早期に治療を開始すれば、腎臓の機能の低下を防いだり、遅らせたりすることが可能になりました。症状がないからといって診察や治療を受けなかったり、生活習慣を改めなかったりすると、気付かないうちに腎臓の状態が悪化することがあります。定期的に健診、検査を受けるとともに、異常があればすぐにかかりつけ医に相談し、しっかり治療をするようにしましょう。また糖尿病や高血圧、喫煙、高尿酸血症などの生活習慣はCKDのリスクとなるため、食事管理や適度な運動、禁煙といった生活習慣の是正を心がけましょう。

こちらの記事の監修医師

東京医科大学病院

平澤 陽介

〇診療科:泌尿器科

【学歴・職歴】
2008年3月 北海道大学医学部医学科卒業
2010年3月 横浜労災病院 初期研修修了
2011年4月 慶應大学病院 泌尿器科 助教
2014年4月 東京医科大学病院 泌尿器科 助教
2018年4月 東京医科大学病院 泌尿器科 助教・医長 医学博士取得
2019年5月 Cedars Sinai (アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス)にResearch fellowとして留学
2021年4月 東京医科大学病院 泌尿器科 講師

【資格】
日本泌尿器科学会 専門医・指導医
日本内分泌学会 専門医
日本ロボット外科学会 専門医 国内B級ライセンス
日本ロボット外科学会 (ダビンチ)認定医 certificate取得
泌尿器ロボット手術 プロクター認定医 手術指導医

【受賞歴・獲得助成金】
①アメリカ泌尿器科学会ベストポスター賞(2012年, アメリカ, アトランタ)
「Transurethral enucleation with bipolar versus open prostatectomy for patients with large prostate > 70cc」
②ヨーロッパ泌尿器科学会ベストポスター賞(2016年, ドイツ, ミュンヘン) 
「Impairment in Activities of Daily Living after radical cystectomy among elderly aged over 80. Assessment based on 6778 cases」
③埼玉地方会 ベストプレゼンテーション賞 (2011年)
後腹膜繊維症に対する腹腔鏡下尿管剥離術の検討
④科学研究費 2017-2018年 難治性前立腺癌に対するタキサン系抗癌剤とNFκB阻害剤を用いた新規治療戦略開発
⑤上原記念生命科学財団 海外リサーチフェローシップ 2020年 膀胱癌に対する新規免疫治療の効果予測バイオマーカーの開発
⑥佐々記念賞 「Sarcopenia as a Novel Preoperative Prognostic Predictor for Survival in Patients with Bladder Cancer Undergoing Radical Cystectomy Yosuke Hirasawa, Jun Nakashima, Daisuke Yunaiyama et al.」
⑦東京医科大学科研費フォローアップ助成金 去勢抵抗性前立腺癌に対する新規治療戦略の確立

他、著作論文多数