最終更新日:2022年11月29日
さいとめがろういるすはいえんサイトメガロウイルス肺炎

こちらの記事の監修医師
グローバルヘルスケアクリニック
水野 泰孝
概要
サイトメガロウイルス肺炎はヒトサイトメガロウイルス(以下CMVと記載)の感染によっておこる肺炎です。CMVは通常、幼少時期に不顕性感染(感染しても症状がでない)の形で感染します。そして、臓器移植後、免疫不全状態などのときにCMVが活性化して間質性肺炎が発症します。症状は発熱、咳、呼吸困難などです。症状からCMV肺炎を疑い、CT検査、血液検査、気管支鏡検査などで診断します。CMV高力価γグロブリンおよび抗ウイルス薬としてガンシクロビル、ホスカルネットで治療します。CMVが活性化しやすい状態のときには予防が大切です。
原因
CMVは通常、幼少時期に不顕性感染の形で感染します。感染経路は、産道感染、母乳感染、唾液を介した感染などです。感染した乳幼児は数年にわたって唾液・尿中にCMVを排せつするため、保育園などで子ども同士の密接な接触を介して感染が広がります。そして、生涯その感染者の体内にCMVが潜みます。その後、性行為や輸血によっても感染するウイルスです。その中で、臓器移植後、免疫不全状態などのときにCMVが活性化して間質性肺炎が発症します。また、成人の敗血症性急性呼吸促拍症候群に対してステロイド治療をおこなった場合、数週間後に間質性肺炎を発症することがあります。こういった際におこる間質性肺炎がCMV肺炎です。さらに、乳幼児期にCMVに感染していない女性が、成人になって妊娠中に感染すると、胎盤を介して胎児に感染(頻度20~40%)して、生まれてきた新生児は先天性CMV感染症患児となるリスクがあります(頻度5~10%)。
症状
先天性CMV感染症は出生時には肺炎をおこしません。また、新生児、乳児期感染でも、感染してもほとんど症状はありません。ただし、早産児・低出生体重児では母親から十分な抗体を受けついておらず、CMVが活性化してCMV肺炎をおこすことがあるため要注意です。乳幼児期にCMVに感染せず、成人になって輸血を受けたり、臓器移植を受けたりして、CMVに初感染するとCMV肺炎をおこすことがあります。また、乳幼児期にCMVに感染して抗体をもつ人でも、免疫抑制剤の投与時にCMVが活性化してCMV肺炎をおこすことがあります。さらにHIV感染により免疫能が低下するとCMV肺炎をおこすことがあります。CMV肺炎の症状は発熱、咳、呼吸困難などです。
検査・診断
症状からCMV肺炎を疑い、CT検査、血液検査、気管支鏡検査などで診断します。CT検査ではモザイク状のスリガラス影、浸潤影、散在する小結節影が特徴的です。血液検査ではantigenemia法でCMV抗原を検出したり、ウイルス特異的IgM抗体を測定したりします。先天性CMV感染症では、尿からCMVを検出します。最も使われるのはantigenemia法であり、CMVに感染した細胞が血液中にどのくらいあるのかがわかり、この結果を参考にしながら抗ウイルス剤の適応を決めるのが一般的です。CMV肺炎を疑う場合は気管支鏡検査でCMV抗原を確認して診断することがあります。
治療
CMV高力価γグロブリンおよび抗ウイルス薬としてガンシクロビル、ホスカルネットで治療します。骨髄移植時にCMV肺炎を発症した場合は、骨髄抑制の副作用をもつガンシクロビルは使用しにくく、ホスカルネットが用いられます。腎移植時にCMV肺炎を発症した場合は、腎障害の副作用をもつホスカルネットは使用しにくく、ガンシクロビルが用いられます。そして、いずれの場合もCMV高力価γグロブリンを併用します。HIV感染者の場合は、ガンシクロビル、ホスカルネットのどちらでも使用が可能です
予防/治療後の注意
先天性CMV感染症の予防のため、未感染妊婦は乳幼児との密接な接触を避けてください。早産児は感染母体からの母乳をさけることが必要です。移植患者においては、移植前に抗体検査を受け、CMV肺炎発症のリスク程度を調べます。HIV感染症の場合HIVコントロールに用いられる抗レトロウイルス薬がCMV感染症の予防に役立ちます。また、臓器移植を受けた場合は、CMV感染症の予防のためにガンシクロビルが投与されます。ガンシクロビルの副作用で骨髄抑制、不妊症がみられることがあるので注意が必要です。

こちらの記事の監修医師
グローバルヘルスケアクリニック
水野 泰孝
〇診療科:内科・感染症内科・小児科・アレルギー科・トラベルクリニック
【学歴 】
私立駒場東邦中・高等学校(1982-1988)
昭和大学医学部医学科(1988-1994)
東京慈恵会医科大学大学院医学研究科(熱帯医学専攻)(1998-2003)
長崎大学熱帯医学研究所(1999)
(Diploma in Tropical Medicine)
タイ王国マヒドン大学熱帯医学部(2001)
(Diploma in Tropical Medicine & Hygiene; DTM&H)
バングラデシュ国下痢症疾患研究所(2002)
(Workshop on Emerging and Re-emerging pathogens)
連合王国ロンドン大学公衆衛生・熱帯医学部(2005)
(Travel Medicine Short Course)
【職歴】
東京慈恵会医科大学付属病院 臨床研修医(1994-1996)
東京慈恵会医科大学付属柏病院・第三病院 小児科助教(1996-1998)
東京慈恵会医科大学付属病院 感染制御部 診療医員(2003-2004)
国立国際医療センター(現:国際医療研究センター)国際医療協力局 厚生労働技官(2004-2005)
国立国際医療センター病院 国際疾病センター(現:国際感染症センター)厚生労働技官(2005-2010)
外務省 在ベトナム日本国大使館 一等書記官兼医務官(厚生労働省より出向)(2007-2009)
国際協力機構(JICA)感染症顧問医(2009-2017)
厚生労働省羽田空港検疫所 非常勤医師(2011-2019)
東京医科大学病院 感染制御部・渡航者医療センター 准教授(2010-2018)
東京医科大学病院 感染制御部 部長(2013-2015)
東京医科大学病院 感染症科 診療科長(2013-2015)
東京医科大学病院 国際診療部 部長(2016-2018)
一般病院・診療所 非常勤医師(2017-2019) 東京都(杉並区、新宿区、葛飾区、世田谷区、千代田区、調布市)、神奈川県(横浜市、川崎市)、千葉県(松戸市、流山市)、埼玉県(所沢市、三郷市、蕨市、羽生市、吉川市、上尾市)、栃木県(真岡市)、群馬県(渋川市)、茨城県(古河市)、山形県(庄内町)、岩手県(奥州市)、北海道(旭川市、釧路市、月形町、江差町)、熊本県(天草市)
【役職】
日本感染症学会評議員
日本熱帯医学会評議員
日本化学療法学会評議員
日本渡航医学会評議員
日本臨床寄生虫学会評議員
日本小児科医会国際委員長
国際協力機構海外協力隊派遣前訓練 感染症講師
株式会社 わらべや日洋ホールディングス釧路工場 嘱託産業医
株式会社JM 嘱託産業医
社会福祉法人ちとせ交友会 嘱託医
株式会社 電通 感染症対策アドバイザー
東京都三鷹市 感染症対策アドバイザー
認定資格
日本感染症学会認定感染症専門医・指導医
日本小児科学会認定小児科専門医・指導医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
日本医師会認定産業医
日本感染症学会推薦インフェクションコントロールドクター(ICD)
身体障害者福祉法指定医(免疫機能障害)
国際渡航医学会認定医(CTH® )
米国熱帯医学会認定医(CTropMed® )
一般旅行業務取扱管理者
PADIスクーバダイビングインストラクター(OWSI)
日本臨床内科医会認定医(~2013)日本人間ドック学会認定医(~2014)日本温泉気候物理医学会温泉療法医(~2015)日本化学療法学会抗菌化学療法指導医(~2017)