最終更新日：2022年10月3日
しんぶじょうみゃくけっせんしょう深部静脈血栓症
こちらの記事の監修医師
三九朗病院
伊藤 重範
概要
深部静脈血栓症は脚や骨盤（稀に腕）にある深部静脈と呼ばれる血管に血栓（血の塊）ができて詰まってしまう病気です。静脈から心臓や肺に向かって流れた血栓が肺の血管を詰まらせた場合、肺塞栓症を引き起こします。肺塞栓症では呼吸困難やショック状態を引き起こし命に関わることがあり、注意が必要です。飛行機で長距離移動する際に長時間狭い場所で同じ姿勢をとることで発症するため、「エコノミークラス症候群」とも呼ばれています。
原因
深部静脈血栓は血管内で①血液が固まりやすい②静脈内血液の流れが悪い③静脈が傷ついているという3つの状態が満たされた場合に起こりやすく、脱水や長時間の安静（同じ姿勢で動かない状態）により生じます。エコノミークラス症候群の他にも手術後の安静、妊娠、子宮筋腫、経口避妊薬等の血液凝固を亢進する薬物の使用、ギプス固定、がん治療、血液凝固異常がある人、高齢者などで深部静脈血栓症のリスクが高まるといわれています。最近では被災地での避難生活や車中泊でも見られており予防策が喚起されています。安静から活動し始めた時に深部静脈ではがれた血栓が心臓を通過した後肺の血管を塞ぎ、肺塞栓症を引き起こす為注意が必要です。
症状
主な症状としては下肢がむくんで腫れ上がり、痛みや違和感を生じたり、皮膚が赤黒く変色します。片方の脚だけに症状が現れた場合は、深部静脈血栓の疑いが強くなります。しかし、急激に発症した場合には上記症状が現れますが、慢性的にゆっくりと発症した場合には浮腫や下肢の倦怠感などの弱い症状しかみられません。深部静脈血栓症から肺塞栓症へ発展すると呼吸困難や胸の痛みが引き起こされ、最悪の場合突然死に至ることもあります。
検査・診断
深部静脈血栓症は軽度では痛みや腫れが全くみられないことがあり、発見が困難です。問診などの情報からこの病気が疑われた場合には、 超音波検査を行って診断を確定します。血液検査では血液の凝固や溶解の機能を示す検査値から推定することも可能です。呼吸困難や酸素飽和度の低下など肺塞栓症が疑われる場合には、同時に造影CT検査や肺血流シンチグラムによる診断を行います。
治療
深部静脈血栓症の一般的な治療は薬物療法です。ヘパリンの点滴やワルファリン、直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)の経口摂取など血液をさらさらにする薬を用いて血液が固まるのを抑制する抗凝固療法が行われます。最近はDOACにより比較的入院期間が短く、場合によっては外来治療も行われています。肺塞栓症を発症している場合、深部静脈血栓症と同時に治療することが必要です。肺塞栓症に対しても血液凝固薬による治療が第一選択となりますが、出血して抗凝固薬が使用できなかったり、再発で致死的になる可能性のある場合には、下大静脈フィルターが使用されます。血栓の存在部位や大きさによる評価で症状が重い場合は、血栓溶解療法、カテーテル治療、外科治療などの方法が追加で選択されます。
予防／治療後の注意
深部静脈血栓症は血流を滞らせないようにする予防が重要です。静脈の流れを良くするために長時間の同じ姿勢を避け、定期的に足の運動を行ったり小まめに水分補給するなどが効果的です。他にも脚を圧迫する弾性ストッキングや弾性包帯の着用も予防になりますが、動脈の血流障害がある方や神経症障害がある方は注意が必要です。手術後の発症予防にDOACが使用される場合があります。再発防止のためには医師と相談しながら深部静脈血栓症になった原因を調べて対策をとることや、治療を継続することが重要です。
こちらの記事の監修医師
三九朗病院
伊藤 重範
（所属）
医療法人三九会 三九朗病院 循環器内科
（専門領域）
循環器病学 心臓病・生活習慣病への運動療法 心血管病へのカテーテル治療
（経歴）
名古屋市立大学医学部卒 医学博士
名古屋市立大学第一内科、豊橋ハートセンター、名古屋市立東部医療センター等で循環器疾患の診療と研究に従事。その間、米国ワシントンホスピタルセンターへ心臓カテーテル治療研究のため留学。
（資格）
日本内科学会 総合内科専門医
日本循環器学会 専門医
日本心臓病学会 正会員（FJCC）
日本心血管インターベンション治療学会名誉専門医
日本心臓リハビリテーション学会 指導士
日本医師会認定 健康スポーツ医 産業医
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