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最終更新日:2022年9月6日

きょけつせいだいちょうえん虚血性大腸炎

こちらの記事の監修医師
めじろ内科クリニック
久野 伸夫

概要

虚血性大腸炎とは、大腸に血液を送る動脈の血流が阻害され、血液が不足することで大腸粘膜に障害が起き、炎症を起こして粘膜のただれや潰瘍などが生じる病気です。主な症状は左腹部の強い痛みと、下痢に引き続く血便です。虚血性腸疾患の中では最も頻度が高く、一般的には60歳以上の女性に多い疾患ですが、近年では若い人にも増えてきています。ほとんどの場合は一過性の症状であり予後は良好ですが、時に手術が必要なこともあります。便秘や動脈硬化が発症のリスクを高めます。そのため発症や再発の予防には、便通を改善し生活習慣を整えることが重要です。

原因

虚血性大腸炎は、血管の原因と腸管の原因の両方が合わさって発症すると考えられています。血管の原因として動脈硬化があり、大腸粘膜への血流の低下と血液不足(虚血)が引き起こされます。そのため高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病など、動脈硬化を引き起こす基礎疾患をもつ人は発症のリスクが高まります。腸管の原因として最も重要なのは便秘です。慢性的な便秘があると、留まった便によって腸管壁が持続的に引き伸ばされた状態となり、その結果血管を圧迫し虚血が引き起こされます。また排便時に強くいきむことで腹圧がかかり、さらに大腸粘膜への血流が低下することがあります。

症状

虚血性大腸炎では、突然の強い腹痛に続いて下痢や血便がみられるようになるのが典型的です。ほとんどの方が、血便が出て驚かれて受診されます。好発部位は、下行結腸やS状結腸といった、身体の左側に位置する大腸の部位であるため、腹痛は多くの場合、左の側腹部から下腹部あたりに出現します。腹痛に吐き気や冷や汗を伴うこともあります。また大腸壁の潰瘍が深く、発症後も遷延する場合は、徐々に大腸の内腔が狭くなってしまうこと(狭窄)があり、腸管内容物の通過障害を併発して便の流れが途中で障害される腸閉塞(イレウス)も希ですが起こりえます。

検査・診断

虚血性大腸炎は、画像診断と血液検査、身体症状の問診により診断がなされます。主に大腸内視鏡検査が行われ、虚血部分の出血を伴う赤く腫脹した粘膜や腸管の形に沿った潰瘍がみられます。腹部CT検査や腹部超音波検査では、虚血している大腸の壁が厚く腫れて見えます。また血液検査では、炎症や貧血がないかを調べます。炎症の活動期や、腹部CT検査で腸管壊死の所見が認められるような場合は、大腸内視鏡検査により腸管穿孔のリスクもあるため、検査は無理せず慎重に行います。また近年は行なわれることは減りましたが、水溶性の造影剤で大腸を検査する注腸造影で、腸管が親指で押されたように狭く見える特徴的な所見(拇指圧痕像)が認められます。

治療

虚血性大腸炎は基本的には予後良好な病気です。血便量が少なく軽い場合は、腸管を安静にする食事指導などの保存的治療で軽快します。血便が続き症状が強い場合は、入院加療を要することが多いです。絶食と安静による保存的療法で腸を休ませ、症状の改善を図っていきます。絶食中は脱水を防ぐため、水分・栄養補給の点滴が行われます。炎症が懸念される場合は抗生物質の点滴も行います。症状が落ち着いたら少量のお粥から食事を開始し、食事形態を段階的に元に戻していきます。通常、1〜2週間程度で状態が安定していきます。腸管の狭窄が進行して便の通りが悪くなった場合や、まれにみられる大量出血や腸管に穴が開くような重症の場合は、手術が必要になることがあります。しかし外科手術が必要となる症例は稀で、保存的治療のみで済む場合がほとんどです。また虚血性大腸炎は再発することがあり、虚血の要因となっている病気の根本的な改善も重要です。便秘や生活習慣病のコントロールをしっかりと行っていく必要があります。

予防/治療後の注意

虚血性大腸炎のほとんどは一過性の病気であり、予後は良好です。しかし4人に1人と再発のある疾患であるため、治療後も便通や生活習慣の改善に意識的に取り組むことが重要です。便通改善のために水や食物繊維の多い食事をとり、適度な運動を行い、また動脈硬化を引き起こす生活習慣病があれば治療をしっかり行いましょう。また、腹痛や血便といった症状は、大腸がんをはじめ様々な大腸疾患でみられます。適切な治療を早期に受けられるよう、これらの症状があれば早めに病院を受診するようにしましょう。

こちらの記事の監修医師

めじろ内科クリニック

久野 伸夫

〇診療科 :内科、消化器科、リハビリテーション科
〇アクセス:東京都豊島区目白3-5-11 NOBビル3階

【経歴】
H5.3月 国立山梨医科大学卒業
H5.4月 日本赤十字社医療センター内科研修
H7.4月 国立山梨医科大学大学院博士課程
H11.4月 山梨県厚生連健康管理センター内科勤務
H12.1月 日本赤十字社医療センター第1内科勤務
H18.12月 めじろ内科クリニック院長

【資格】
医学博士
日本内科学会総合内科専門医・指導医
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本糖尿病学会専門医
日本医師会認定産業医
労働衛生コンサルタント(保健衛生)
電通健康管理センター非常勤医師