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最終更新日:2022年9月6日

らいしょうこうぐんライ症候群

こちらの記事の監修医師
グローバルヘルスケアクリニック
水野 泰孝

概要

インフルエンザや水痘といったウイルス感染症の治療に、アスピリンなどのサリチル酸系薬剤を使用すると、ライ症候群のリスクが高まると言われています。急性脳症を起こし、激しい悪心、嘔吐、錯乱が出現します。さらに進行すると、痙攣し、呼吸が止まることがあります。症状、血液検査、頭部CT・MRI、髄液検査、肝生検でライ症候群と診断し、集中治療室で頭蓋内圧、血糖値のコンロールを中心に治療します。ライ症候群の死亡率平均は21%で、治癒後も知的障害、けいれん性疾患、脳神経麻痺などの後遺症がみられることがあります。最近では、サリチル酸系薬剤は小児のインフルエンザや水痘への投与は勧められない薬と考えられています。そのため、小児に対するサリチル酸系薬剤の使用が減少し、ライ症候群はまれな病気となりました。

原因

ライ症候群の原因は不明ですが、インフルエンザや水痘といったウイルス感染症の治療にアスピリンを使用すると、ライ症候群のリスクが高まると言われています。アスピリンは歴史のあるサリチル酸系薬剤で、解熱鎮痛薬として長年使われてきました。ただし、熱を抑えるだけの対症療法薬であり、熱の原因となるウイルスには効果がありません。以前はインフルエンザまたは水痘にかかった18歳未満の小児に、サリチル酸系薬剤(アスピリンなど)を使用し、ライ症候群が多く発生していました。米国においては、サリチル酸系の薬剤を減らすことにより、ライ症候群の発生が減少したというデータがあります。また日本においても、インフルエンザまたは水痘にかかった小児に対して、サリチル酸系薬剤は原則禁忌となっています。ライ症候群では、ミトコンドリアの機能が損なわれ、脂肪酸とカルニチンの代謝が阻害されます。

症状

ライ症候群の初期にはインフルエンザまたは水痘などの、発熱、関節痛、筋肉痛、倦怠感などの症状が見られます。それから5∼7日目に急性脳症を起こし、激しい悪心、嘔吐、錯乱が出現します。他に見られる症状は、過敏性、脱力感、視覚異常・聴覚異常、意識障害、興奮などです。さらに進行すると、反応が鈍くなり、痙攣し、呼吸が止まることがあります。合併症として、低血圧、不整脈、低血糖、肝障害、高アンモニア血症、下血、肺炎、呼吸不全なども見られます。

検査・診断

症状からライ症候群を疑い、下記の検査を進めます。血液検査で、肝臓関連数値、アンモニア濃度、出血凝固系、さらに頭部CTあるいはMRI、腰椎穿刺で髄液検査も必要です。これらの検査から、敗血症、ウイルス性脳炎、中毒、代謝性疾患、他の薬物によるものなどを鑑別します。また肝生検で脂肪沈着が見られれば診断確定です。ライ症候群の重症度によりステージⅠ~Ⅴに分類し、治療方針を決め、予後を推定します。

治療

ライ症候群の特異的な治療法はありませんが、全身状態を整えながら自然治癒を待つのが基本方針です。具体的には集中治療室で治療し、頭蓋内圧コントロールのため、ベッドの頭側を高くし、気管挿管して呼吸数を増やしたり、輸液を制限したり、体内の水分を減らす薬を投与したりします。時には外科的に開頭減圧術を施行することもあります。また、血糖値のコントロールのためブドウ糖を投与します。

予防/治療後の注意

ライ症候群の死亡率平均は21%ですが、ステージにより死亡率は異なり、軽症の場合は2%未満、重症の場合は80%を超えます。無事に治癒すれば再発はまれです。ただし、知的障害、けいれん性疾患、脳神経麻痺などの後遺症がみられることがあります。サリチル酸系薬剤の使用を控えることにより、ライ症候群の発生が減るのは明らかです。それゆえに、サリチル酸系薬剤は小児のインフルエンザや水痘への投与は勧められない薬と考えられています。代わりに、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセンナトリウムなどを使用する傾向にあります。小児に対するサリチル酸系薬剤の使用が減少しているため、ライ症候群はまれな病気となりました。

こちらの記事の監修医師

グローバルヘルスケアクリニック

水野 泰孝

〇診療科:内科・感染症内科・小児科・アレルギー科・トラベルクリニック

【学歴 】
私立駒場東邦中・高等学校(1982-1988)
昭和大学医学部医学科(1988-1994)
東京慈恵会医科大学大学院医学研究科(熱帯医学専攻)(1998-2003)
長崎大学熱帯医学研究所(1999)
(Diploma in Tropical Medicine)
タイ王国マヒドン大学熱帯医学部(2001)
(Diploma in Tropical Medicine & Hygiene; DTM&H)
バングラデシュ国下痢症疾患研究所(2002)
(Workshop on Emerging and Re-emerging pathogens)
連合王国ロンドン大学公衆衛生・熱帯医学部(2005)
(Travel Medicine Short Course)

【職歴】
東京慈恵会医科大学付属病院 臨床研修医(1994-1996)
東京慈恵会医科大学付属柏病院・第三病院 小児科助教(1996-1998)
東京慈恵会医科大学付属病院 感染制御部 診療医員(2003-2004)
国立国際医療センター(現:国際医療研究センター)国際医療協力局 厚生労働技官(2004-2005)
国立国際医療センター病院 国際疾病センター(現:国際感染症センター)厚生労働技官(2005-2010)
外務省 在ベトナム日本国大使館 一等書記官兼医務官(厚生労働省より出向)(2007-2009)
国際協力機構(JICA)感染症顧問医(2009-2017)
厚生労働省羽田空港検疫所 非常勤医師(2011-2019)
東京医科大学病院 感染制御部・渡航者医療センター 准教授(2010-2018)
東京医科大学病院 感染制御部 部長(2013-2015)
東京医科大学病院 感染症科 診療科長(2013-2015)
東京医科大学病院 国際診療部 部長(2016-2018)
一般病院・診療所 非常勤医師(2017-2019) 東京都(杉並区、新宿区、葛飾区、世田谷区、千代田区、調布市)、神奈川県(横浜市、川崎市)、千葉県(松戸市、流山市)、埼玉県(所沢市、三郷市、蕨市、羽生市、吉川市、上尾市)、栃木県(真岡市)、群馬県(渋川市)、茨城県(古河市)、山形県(庄内町)、岩手県(奥州市)、北海道(旭川市、釧路市、月形町、江差町)、熊本県(天草市)

【役職】
日本感染症学会評議員
日本熱帯医学会評議員
日本化学療法学会評議員
日本渡航医学会評議員
日本臨床寄生虫学会評議員
日本小児科医会国際委員長
国際協力機構海外協力隊派遣前訓練 感染症講師
株式会社 わらべや日洋ホールディングス釧路工場 嘱託産業医
株式会社JM 嘱託産業医
社会福祉法人ちとせ交友会 嘱託医
株式会社 電通 感染症対策アドバイザー
東京都三鷹市 感染症対策アドバイザー
認定資格
日本感染症学会認定感染症専門医・指導医
日本小児科学会認定小児科専門医・指導医
日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
日本医師会認定産業医
日本感染症学会推薦インフェクションコントロールドクター(ICD)
身体障害者福祉法指定医(免疫機能障害)
国際渡航医学会認定医(CTH® )
米国熱帯医学会認定医(CTropMed® )
一般旅行業務取扱管理者
PADIスクーバダイビングインストラクター(OWSI)
日本臨床内科医会認定医(~2013)日本人間ドック学会認定医(~2014)日本温泉気候物理医学会温泉療法医(~2015)日本化学療法学会抗菌化学療法指導医(~2017)