最終更新日:2022年7月6日
ねふろーぜしょうこうぐんネフローゼ症候群
こちらの記事の監修医師
鈴木 孝子
概要
ネフローゼ症候群は尿中に大量のタンパクが排泄されることを主症状とする腎臓の疾患です。中でも、腎臓の皮質と呼ばれる腎臓の外側の部分に多数存在する糸球体(しきゅうたい)とよばれる組織に異常が生じます。この糸球体はフィルターの役目を果たしていて、何らかの異常により、タンパクが過剰に排泄されることにより、タンパクの一部であるアルブミンの血中濃度も低下し、全身に浮腫が出現し、浮腫以外にもさまざまな症状が出現します。脂質の血中濃度も上昇します。多くの糸球体腎炎などの腎臓自体によりおこる一次性ネフローゼ症候群、糖尿病や膠原病などの基礎疾患や薬剤性や多くの原因によって二次的に発症するネフローゼ症候群を二次性ネフローゼ症候群と呼びます。一次性ネフローゼ症候群は指定難病であり、年間約2200人から2700人の患者さんが発症していると推測されています。
原因
ネフローゼ症候群の大半を占めている一次性ネフローゼ症候群の場合、腎臓自体の異常によりおこるとされていて、自己免疫や自己抗体の過剰産生など、様々な要因が指摘されていますが、明らかな原因は分かっていません。二次性ネフローゼ症候群の場合は、糖尿病、全身性エリテマトーデス、アミロイドーシス、がん(悪性腫瘍)、メタボリックシンドローム、原虫感染症(マラリアなど)、特定のウイルス感染症など、腎臓以外の要因での様々な疾患がネフローゼ症候群発症の原因となることがあります。また、多くの腎炎が原因で引き起こされる一次ネフローゼ症候群や、腎機能に障害を与える薬剤などの影響によって発症する、二次性ネフローゼ症候群など、虫刺されやウルシ科の植物に対するアレルギーなど、アレルギー反応を基礎として発症することも知られています。
症状
ネフローゼ症候群の症状は、糸球体ろ過の機能障害によって、血液中のタンパク質が減少することによって引き起こされます。血液中のタンパク質の低下によって、全身に水分が溜まりやすくなるため、浮腫、食欲不振、全身の倦怠感、腹痛、タンパク尿(尿が泡立つ)などの症状が初期症状として発現します。特に浮腫の症状は顕著に出現し、夜間には「まぶた」など体の上部に水分が貯まり、日中は足首やふくらはぎなどの体の下部に貯留します。体内の電解質にも異常が生じるため、血圧が大きく変動しやすくなり、低血圧や高血圧などの症状が現れます。また、タンパク質とともに尿中に栄養素が排泄されてしますため、栄養不良に陥ることもあり、特に小児の場合には成長障害が出現する可能性もあります。栄養素の状態に応じて、各種ビタミンやミネラルなどを適切に補っていく必要があります。
検査・診断
尿検査や血液検査を行い、尿中のタンパクと血液中のアルブミン量を測定します。腎臓の状態を確認するために、超音波検査(エコー)やCT、MRIなどの画像検査を必要に応じて追加します。全身的にネフローゼ症候群発症の原因を精査するための検査も行われます。著しい体重減少が見られる場合や高齢者など、がんの関与が疑われる場合も考えられ、腫瘍マーカーなどを測定するがん関連の検査が行われることもあります。また、腎臓そのものを検査するためには、腎生検とよばれる組織生検が必要であり、腎臓の組織を採取する検査が必要になる場合もあります。
治療
ネフローゼ症候群治療にはステロイドが使用されます。ステロイドの投与によって症状が軽減する場合も多く、免疫抑制剤を組み合わせた治療が行われることもあります。ステロイドや免疫抑制薬でも再発を繰り返す場合には、抗体製剤であるリツキシマブを使用することがあります。また、ネフローゼ症候群に伴う症状を緩和しながら、腎臓を保護する作用を期待して、ACE阻害薬やARBとよばれる高血圧の薬を使用します。コレステロールが高くなることが多いので、高コレステロール血症治療薬なども組み合わせて治療します。
予防/治療後の注意
ネフローゼ症候群は、原因究明を行い、正しく診断・治療することで症状を抑え、進行を止めることが可能な疾患です。特定の原因が見つからないこともありますが、ステロイドで適切な治療を行うことで症状が軽快することが多く、合併症を未然に予防する効果が期待できます。食事制限や塩分制限なども重要になるため、正しい生活習慣を心がける必要があります。腎機能の増悪を防止する意味でも、医療機関にはきちんと受診いたしましょう。
こちらの記事の監修医師
鈴木 孝子