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最終更新日:2022年11月29日

あいじーえーじんしょうIgA腎症

こちらの記事の監修医師
あおき内科・さいたま糖尿病クリニック
青木 厚

概要

IgAとは、Immunogloburin A(免疫グロブリンA)の略であり、生体を守る免疫物質の一つです。そして、腎臓の糸球体に慢性の炎症が起こる慢性腎炎のうち、IgA腎症は異常なIgAが糸球体に沈着を起こすタイプです。発見時、小児では10歳代、成人では20歳代が多くみられます。IgA腎症は、ほとんどが無症状であり、検診時に見つかることが多い病気です。検査所見として血尿やたん白尿がみられます。IgA腎症の根本的な治療法はなく、対症療法が行われますが、最近日本ではへん桃パルス療法が行われ、良い成績をあげています。しかし、IgA腎症では慢性的に糸球体の炎症が続き、腎機能が低下していくため、決して予後の良い病気ではありません。

原因

IgA腎症の原因は今のところは不明ですが、最も有力な説を解説します。IgA腎症では、異常なIgAや、それに関係する免疫複合体が腎臓にある糸球体に沈着を生じて慢性の炎症を起こすとされています。そして、その原因は腎臓外にあると考えられているのですが、その根拠は下記の通りです。IgA腎症の患者に腎臓移植すると、約5割の確率でIgA腎症が再発します。また、たまたまIgA腎症患者の腎臓を他の患者に移植したところ、移植した腎臓のIgAの沈着が消えたという報告があります。そのため、IgAの産生に異常があるのではないか、さらにはへん桃がこれに関連しているのではないか、そして異常なIgAが増えると、それにくっつく抗体も増え、それらが固まって免疫複合体となり、免疫複合体が腎臓の糸球体に沈着をおこして慢性の炎症を起こすのではないかと考えられています。IgA腎症は若い人に多くみられますが、他の世代でもみられる病気です。アジア太平洋地域で多くみられ、何らかの人種的な原因があるのではないかと考えられています。

症状

IgA腎症は、ほとんどが無症状であり、検診時に見つかることが多い病気です。10%前後の頻度で扁桃腺炎などの後に目で見ても分かるような血尿が起こることがあります。また、5%以下の頻度でネフローゼ症状群になって、むくみを来すこともあります。

検査・診断

検査結果では、血尿が一番多い所見です。病気が進むとたん白尿も見られます。そして大抵の場合、最初の腎機能は正常です。診断を確定するには、腎生検が必要であり、採取した腎組織に光学顕微鏡や電子顕微鏡で異常なIgA免疫複合体の沈着を認めることで診断します。また血液検査において、血清IgAは30~50%で高値を示します。IgA腎症と鑑別が必要な病気は、急性糸球体腎炎や二次性糸球体腎炎など他の慢性腎炎です。

治療

IgA腎症の根本的な治療法はなく、対症療法が行われます。減塩、脂質や血糖値のコントロール、体重管理、禁煙などを促し、病態に応じて降圧薬、抗血小板薬あるいは免疫抑制薬で治療することがあります。最近日本では、異常なIgAの発生を抑えるために、へん桃摘出術が行われるようになりました。この手術では、糸球体の炎症を抑えるためにステロイドパルス療法を併用します。この治療法は「へん摘パルス療法」と呼ばれ、良い成績をあげています。治療がうまくいけば、透析の回避のみならず、心臓や脳の血管障害の予防につながるはずです。

予防/治療後の注意

IgA腎症では慢性的に糸球体の炎症が続き、腎機能が低下していきます。成人発症のIgA腎症は、治療しないと10年で15~20%が、20年で40%前後が腎不全になってしまいます。決して予後がよい疾患ではありません。ただし、治療により血尿、たん白尿がなくなれば、腎不全になるのを予防できます。ちゃんと治療すれば、10年後に全てのIgA腎症の患者が腎不全を起こさなかったという報告もあるくらいです。治療に際して、高血圧、高度たん白尿、高年齢が予後判定に影響します。小児発症のIgA腎症は成人よりも予後が良いとされています。IgA腎症は難病医療法で指定難病に認定され、医療費助成制度を利用できる病気です。

こちらの記事の監修医師

あおき内科・さいたま糖尿病クリニック

青木 厚

【経歴】
2002年 福井医科大学(現 福井大学)卒業
2002年 長野赤十字病院
2004年 川崎市立川崎病院 内科
2006年 自治医科大学附属さいたま医療センター 総合診療科
2008年 自治医科大学附属さいたま医療センター 内分泌代謝科
2010年 自治医科大学大学院 医学研究科 入学
2014年 自治医科大学大学院 医学研究科 卒業 医学博士 習得
2015年 青木内科・リハビリテーション科 開設