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最終更新日:2022年3月22日

にんしんこうけつあつしょうこうぐん妊娠高血圧症候群

こちらの記事の監修医師
丸茂レディースクリニック
丸茂元三 院長

概要

妊娠高血圧症候群は、妊婦健診で高血圧と認められた場合のことをいい、妊婦の約10%に発症します。「妊娠中毒症」とよばれたこともある病態であり、妊娠高血圧、妊娠高血圧腎症、加重型妊娠高血圧腎症、高血圧合併妊娠に分類されます。妊娠前の血圧が低血圧傾向の人であっても、妊娠後に高血圧を呈する場合があります。具体的には、妊娠20週以降に初めて高血圧が確認され、分娩後12週までに正常値に戻る場合、妊娠高血圧と診断されます。妊娠高血圧に加え基礎疾患のない肝腎機能障害、血小板の減少、子癇、頭痛、視野障害、子宮胎盤機能不全などを伴う場合には、妊娠高血圧腎症と診断されます。妊娠前または妊娠20週までに高血圧が存在し、妊娠高血圧腎症の症状を伴う場合には、加重型妊娠高血圧腎症と診断され、妊娠高血圧腎症の症状を伴わない場合は、高血圧合併妊娠とよばれます。

原因

妊娠高血圧症候群のはっきりとした原因は明らかになっていません。妊娠後、母体内では様々な血管に作用する因子やホルモンが生成されるため、これらの生体物質が全身の血管に作用することで、高血圧症状を呈すると考えられています。妊娠高血圧症候群のリスク因子として、糖尿病、高血圧、腎機能障害や慢性腎臓病(CKD)の既往歴、肥満傾向、母体の年齢40歳以上、双子などの多胎妊娠、初産婦などが報告されています。

症状

妊娠高血圧症候群も一般的な高血圧症と同様に、自覚症状はほとんどありません。一般的には血圧測定で、収縮期血圧が140mmHg以上、あるいは拡張期血圧が90mmHg以上の場合を高血圧と診断します。尿検査にてたんぱく尿が確認される場合もあります。収縮期血圧が160mmHg以上など重症の場合、頭痛や頭重感、めまいや吐き気などの症状が出現する場合もあります。その他、手足のしびれ、浮腫、ほてり、耳鳴りなどの症状が出現するだけではなく、脳出血や腎障害などの重篤な合併症を発症する危険性もあるため、注意して経過観察を行うことが大切です。

検査・診断

妊娠高血圧症候群の診断は、血圧測定と尿検査による尿中タンパク測定によって行われます。「5分間以上安静後、1~2分の間隔にて2回血圧を測定してその平均値の収縮期血圧が140mmHg以上、あるいは拡張期血圧が90mmHg以上、またはその両方がみられる場合」に高血圧と診断されます。また、「1日当たりの尿たんぱく0.3g以上」で尿たんぱくと診断されます。妊娠20週から産後12週までの間に、高血圧が無かった人が高血圧になった場合には「妊娠高血圧」、妊娠高血圧に加えて、たんぱく尿や肝腎機能障害を伴う場合には「妊娠高血圧腎症」、妊娠前あるいは妊娠20週までに高血圧が存在する場合には「高血圧合併妊娠」、高血圧合併妊娠に加えて、妊娠高血圧腎症の症状を伴う場合には「加重型妊娠高血圧腎症」と診断されます。これら高血圧に起因する疾患を総称して妊娠高血圧症候群と言われています。

治療

妊娠高血圧症候群の治療は、母体の高血圧の状態や妊娠週数、胎児の状態や胎児への影響などを考慮して慎重に行う必要があります。高血圧の症状が軽度の場合には、食生活や生活習慣の改善によって血圧を安定させることを心がけます。妊娠によって心身に大きなストレス負荷がかかっているため、できるだけ生活上のストレスを緩和したり、睡眠の質を向上させるなどの取り組みが大切です。妊娠高血圧腎症や重症妊娠高血圧などを認める場合には入院管理が勧められます。高血圧が重症化している場合、降圧薬の投与が行われます。また著しい母体臓器障害、子宮胎盤機能不全、治療に抵抗する重症高血圧などを認め、母児の生命に危険な状態と考えられた場合には、妊娠週数に関係なく妊娠の終結を図ります。妊娠終結における分娩様式(分娩誘発による経腟分娩か帝王切開)は母児の状態を考慮して選択されます。このように治療の際には十分な注意が必要です。

予防/治療後の注意

妊娠高血圧症候群は原因不明ですが、基礎疾患の有無や肥満体質、妊娠時の年齢(若年出産・高齢出産)、高血圧の既往歴、多胎妊娠など、リスク因子が多い方は血圧の変動に注意が必要です。治療が必要なレベルの高血圧を呈することは少ないですが、妊娠高血圧症候群を指摘された場合には、食生活の改善などを心がけることが大切です。胎児への影響や母体の健康など、様々な要因を考慮しながら治療(経過観察)を行う必要があるため、専門医の指示を守ってストレスのない生活をすることが重要です。

こちらの記事の監修医師

丸茂レディースクリニック

丸茂元三 院長

《経歴》
1991年3月 旭川医科大学医学部 卒業
1991年6月 東京大学医学部附属病院産婦人科
2003年5月 板橋中央総合病院産婦人科
2004年4月 板橋中央総合病院産婦人科 医長
2013年9月 丸茂レディースクリニック 開設

《資格》
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
日本超音波医学会 超音波専門医
FMF認定超音波医
母体保護法指定医

《所属学会》
日本産科婦人科学会
日本超音波医学会

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