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最終更新日:2026年7月3日
鈴木歩の独自インタビュー取材記事
鈴木歩(すずき あゆむ)田中医院院長
青森県五戸町出身。2001年自治医科大学卒業後、青森県立中央病院などで研修。むつ総合病院や大間病院(副院長)、八戸赤十字病院(内科部長)など、県内の基幹病院で幅広い臨床経験を積む。勤務医時代に、病院を転々として苦労する患者を数多く診た経験から、「患者さんを投げっぱなしにしない」という信念を確立。2017年8月、「地域で人の役に立ちたい」と、地元・五戸町の田中医院を継承した。
青森県五戸町で、地域の一次医療を支え続ける「田中医院」。継承から約9年が経ち、患者さんが増え続ける多忙な日々の中でも、鈴木 歩 院長は「患者さんを絶対にたらい回しにしない」という信念を貫いています。
1日90人と向き合い、時に命に関わる判断を迫られる“地域医療の最前線”。大病院とは違う、かかりつけ医だからこそできる「丁寧な診療の裏側」と、そこに秘められた情熱に迫ります。
継承から約9年。変わる環境と、ブレない医療のあり方
田中医院を継承されてから約9年が経ちました。この間で何か変化はありましたか?
自分が年を取りましたかね(笑)。今年で50歳ですから、40歳の時と同じ仕事をしていても、やっぱり体力的な疲れは違います。 あとは、この10年弱で業務量と患者さんがかなり増えました。施設の嘱託医も2件増えましたしね。ありがたいことですが、忙しい毎日です。
患者さんが増え続けているのには、何か理由があるのでしょうか?
外部環境の要因が一番強いと思います。近くの病院が閉まってしまったり、公立病院があっても内科の常勤医がいなくて日替わりの先生で回していたり。 特段、うちから宣伝や広報活動を何かやっているわけではないんです。本を出したりもしましたが、ホームページにも載せていませんし、SNSもやっていません。それでも患者さんが来てくださるのは、先代の院長時代からの積み重ねと、地域の状況が変わっていないからでしょうね。
お忙しい中で、先生が医師として大切にしていることはどのようなものですか?
「こういうことはやらない」と決めているのは、「うちじゃ分からないから、あとはどっか行って」と、患者さんを投げっぱなしにするようなことは絶対にしないようにしています。
もちろんうちで対応できないこともありますが、その時は「普段行ってる整形外科に行ってね」とか、「信頼できる先生を紹介するから、まずはそこへ」と、具体的な次の行動を示すようにしています。患者さんが困って、病院を転々としてしまう、いわゆる「ドクターショッピング」にならないようにしています。患者さんに対してきちんと答えを出してあげることが私の理想ですね。
1日90人と向き合う日々。流れ作業にしない「かかりつけ医」のプライド

患者さんを投げ出さないという理想は、毎日の診療でどう体現されていますか?
1日にだいたい90人くらい診察しますが、効率を重視して「待たせないで満足して帰ってもらう」というような、流れ作業みたいな感じにはしていません。
患者さんの中には急性疾患の方が混ざっていたり、見逃したら命に関わるような重症な方がいたりします。「入院か、外来通院か」という選択に迫られる場面が1日に必ず何回もあるので、しっかり診断して重症化の判断をするようにしています。そうすると、どうしても時間がかかってしまいます。
先生のその丁寧なスタンスのルーツは、どこにあるのでしょうか?
田中医院を継承する以前、総合病院などに勤務していた頃、他院から紹介されてくる患者さんをいっぱい診て、話を聞いてきたからだと思います。 「苦労されて、病院を回って、やっと病名が分かったんだな」という患者さんたちを見てきました。最初の先生がちゃんと診ていれば、こんなに時間がかからなかったのに、と思う事例をたくさん見てきたので。自然と「自分は同じことをしないようにしてあげたい」と思うようになりました。
何気ない会話に潜む「サイン」。患者さんがの本音を見逃さない工夫
現在はどのような症状の患者さんが多いですか?
地元の方で、高血圧や糖尿病、心疾患といった慢性疾患を抱えている70歳前後の方が多いです。あとは脳梗塞で倒れて、リハビリを終えて帰ってきた方などですね。日常のかかりつけ医、ホームドクターとして、様々な疾患を診ています。
慢性疾患の方を診る上で、気をつけていることはありますか?
状態が安定していれば、毎月診るようなことはしていません。2ヶ月、3ヶ月処方で、頻繁に来院する必要ないようにしています。その方が本人の医療費負担も減るし、外来の待ち時間も減りますから、患者さんのためになると考えています。
中には、 毎月無駄に診る必要はないのに、「毎月来い」と言って検査だけするような病院もあります。同じ医師として、いかがなものかと思うときもあります。うちは毎月来ない代わりに、「ちょっとでも悪かったらすぐ来るから」って患者さんの方から言ってくれています。そういった信頼関係が、結果的に患者さんの増加にもつながっているのかなと思います。
診察室で、患者さんの本音を引き出すための先生ならではの工夫はありますか?
「今日はいつもの薬だけですね、ではさようなら」と診察を終えたい時でも、一応「本当に具合悪いところはないんだよね?」と聞くことがあります。念のため聞いてみると、患者さんが「実は…」と切り出すことがあるんです。
内科以外の目や耳のこと、他の病院の薬の飲み合わせなど、直接関係ないことと感じるような場合でも、気を遣わずに話してほしいですね。知らなかったり、後から分かったりするのはホームドクターとして少し悲しいですから。
迫りくるインフラのほころび。限界を迎えつつある現場から次なる挑戦へ
地域医療が抱える課題について感じていることはありますか?
患者さんの高齢化はもちろんですが、病院で働く職員の高齢化や、人手不足が深刻です。全国的な傾向でもあると思いますが、医療や介護の領域では人手が足りなくなってきていますよね。当院は、ありがたいことに長年いてくれるスタッフに支えられて、なんとか体制を維持しています。これが5年、10年経ったときにどうなるのかは、考えていかなければならないと日々思っています。
日々の外来診療や訪問診療にも、影響は出ていますか?
外来の患者さんが増えたことで、午前の診療後に訪問診療に出ると、午後の診察に間に合わないといったこともたまにあります。 本当は自分のところに通ってくれていた方は皆さん診てあげたいのですが……。がんの患者さんなど、症状の重篤な方は新たにお引受けすることが難しく、訪問診療の数を制限せざるを得ない状態です。マンパワーの限界が来ているからこそ、これからの医院のあり方を考えていかなければいけません。(後編へ続く)
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