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健康状態が自分でわかる時代が来る?医師、製薬会社保険会社も注目する“デジタルバイオマーカー”とは?【イシャチョク】

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健康状態が自分でわかる時代が来る?医師、製薬会社保険会社も注目する“デジタルバイオマーカー”とは?

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2021年12月16日

心の健康を可視化するデジタルバイオマーカー

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これまでは、既存の数値があるものを新たな方法で計測するデジタルバイオマーカーを紹介してきました。これからは今まで困難であったことが、新たに可視化できるようになってきた試みを紹介します。

これまでメンタルヘルス領域では、認知症やうつ病、統合失調症などは、客観的な指標がなく、基本的に患者自身の自己申告で症状把握がなされていました。しかし、自身の状態を自分で正確に把握することは難しく、精神科医が症状悪化を事前に予測することが困難であるといわれていました。近年ではこの精神科の分野にもデジタル化の傾向がみられるようになり、デジタルバイオマーカーを用いた診断や治療が開発されつつあります。

うつ病はもはや現代病ともいうべきもので、誰がなってもおかしくない病気として認識されてきています。うつ病に関するデジタルバイオマーカーには多くの候補があり、例えば“声”や“表情”を利用したものがあります。

慶応義塾大学の岸本氏らが2015年11月に新たに立ち上げた研究プロジェクト「PROMPT(Project for Objective Measures Using Computational Psychiatry)(3)」というものです。

「ICTを活用した診療支援技術研究開発プロジェクト(4)」という国家プロジェクトの1つに採択されたもので、診察時の患者の表情や声、話の内容などをカメラやマイクで集め、一定のルールに基づき、定量的なデータに変換します。その結果として、精神疾患に特異的で、重症度や再発パターンをよく反映する指標を見出していくことを目的としています。つまり、患者の自己申告のみに基づく医師の主観的な診断ではないということです。

また、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)は、2017年に学内でうつ病への大がかりな対策を開始しており、AppleはUCLAおよび製薬会社Biogenと協力し、移動能力、身体活動、睡眠パターン、タイピング動作などを含む一連のセンサーデータを用いて、メンタルヘルスの不調や認知機能の低下が検知に関連するデジタル信号を解明し、それらを確実に検知するアルゴリズムを構築したいと考えている(5)と報道されました。

なおAppleは同時に軽度認知機能障害に対する研究にも着手しているとされており、それらの研究結果を将来、iPhoneやApple Watchに搭載することを検討しているようです。さらに、スマートフォンのGPSをもちいて、統合失調症の陰性症状を検知する試みが行われるなど、様々な精神疾患に関してデジタルバイオマーカーを探る研究が進んでおり、今後が期待されています。

 


(3)PROMPT(Project for Objective Measures Using Computational Psychiatry)
(4)出典:日本の研究.com「表情・音声・日常生活活動の定量化から精神症状の客観的評価をリアルタイムで届けるデバイスの開発
(5)出典:CNET Japan「アップル、うつ病診断に役立つ「iPhone」機能を米大学などと共同開発か

デジタルバイオマーカーが導く今後の企業活動の変化予測

最後にデジタルバイオマーカーを活用しようとする業界について解説します。

まずは製薬業界です。製薬企業がデジタルバイオマーカーに着目する理由は、治験の効率化です。治験とは「くすりの候補」の開発の最終段階で、健康な人や患者さんの協力によって、人での効果と安全性を調べることを言います。

皆様のご承知の通り、新薬開発には膨大な資金が必要となりますが、そのうちの治験にかかる費用も大きなものです。治験では条件を満たす患者に来院してもらい、新薬候補(またはその偽薬)を渡し、一定期間後に再来院してもらい経過を観察するという過程を繰り返し行いますが、この「患者が通院」という制限が症例数の制約となったり、患者負担になっていたり、また途中で治験を断念する要因となったりするため、結果として治験期間が長くなり費用増大につながります。

また、対象とする病気によっては症状に変動がある場合もあり、通院の日にたまたま症状が重い(もしくは軽い)という場合、正確な情報が得られないリスクもあります。

このような状況の解決策の一つとしてデジタルバイオマーカーは期待されています。デジタルバイオマーカーが従来のバイオマーカーのように使えるようになれば、来院回数の減少が可能となり、オンライン診療と合わせれば患者の来院は最小限ですむ可能性もあります。したがって、より広範囲で治験対象者を募集できるようになるだけでなく、日常的にモニタリングすることでより正確なデータが取得できるなどメリットが多くあります。このような理由から製薬企業はデジタルバイオマーカーに大きな期待を寄せています。

また,生命保険会社にはインタラクティブ保険とよばれる、例えばユーザが歩数ゴールを達成したなど、ウェアラブルデバイスやスマホでアクティテビィをレポートすると保険料金を割り引いたりするインセンティブが付いてくる生命保険を販売する試みを始めているところもあります。デジタルバイオマーカーがより身近になればこのような事例もさらに増えてくることが予想されます。

“デジタルバイオマーカー”はまだ馴染みのない言葉ではありますが、実用化に向けて研究・開発が盛んに行われており、また私たちが“ヘルスケア”という観点で実際に利用可能なものも出てきています。自分のことはなかなか客観的に評価することは難しいものです。これからは自分の健康を自分自身で可視化する試みが重要となるはずです。

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